アナザー・ワールド 〜オリジナルスキルで異世界とダンジョンを満喫します〜
155 殺気
「「きゃーッ!」」
観客の中から、まあまあの数の奇声のような叫び声が上がる。
「な、なに!?」
「こんなこと今までにあったか!?」
突如なりだしたけたたましい一定のリズムで鳴り続ける音、そして会場中の色を瞬時に変えていく映像の明かり。
「「エリシア!」」
「「ウォルター、ラナ、レイア!」」
「「「ミリア! アルフレッド、フラジール!」」」
家族が、スクリーンの向こう側にいる子供達の名を叫ぶ。
「リゲス・・・」
「大丈夫よエクレア。大丈夫」
傍にある、一番大切なものを守ろうとする者。
「ウォルター、ラナ、レイア・・・リム坊」
長い年月を生き、ちょっとやソッとのことでは動じなくなった者。
「な、なにが起きているというのですか!?」
「せ、先生!」
そしてただただ、足を竦ませて異常事態に怯える者。
「「リアム!」」
だがこの混乱の中で一つだけ、はっきりとしていることがある。あの文字を読むことのできない者たちでも理解できるもの。それは──
「怖い・・・」
皆が感じたのは、一様に恐怖。危機感であった。
・
・
・
──ン゛!!
また終わりも突然に、けたたましく鳴っていたサイレンが鳴り止み、光の明滅が終わる。そして──
「なッ! なにこの尋常じゃない魔力!!!」
映像の中で、ビクッと体を震わせたラナが、とても普通ではない尋常な汗を掻き叫ぶ。同時に──
「はぁ・・・はぁ」
「うッ・・・!」
他のメンバーたちも、感知や探知スキルを持ってなくても感じることのできる恐ろしい魔力に怯える。ただ一人、肉体的な物理次元で外と内の魔力の交換を封じられている断魔剤中毒状態にあるリアムを除いて。
「上・・・」
苦しそうに、呼吸を乱しながらもラナが首を動かす。
──シン。
それは、川の上流にいた。
「な、んだあれは」
左のつま先だけを水面につけ、もう片足を軽く折って立っていた。
──スゥゥゥ。
子供達が、大人たち、映像を傍観する観客たち皆が気づくと、それはつま先を水面につけたまま動き始める。
「こ、こないで」
それがこちらに近づいてくる。つま先から水面に広がる波紋。いつの間にか川の流れは止まり、大きな長い水溜りと化していた。
「う、ごけ」
それの前では全てのものが身動きすることすら叶わず──
「ちくしょ、ぅ」
体は凍りついたように動かないのに、凍えるようには震えていた。すると、それは──
「──こんにちは。みなさん」
唐突に、喋った。が、それが喋り終わるとほぼ同時──
「あなたは、誰ですか?」
反射的かそれとも故意なのか。不幸中の幸で、中毒により空間を支配する圧に屈することのなかった少年は、ソレに語りかける。
「あなたは、誰ですか?」
「・・・」
「・・・」
「こんにちは、みなさん」
──無視。
「そう怯えないでくださいませ。私はただ、みなさまにお祝いの言葉を届けるために参上しただけであります」
男。声の感じと体格から、そう判断することができた。
「みなさま、試練達成おめでとうございます」
そして、男はそう謝辞を述べると──
「おめでとうございます」
ゆっくりと、礼をする。
「あ、体が動く・・・」
同時に──
「な、なんだか知らないけど、ありがとう」
リアム以外の皆の呪縛も解け、自由に動けるようになった。
──ニコッ。
男は仮面をしているため、完璧にその表情を読み取るには至らないが、それでも、口元の変化、2つののぞき穴から見える細められた目といった部分的情報から、男は微笑んだのだと導き出すことはできた。
「しかし、この中に一人だけ、本試練においてなにも達成されておられない方がいる。つきましては──」
──パチン
男は、手袋を嵌めたまま指を鳴らす。
──チョロチョロ。すると、全く流れが止まり波すらなかった川の水が動き出す。
「なにか、したのか?」
川の水はちょろちょろと溢れ──
「なんだこれ!?」
「あなた方は合格です」
這うように重力に逆らうと、生き物のように子供達の足を捉えて巻きつく。
「足が!」
「上がらない!なんだこの渦は!」
氾濫と拘束。同時に、子供達の足元では謎の渦が発生し──
「安心なさい。その渦の底はリヴァイブの門への出口、あなたがたはこの試練を達成した」
捕らえられた者たちは、渦の中へジワジワと引き込まれていく。
「クソッ!」
ある者は、渦から逃げ出そうと踠いてみるが──
「リアム!」
ある者は、唯一孤島に残された愛する者を掴まえようと手を伸ばすが──
「この距離では、届きませんよ」
渦が足を捉えて離さない。
「エリシア! みんな!」
「此の期に及んで、救いを求めるとは」
男は、氾濫する奇水によって隔離された少年の叫びを聞くと──
「愚かですね」
嘆く。
「実に。私のみる限り失礼ですが、あなたには資格がない」
そして、嘆かわしいと言わんばかりに額に手を当ててその愚かさを苛立たしく語ると──
「ですからわたくしが、あの子達に代わって──」
男が、対岸へと視線を移す。しかしそこには、オークたちの亡骸は既になく──
「かぁはッ!」
「「・・・リア」」
彼らは既に粒子となって消えたのだと理解した時には──
「テストして、差し上げます」
────プツン。
観客の中から、まあまあの数の奇声のような叫び声が上がる。
「な、なに!?」
「こんなこと今までにあったか!?」
突如なりだしたけたたましい一定のリズムで鳴り続ける音、そして会場中の色を瞬時に変えていく映像の明かり。
「「エリシア!」」
「「ウォルター、ラナ、レイア!」」
「「「ミリア! アルフレッド、フラジール!」」」
家族が、スクリーンの向こう側にいる子供達の名を叫ぶ。
「リゲス・・・」
「大丈夫よエクレア。大丈夫」
傍にある、一番大切なものを守ろうとする者。
「ウォルター、ラナ、レイア・・・リム坊」
長い年月を生き、ちょっとやソッとのことでは動じなくなった者。
「な、なにが起きているというのですか!?」
「せ、先生!」
そしてただただ、足を竦ませて異常事態に怯える者。
「「リアム!」」
だがこの混乱の中で一つだけ、はっきりとしていることがある。あの文字を読むことのできない者たちでも理解できるもの。それは──
「怖い・・・」
皆が感じたのは、一様に恐怖。危機感であった。
・
・
・
──ン゛!!
また終わりも突然に、けたたましく鳴っていたサイレンが鳴り止み、光の明滅が終わる。そして──
「なッ! なにこの尋常じゃない魔力!!!」
映像の中で、ビクッと体を震わせたラナが、とても普通ではない尋常な汗を掻き叫ぶ。同時に──
「はぁ・・・はぁ」
「うッ・・・!」
他のメンバーたちも、感知や探知スキルを持ってなくても感じることのできる恐ろしい魔力に怯える。ただ一人、肉体的な物理次元で外と内の魔力の交換を封じられている断魔剤中毒状態にあるリアムを除いて。
「上・・・」
苦しそうに、呼吸を乱しながらもラナが首を動かす。
──シン。
それは、川の上流にいた。
「な、んだあれは」
左のつま先だけを水面につけ、もう片足を軽く折って立っていた。
──スゥゥゥ。
子供達が、大人たち、映像を傍観する観客たち皆が気づくと、それはつま先を水面につけたまま動き始める。
「こ、こないで」
それがこちらに近づいてくる。つま先から水面に広がる波紋。いつの間にか川の流れは止まり、大きな長い水溜りと化していた。
「う、ごけ」
それの前では全てのものが身動きすることすら叶わず──
「ちくしょ、ぅ」
体は凍りついたように動かないのに、凍えるようには震えていた。すると、それは──
「──こんにちは。みなさん」
唐突に、喋った。が、それが喋り終わるとほぼ同時──
「あなたは、誰ですか?」
反射的かそれとも故意なのか。不幸中の幸で、中毒により空間を支配する圧に屈することのなかった少年は、ソレに語りかける。
「あなたは、誰ですか?」
「・・・」
「・・・」
「こんにちは、みなさん」
──無視。
「そう怯えないでくださいませ。私はただ、みなさまにお祝いの言葉を届けるために参上しただけであります」
男。声の感じと体格から、そう判断することができた。
「みなさま、試練達成おめでとうございます」
そして、男はそう謝辞を述べると──
「おめでとうございます」
ゆっくりと、礼をする。
「あ、体が動く・・・」
同時に──
「な、なんだか知らないけど、ありがとう」
リアム以外の皆の呪縛も解け、自由に動けるようになった。
──ニコッ。
男は仮面をしているため、完璧にその表情を読み取るには至らないが、それでも、口元の変化、2つののぞき穴から見える細められた目といった部分的情報から、男は微笑んだのだと導き出すことはできた。
「しかし、この中に一人だけ、本試練においてなにも達成されておられない方がいる。つきましては──」
──パチン
男は、手袋を嵌めたまま指を鳴らす。
──チョロチョロ。すると、全く流れが止まり波すらなかった川の水が動き出す。
「なにか、したのか?」
川の水はちょろちょろと溢れ──
「なんだこれ!?」
「あなた方は合格です」
這うように重力に逆らうと、生き物のように子供達の足を捉えて巻きつく。
「足が!」
「上がらない!なんだこの渦は!」
氾濫と拘束。同時に、子供達の足元では謎の渦が発生し──
「安心なさい。その渦の底はリヴァイブの門への出口、あなたがたはこの試練を達成した」
捕らえられた者たちは、渦の中へジワジワと引き込まれていく。
「クソッ!」
ある者は、渦から逃げ出そうと踠いてみるが──
「リアム!」
ある者は、唯一孤島に残された愛する者を掴まえようと手を伸ばすが──
「この距離では、届きませんよ」
渦が足を捉えて離さない。
「エリシア! みんな!」
「此の期に及んで、救いを求めるとは」
男は、氾濫する奇水によって隔離された少年の叫びを聞くと──
「愚かですね」
嘆く。
「実に。私のみる限り失礼ですが、あなたには資格がない」
そして、嘆かわしいと言わんばかりに額に手を当ててその愚かさを苛立たしく語ると──
「ですからわたくしが、あの子達に代わって──」
男が、対岸へと視線を移す。しかしそこには、オークたちの亡骸は既になく──
「かぁはッ!」
「「・・・リア」」
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