アナザー・ワールド 〜オリジナルスキルで異世界とダンジョンを満喫します〜

Blackliszt

168 失愛

──チュンチュン。

「んー・・・」

 窓から入る朝の日差しと鳥たちの夜明けの歌で目覚めると、そこには──

──ピョコピョコ。

 ピョコピョコと動く、1対の耳が──

「おはよう・・・ございます。リアム・・・・・・さま」

 随分と、さままでの距離がが遠くなっている。

「おはようティナ。もうそこまでいくと、さまはいらないんじゃないかな」

 リアムはそんな彼女の言葉の間を、上体を起こしながら指摘してみせる。少し嫌味ったらしく。すると──

「ただいま・・・でいいのかな」
「おかえりなさい・・・リアム」

 バッと勢いよく飛び込んできた彼女の柔らかな毛並みを堪能しながらも、震える小さな頭を優しく優しく撫でてあげる。
 
「おはよう」
「おはよう、父さん」
「おはよう」
「おはよう、母さん」

 いつもの廊下、いつもの扉を開けていつもの居間に着くと、父さんが母さんの作った朝食をつまみながら、母さんは料理に使った器具の洗い物をしながら朝の挨拶を交わす。

「・・・今朝はいつも以上に仲がいいな」
「仕方ないわよ。私たちは昨日目覚めたリアムと会ってるけど、こうして1年ぶりにリアムに会うのはティナちゃんは今日が初めてなんだから」

 以前よりも、目に見えて感情を表に出すようになったティナ。体も少し大きくなっているし、この1年で、彼女にもまた様々な事があり、経験を積んだのだろう。皮肉にも、そんな彼女の変化を僕は見る事が出来なかったのだが。

「と、いうことだ」

 アイナの用意した朝食をとりながら、昨晩の事の顛末を両親から聞いたリアム。

「そうなんだ」

 リアムはそう呟くと──

「おい。頼むからここでソイツはやめてくれよ」

 ジッと、朝手に握っていた魔石を見つめるのだが──

「わかってるよ。ただ、アンデットたちがボクを助けてくれたっていう実感が湧かなくて──」

 早々に、ウィルに忠告されて苦笑いするリアム。そして、いつものように亜空間を開き、それを仕舞おうと・・・

──コトン。

「あれっ?」

 その違和感は、スグに感じた。だが──

「リアム・・・石が落ちました」

 それを放すことを止めようとするも、既に一連の動作として画一化され、深く考えられずに動かされた指の動きの習慣が止まる事はなかった。

「どうしたんだリアム? 落ちちまったぞ?」

 ティナに続いて、ウィルがそれを指摘する。すると──

「魔法が・・・魔力が制御できない」
「「「えっ?」」」

 リアムから告げられたのは、そこにいた誰もが首を傾げてしまう言葉。

「魔力は感じるのに・・・動かない」

 1年のブランクを持った彼を、さらに追い詰める現実。

「イデア!」

 そして──

「はい」

 彼はスグにイデアを呼び出して──

「憑依して、これを亜空間に入れてみて」

 イデアの憑依を許し、自身ができなかったことを彼女に命令して実行させる。

「・・・入りました」

 が──

「なんで・・・」

 数秒の切り替わりの後に、彼はさらに理解に苦しむことになる。イデアの魔法行使の成功という結果によって。すると──

「マスター」

 今度は憑依することなく、この場にいる全員に声が聞こえるように喋り始めるイデア。

「おそらくマスターは現在、あの日の精神的な傷によって魔力操作に支障をきたしている状態にあると提言できます」

 そして彼女から告げられたのは──

「運動機能の魔法版、イップスかと思われます」

 残酷な、一連の行動と精神分析による診断結果。

「ステータス!」

 すると、リアムはスグ様にステータスの呪文を唱える。ステータスの魔石には魔力操作補助がついている。よって魔力さえあれば、誰でもこれを使う事ができるはずだ。しかし──

「まッ!」 
「待ってリアム!」

 突然、ステータスを唱えてしまったリアムをなぜか必死に止めようとするウィルとアイナ。


 が──

ーーーーー

Name:リアム Age : 8  Gender : Male   Lv.1

- アビリティ - 
 《生命力HP》820/820
 《体力SP》594/594
 《魔力MP》80万5200/80万5200
 《筋力パワー》 590 
 《魔法防御》8万0520
 《防御》590
 《俊敏》14
 《知力》50
 《幸運値》%?_#

 《属性親和》全属性

- スキル - 
 《全属性魔法》
  《火魔法Ⅴ》《水魔法Ⅴ》《風魔法Ⅴ》
    《雷魔法Ⅴ》《土魔法Ⅴ》《光魔法Ⅷ》
    《闇魔法Ⅴ》《空間魔法Ⅶ》《命魔法Ⅸ》
  《氷魔法Ⅵ》《熱魔法Ⅷ》
    《無属性魔法Ⅴ》

 《魔法陣》《魔法陣作成》《精霊魔法∞》
 《複合魔法》《鑑定Ⅲ》《魔力操作Ⅴ》
《威圧》

- EX スキル - 
 《分析アナライズ》《しょ》《隠蔽》
 《テイム》《自動翻訳》《トランス》

- ユニークスキル -  
《?#化》《魔眼》《魔眼:魔族の血胤》
《魔眼:命の開闢》《咆哮》

〈- オリジナルスキル -〉
《イデア》


- 称号 -
〈《転生者》〉《??%》《魔力契約:エリシア》
《虹の王》《竜の爪痕》《生還者》《反逆者》
《神憑り》《???》《中級冒険者》《レベル》
《愛される者》

ーーーーー

 ウィルとアイナは、リアムの呪文を止めることができなかった。

「リアム・・・」
「・・・」

 色々と、変化している部分はあったが──。

《竜の爪痕》:竜の力に侵される者 爪痕を背負う者

「ない」

 それは、彼にとって一つの支えであった。

《生還者》:死の深淵を覗き生還した者 
《反逆者》:巨大な敵に逆らった者

「ない!」

 あの日。魔法を切望して臨んだあの日。

《神憑り》:スキル《トランス》を得し者 ただし取り憑いた者が神か悪魔かゴーストかは不明(分岐)

「・・・ない」

 精霊に愛される事のなかったあの日。

《愛される者》:多くのものに愛されし =者、物  

「・・・・・・ない」

 自分が、この世界の人間とは全てにおいて違うのではないかという不安を拭ってくれたアレが・・・ない。

「寵愛が・・・」

 ほとんど投げやりに、唐突に唱えられたその呪文を──

「ない」

 ここにいる誰もが、否定することはできなかった。

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