アナザー・ワールド 〜オリジナルスキルで異世界とダンジョンを満喫します〜
142 光の一太刀
「オ゙ッ オ゙」「ヒューヒュー」「グーーーー」
「お前たち、長い間辛かっただろう・・・」
傅くゴースト、そして集まってきたアンデット達。
『ヒメ゙サマ゙ オガエリ゙』『オガエリ゙』『オガエリ゙』・・・
不気味な風貌の彼らの声が、頭の中に次々と聞こえてくる。
「ああ、ただいま」
そして己が風貌を一瞬にして変えた彼もまた、亡者の声に耳を傾ける。
「さぁ、みな輪廻へと──」
『『オ゙ーーーー!』』
だが──
「──! これは・・・」
彼が集まってきた亡者達に何かを施そうと、ゴーストから受け取った赤い光を持つ手を掲げた瞬間──
『リアム──』
彼は一つ、忙しなく歓喜の声を上げる亡者達の声の中から、確かに波紋のように体に浸透する異質な声を聞く。
「お前たち? 眷属(こ)? 私は何を言って──」
瞬間、彼は右目を押さえながら混乱に支配される。
「そもそも私は『僕は』」
激しい頭痛。
「『何者?』」
全身の血は沸騰したように熱く滾り、思考は深い霧の中に誘われる。
「あぁxああぁxあぁア゙!」
しかし、しっかりと感じることができる痛み。彼は空に向かって咆哮すると──
「みんな。あともう少しだけ、待って・・・て」
バタリ・・・とその場で倒れ、一言を残して気絶する。
『ア゙ルジ オデタヂ』
彼が気絶し姿を変えて数秒──
『マッデル』『マッデル』『マッデル』・・・
亡者達は彼を囲み、跪く。
「なんだー?変な風が吹いたと思ってきてみれば、グールにゾンビにゴースト、リッチーまで・・・なんでアンデットどもがこんなにたむろしてるんだ?」
しかし次の瞬間──
「それにさっきの奇妙な雄叫び。狼男でも──」
「カミラ! あの中央に子供がいるみたいだ!」
「あ? なんであんなところに」
男と女、招かざれる客が二人。
「オ゙ッ オ゙」「ヒューヒュー」「グーーーー」
そして対峙する。その来訪をよく思わない亡者達と。しかし──
「早く助けてあげて! アンデットの放つ瘴気は体に毒だ!」
「はぁーい♡ ダー・・・」
女が腰の鞘から剣を抜刀すると──
「──リン!」
光の一閃が亡者達の体の軸を横薙ぎに捉え、真っ二つに切り裂く。
「な、なんだったんだあの光の刃は!」
「ぎゃー切られる切られる!」
「ば、カバ!お前のせいで避けられなかっただろう」
「ぎられだー・・・ガク」
「おいおい」
同刻、リアムを助太刀するために近くまで来ていたアルフレッドとミカは──
「あ、あれ? 切られてない?」
「だから、動揺しすぎだバカ!・・・あ」
「ば、バカって・・・」
「お、落ち着け! 今はそんなことしてる場合じゃ!」
「バカッって言う方がバカなんだー!」
「グフッ!・・・蹴りじゃなくて、腹パン・・・だと」
「はっ! 蹴りじゃなくて腹パン! 手加減できてる!」
じゃれ合っていた。しかしどうやらミカの心境にも、なんらかの変化はあったらしい。彼女十八番の回し蹴りではなく、腹パンとは。
「呼吸は・・・よかった、瘴気の痣もないみたいだ」
切られた場所から、光の粒子となって消えていくアンデット達の傍らで、倒れる少年の側に駆けつけた男が安堵する。すると──
「すいませーん!」
「ずみばぜん・・・」
暗闇の向こうから、明るく嬉しそうに手を振る少女と、みぞおち辺り腹を押さえながら重症の少年が二人、やって来た。
「リア──」
しかし、先ほどまで腹を押さえて苦しそうだった少年が、男の看る少年の元へ駆けていこうとすると──
「おっと、あんたらこいつの連れかい?」
剣を抜いたままの女が、その行く手を峰で阻む。
「んな! なぜ邪魔をする!」
すると、少年は女に噛み付く。しかし──
「敵か味方か! それだけはっきりさせろ!」
一喝。女は背筋を、大気を震わせるほどの声で少年に怒鳴りつける。
「・・・!?」
すると、少年と少女は女の喝に一歩後ろに退きかけるが──
「そ、そうだ」
なんとか踏みとどまり、女の質問に返事をする。すると──
「そうかい。それでいいんだよ」
女は一つ、ニコリと口角を上げて、剣を腰の鞘に収める。
「おい!しっかりしろ!」
「大丈夫。君のお友達は魔力を消耗してただ気絶しているだけみたいだ。アンデットの瘴気に当てられた様子もないし、このポーションを飲ませて安静にしてれば数時間で目が覚める」
「そ、そうか・・・すまない。感謝する」
男がポーチから取り出したポーション瓶の蓋を開けて、気絶している少年の口に薬を流す。
「これでよし・・・」
「ハッハッハ!うちの旦那(ダーリン)の腕は国一・・・いや世界一だ! 安心したまえ少年!」
「よしてよカミラ、照れるじゃないか」
「はぁ・・・」
応急処置が終わると、一気に途切れる緊張の糸。だが──
「おいどうかしたのかお嬢ちゃん?」
少年と一緒にいた少女は、ここにたどり着いてからずっと黙りこくっていた。
「赤・・・薔薇」
女に話しかけられた少女は改めて女を見て、赤薔薇という言葉を発する。
「赤薔薇?」
同時に、少年は首を傾げる。確かに少女の言った通り、女はその背に赤い薔薇のマークを背負っていた。
「なんだ私のこと知ってるのか?」
赤い髪に赤い瞳。
「あ、私はギルド職員・・・なので」
言われてみれば、そんな2つ名を女が持っていたとしても不思議ではないだろう。
「そうか。だったらさっさとセーフポイントまで戻って坊主を手当てしてやんな。悪いが私たちも先を急ぐんでね」
すると、女はスッと少女に背を向け、この場を立ち去ろうとする。
「行こう、エド」
「・・・わかった。最後まで看てあげられないのは少し心残りだけど」
そして、女と男は去っていった。方向からして、キャンプのあるセーフポイントの方であろうか。
「綺麗な人だったなぁ・・・」
細すぎず太すぎず、キュッとしまった筋肉にスラッとした体型。先ほどまで目の前にいた女の残像を追って、少女は呟く。
「おい何ぼーっとしてるんだ! 手伝えカバ!」
「そう言えば! なんなのそのカバっていうの!? ちょームカつくんですけど!」
「いまさらか!?」
その後、少年と少女もなんだかんだで、気絶したもう一人の少年を背負って、仲間の待つキャンプへの帰路につく。
「お前たち、長い間辛かっただろう・・・」
傅くゴースト、そして集まってきたアンデット達。
『ヒメ゙サマ゙ オガエリ゙』『オガエリ゙』『オガエリ゙』・・・
不気味な風貌の彼らの声が、頭の中に次々と聞こえてくる。
「ああ、ただいま」
そして己が風貌を一瞬にして変えた彼もまた、亡者の声に耳を傾ける。
「さぁ、みな輪廻へと──」
『『オ゙ーーーー!』』
だが──
「──! これは・・・」
彼が集まってきた亡者達に何かを施そうと、ゴーストから受け取った赤い光を持つ手を掲げた瞬間──
『リアム──』
彼は一つ、忙しなく歓喜の声を上げる亡者達の声の中から、確かに波紋のように体に浸透する異質な声を聞く。
「お前たち? 眷属(こ)? 私は何を言って──」
瞬間、彼は右目を押さえながら混乱に支配される。
「そもそも私は『僕は』」
激しい頭痛。
「『何者?』」
全身の血は沸騰したように熱く滾り、思考は深い霧の中に誘われる。
「あぁxああぁxあぁア゙!」
しかし、しっかりと感じることができる痛み。彼は空に向かって咆哮すると──
「みんな。あともう少しだけ、待って・・・て」
バタリ・・・とその場で倒れ、一言を残して気絶する。
『ア゙ルジ オデタヂ』
彼が気絶し姿を変えて数秒──
『マッデル』『マッデル』『マッデル』・・・
亡者達は彼を囲み、跪く。
「なんだー?変な風が吹いたと思ってきてみれば、グールにゾンビにゴースト、リッチーまで・・・なんでアンデットどもがこんなにたむろしてるんだ?」
しかし次の瞬間──
「それにさっきの奇妙な雄叫び。狼男でも──」
「カミラ! あの中央に子供がいるみたいだ!」
「あ? なんであんなところに」
男と女、招かざれる客が二人。
「オ゙ッ オ゙」「ヒューヒュー」「グーーーー」
そして対峙する。その来訪をよく思わない亡者達と。しかし──
「早く助けてあげて! アンデットの放つ瘴気は体に毒だ!」
「はぁーい♡ ダー・・・」
女が腰の鞘から剣を抜刀すると──
「──リン!」
光の一閃が亡者達の体の軸を横薙ぎに捉え、真っ二つに切り裂く。
「な、なんだったんだあの光の刃は!」
「ぎゃー切られる切られる!」
「ば、カバ!お前のせいで避けられなかっただろう」
「ぎられだー・・・ガク」
「おいおい」
同刻、リアムを助太刀するために近くまで来ていたアルフレッドとミカは──
「あ、あれ? 切られてない?」
「だから、動揺しすぎだバカ!・・・あ」
「ば、バカって・・・」
「お、落ち着け! 今はそんなことしてる場合じゃ!」
「バカッって言う方がバカなんだー!」
「グフッ!・・・蹴りじゃなくて、腹パン・・・だと」
「はっ! 蹴りじゃなくて腹パン! 手加減できてる!」
じゃれ合っていた。しかしどうやらミカの心境にも、なんらかの変化はあったらしい。彼女十八番の回し蹴りではなく、腹パンとは。
「呼吸は・・・よかった、瘴気の痣もないみたいだ」
切られた場所から、光の粒子となって消えていくアンデット達の傍らで、倒れる少年の側に駆けつけた男が安堵する。すると──
「すいませーん!」
「ずみばぜん・・・」
暗闇の向こうから、明るく嬉しそうに手を振る少女と、みぞおち辺り腹を押さえながら重症の少年が二人、やって来た。
「リア──」
しかし、先ほどまで腹を押さえて苦しそうだった少年が、男の看る少年の元へ駆けていこうとすると──
「おっと、あんたらこいつの連れかい?」
剣を抜いたままの女が、その行く手を峰で阻む。
「んな! なぜ邪魔をする!」
すると、少年は女に噛み付く。しかし──
「敵か味方か! それだけはっきりさせろ!」
一喝。女は背筋を、大気を震わせるほどの声で少年に怒鳴りつける。
「・・・!?」
すると、少年と少女は女の喝に一歩後ろに退きかけるが──
「そ、そうだ」
なんとか踏みとどまり、女の質問に返事をする。すると──
「そうかい。それでいいんだよ」
女は一つ、ニコリと口角を上げて、剣を腰の鞘に収める。
「おい!しっかりしろ!」
「大丈夫。君のお友達は魔力を消耗してただ気絶しているだけみたいだ。アンデットの瘴気に当てられた様子もないし、このポーションを飲ませて安静にしてれば数時間で目が覚める」
「そ、そうか・・・すまない。感謝する」
男がポーチから取り出したポーション瓶の蓋を開けて、気絶している少年の口に薬を流す。
「これでよし・・・」
「ハッハッハ!うちの旦那(ダーリン)の腕は国一・・・いや世界一だ! 安心したまえ少年!」
「よしてよカミラ、照れるじゃないか」
「はぁ・・・」
応急処置が終わると、一気に途切れる緊張の糸。だが──
「おいどうかしたのかお嬢ちゃん?」
少年と一緒にいた少女は、ここにたどり着いてからずっと黙りこくっていた。
「赤・・・薔薇」
女に話しかけられた少女は改めて女を見て、赤薔薇という言葉を発する。
「赤薔薇?」
同時に、少年は首を傾げる。確かに少女の言った通り、女はその背に赤い薔薇のマークを背負っていた。
「なんだ私のこと知ってるのか?」
赤い髪に赤い瞳。
「あ、私はギルド職員・・・なので」
言われてみれば、そんな2つ名を女が持っていたとしても不思議ではないだろう。
「そうか。だったらさっさとセーフポイントまで戻って坊主を手当てしてやんな。悪いが私たちも先を急ぐんでね」
すると、女はスッと少女に背を向け、この場を立ち去ろうとする。
「行こう、エド」
「・・・わかった。最後まで看てあげられないのは少し心残りだけど」
そして、女と男は去っていった。方向からして、キャンプのあるセーフポイントの方であろうか。
「綺麗な人だったなぁ・・・」
細すぎず太すぎず、キュッとしまった筋肉にスラッとした体型。先ほどまで目の前にいた女の残像を追って、少女は呟く。
「おい何ぼーっとしてるんだ! 手伝えカバ!」
「そう言えば! なんなのそのカバっていうの!? ちょームカつくんですけど!」
「いまさらか!?」
その後、少年と少女もなんだかんだで、気絶したもう一人の少年を背負って、仲間の待つキャンプへの帰路につく。
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