アナザー・ワールド 〜オリジナルスキルで異世界とダンジョンを満喫します〜
124 祝りの後の静けさ
「俺たちは帰るよ」
楽しいパーティーも終わりが近づいてきた頃父さんが先ほどまでどんちゃん騒ぎして疲れて木陰で休んでいた父さんがそう言って腰をあげる。
「何故だ? 私からの誘いだぞ? いくら私とお前の馬が合わぬからといって、今日くらいはいいだろう」
めでたい席の後なのだからと、ブラームスが父さんを引き留めようとするが──
「いいや帰るさ。・・・知ってるだろ? 俺がこういう広いところ、ましてや城の中なんかじゃぐっすり眠れないこと」
しかし父さんはブラームスの誘いを断る。
「まだ治っていなかったのか?・・・ならば致し方ないな」
ブラームスは仕様が無いとそれを諦める。
「子供達は・・・みんなしてお眠か」
だが僕らは既に夢心地、今日は色々とあって疲れが溜まっていた。
「ウィルはリアムを、私はティナちゃんを背負うわ」
母さんが父さんに担当の指示だしをし──
「我々も、子供たちを部屋に運ばねばな・・・」
他の保護者たちも一様に、ブラームスに当てられた客間へと子供たちを運ぶべく動く。
「ん?・・・ああ、俺は大丈夫だから・・・」
すると、木の幹に体を預けて休んでいたウォルターだけがヒョコンと起き上がる。
「見た目は若くとも、もう大人だね」
それを見たマレーネが呟く。
「そりゃあばあちゃんの血が入ってるから15くらいから成長がゆっくりになっちまったけど、これでももう成人はしてるんだからな・・・」
人間は成人の年である十五を超えてもまだ成長するが、自分はエルフであるマレーネの血を4分の1ひいているからとおどけ肩をすくめながら答えるウォルター。
「ばあちゃんたちは先に行っててくれ・・・俺はもう少し夜風で気分を落ち着かせてから行くよ」
そして一人だけ、パーティーがお開きになり片付けをする使用人もまばらになり始めた城の庭園に一人、残る。
・
・
・
「スゥ・・・スゥ・・・」
ウィルとアイナ、それぞれの背中ではリアムとティナが心地よさそうに寝息を立ててうたた寝していた。
「それにしても賑やかだったな・・・」
「ええ、楽しかったわね」
月に照らされた家への帰り道を二人、子供たちを背負いながらパーティーの余韻に浸る父さんと母さん。
「そういえばウィル・・・あなたのファーストキスの相手、やっぱりリゲスだったんじゃない。・・・『嫌なこと思い出させるんじゃねぇよ!』、だっけ?」
すると、突然母さんが父さんに何やらニヤニヤと態とらしく笑いながら問う。
「あ、あれは本当に事故だったんだ! あんなのカウントに入らねぇし! 俺が本当に好きになって自分からこう初めてキスした相手はアイナだけだっての!」
それを聞いた父さんは慌て動揺しながらも、必死に言い訳をしているようだった。
「いいの、別に。今となってはそんなこと気にしないわ」
そんな父さんの様子を見た母さんはフフフッといつものように笑い、父さんの失言を許す。
「あれってまだこっちに来たばっかりのことだったけ?」
「そうそう。そしてその頃ふとポロっとカミラがそれを暴露したお陰で、魔法撃ってウィルを追い回していた私の二つ名が、炎の魔女から炎獄の魔女になっちゃって」
私ってそんなに重いかしら? と、とぼけ顔の母さん。
「いいや、アイナは十分軽いさ・・・」
「ウィル、それ意味が違うわ」
「・・・」
「ふふっ。今日はなんか懐かしい1日だった。・・・いえ、最近はそう思っちゃうことばかりね、ほんと」
再び母さんが父さんをからかって遊ぶ。
『父さん・・・母さん・・・』
父さんと母さんが笑っている。本当に優しい笑顔、あの日、二人に初めて出会った日に僕が見た表情だった。
この二人は、本当に僕が幸せにいつまでも過ごして欲しいと3番目に思えた人達。1番目は短い時間だったがとても大切な思い出をくれた鈴華に、2番目は前世の父さんと母さんにまだ幼かった妹、そして3番目が今ここにいる父さんと母さん、それとカリナ姉さんだった。しかし──
『まさか僕が大切に思うと死んでしまう・・・、なんてことないよね』
僕の脳裏にふと、あまり良くない考えが浮かんでしまう。
『いや、きっと前世の父さんたちはは僕がいなくなった後でも、強く生きていてくれているはずだ』
だがそれは本当に一瞬、束の間にはもうそんな非現実的な悪い考えは捨ててしまえるほどに、僕は大切な家族のことを心のそこから信じることができるほど強くなっていた。
「父さん・・・母さん・・・」
僕はぼーっとする思考の中、自然と二人を夢心地で呼んでしまう。いや、この場合は四人というのが正しいか。
「・・・寝言ね」
「ああ。愛されてるな、俺たち」
「ええ。でも私たちもおーーーんなじくらい! カリナとリアムを愛してるわ」
「俺もだ」
父さんと母さんが目を合わせて微笑み合う。
「それに、今日から新しい家族も・・・」
「ああ。リアムが所有者で建前上主従の関係にあるとはいえ、ティナちゃんも今日から立派な家族の一員だ。少なくともリアムとティナちゃが子供のうちは、二人を守るのは俺たちの仕事だ」
そして自らが背負う僕とティナをそれぞれ見合うと──
「ウィル・・・」
「ん?」
「愛してるわ」
「俺もだ」
美しい月明かり照らす街道をゆっくりと歩幅を合わせながら、背中に背負う家族への愛を語らう。
楽しいパーティーも終わりが近づいてきた頃父さんが先ほどまでどんちゃん騒ぎして疲れて木陰で休んでいた父さんがそう言って腰をあげる。
「何故だ? 私からの誘いだぞ? いくら私とお前の馬が合わぬからといって、今日くらいはいいだろう」
めでたい席の後なのだからと、ブラームスが父さんを引き留めようとするが──
「いいや帰るさ。・・・知ってるだろ? 俺がこういう広いところ、ましてや城の中なんかじゃぐっすり眠れないこと」
しかし父さんはブラームスの誘いを断る。
「まだ治っていなかったのか?・・・ならば致し方ないな」
ブラームスは仕様が無いとそれを諦める。
「子供達は・・・みんなしてお眠か」
だが僕らは既に夢心地、今日は色々とあって疲れが溜まっていた。
「ウィルはリアムを、私はティナちゃんを背負うわ」
母さんが父さんに担当の指示だしをし──
「我々も、子供たちを部屋に運ばねばな・・・」
他の保護者たちも一様に、ブラームスに当てられた客間へと子供たちを運ぶべく動く。
「ん?・・・ああ、俺は大丈夫だから・・・」
すると、木の幹に体を預けて休んでいたウォルターだけがヒョコンと起き上がる。
「見た目は若くとも、もう大人だね」
それを見たマレーネが呟く。
「そりゃあばあちゃんの血が入ってるから15くらいから成長がゆっくりになっちまったけど、これでももう成人はしてるんだからな・・・」
人間は成人の年である十五を超えてもまだ成長するが、自分はエルフであるマレーネの血を4分の1ひいているからとおどけ肩をすくめながら答えるウォルター。
「ばあちゃんたちは先に行っててくれ・・・俺はもう少し夜風で気分を落ち着かせてから行くよ」
そして一人だけ、パーティーがお開きになり片付けをする使用人もまばらになり始めた城の庭園に一人、残る。
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「スゥ・・・スゥ・・・」
ウィルとアイナ、それぞれの背中ではリアムとティナが心地よさそうに寝息を立ててうたた寝していた。
「それにしても賑やかだったな・・・」
「ええ、楽しかったわね」
月に照らされた家への帰り道を二人、子供たちを背負いながらパーティーの余韻に浸る父さんと母さん。
「そういえばウィル・・・あなたのファーストキスの相手、やっぱりリゲスだったんじゃない。・・・『嫌なこと思い出させるんじゃねぇよ!』、だっけ?」
すると、突然母さんが父さんに何やらニヤニヤと態とらしく笑いながら問う。
「あ、あれは本当に事故だったんだ! あんなのカウントに入らねぇし! 俺が本当に好きになって自分からこう初めてキスした相手はアイナだけだっての!」
それを聞いた父さんは慌て動揺しながらも、必死に言い訳をしているようだった。
「いいの、別に。今となってはそんなこと気にしないわ」
そんな父さんの様子を見た母さんはフフフッといつものように笑い、父さんの失言を許す。
「あれってまだこっちに来たばっかりのことだったけ?」
「そうそう。そしてその頃ふとポロっとカミラがそれを暴露したお陰で、魔法撃ってウィルを追い回していた私の二つ名が、炎の魔女から炎獄の魔女になっちゃって」
私ってそんなに重いかしら? と、とぼけ顔の母さん。
「いいや、アイナは十分軽いさ・・・」
「ウィル、それ意味が違うわ」
「・・・」
「ふふっ。今日はなんか懐かしい1日だった。・・・いえ、最近はそう思っちゃうことばかりね、ほんと」
再び母さんが父さんをからかって遊ぶ。
『父さん・・・母さん・・・』
父さんと母さんが笑っている。本当に優しい笑顔、あの日、二人に初めて出会った日に僕が見た表情だった。
この二人は、本当に僕が幸せにいつまでも過ごして欲しいと3番目に思えた人達。1番目は短い時間だったがとても大切な思い出をくれた鈴華に、2番目は前世の父さんと母さんにまだ幼かった妹、そして3番目が今ここにいる父さんと母さん、それとカリナ姉さんだった。しかし──
『まさか僕が大切に思うと死んでしまう・・・、なんてことないよね』
僕の脳裏にふと、あまり良くない考えが浮かんでしまう。
『いや、きっと前世の父さんたちはは僕がいなくなった後でも、強く生きていてくれているはずだ』
だがそれは本当に一瞬、束の間にはもうそんな非現実的な悪い考えは捨ててしまえるほどに、僕は大切な家族のことを心のそこから信じることができるほど強くなっていた。
「父さん・・・母さん・・・」
僕はぼーっとする思考の中、自然と二人を夢心地で呼んでしまう。いや、この場合は四人というのが正しいか。
「・・・寝言ね」
「ああ。愛されてるな、俺たち」
「ええ。でも私たちもおーーーんなじくらい! カリナとリアムを愛してるわ」
「俺もだ」
父さんと母さんが目を合わせて微笑み合う。
「それに、今日から新しい家族も・・・」
「ああ。リアムが所有者で建前上主従の関係にあるとはいえ、ティナちゃんも今日から立派な家族の一員だ。少なくともリアムとティナちゃが子供のうちは、二人を守るのは俺たちの仕事だ」
そして自らが背負う僕とティナをそれぞれ見合うと──
「ウィル・・・」
「ん?」
「愛してるわ」
「俺もだ」
美しい月明かり照らす街道をゆっくりと歩幅を合わせながら、背中に背負う家族への愛を語らう。
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