アナザー・ワールド 〜オリジナルスキルで異世界とダンジョンを満喫します〜
89 朝食
── 翌日の朝。
「ん・・・朝」
僕は窓から差し込む日の光を受け、目を覚ます。
「いつもと違う天井・・・」
この体験には妙なデジャヴを感じる。
「それになんだか体が重・・・ッ!」
すると、僕の胸元から下肢にかけて、いつもは感じることのない重みを感じた。
僕はその重さの原因を確かめようと、両手をついてゆっくりと抜け出す様に下半身を後ろに引く。すると── 
「え・・・エリシア?」
なんとそこには、エリシアがスヤスヤと寝息をたてて僕の膝の上で眠っていた。
「ん・・・ん〜・・・あれ、リアム・・・?」
するとその声に反応したのか、目を覚ましたエリシアが目をこすりながら片手をついて体を起こし、僕の目の高さまで顔をあげる。体勢的には、エリシアが僕に覆いかぶさる・・・そんな感じだ。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
訪れる沈黙に、チュンチュンと外の庭で小躍りする小鳥たちの鳴き声のみが部屋に響き渡る。
「・・・はぅ」
次の瞬間、沸騰するお湯のごとく一瞬で顔を真っ赤にするエリシア。
「へ・・・?」
僕はそんなエリシアの反応に間抜けな声を出して状況を飲み込めずにいた。すると── 
── コンコン「エリシア様、リアム様、朝食のご用意ができました。準備ができましたら、ダイニングまでお越しください」
部屋の扉を叩き、朝食の準備ができたことを知らせに来たバットの声が廊下の方から聞こえてきた。
「わ・・・わかったバット! 直ぐに行く!」
転進、その声にハッとなったエリシアは直ぐ様後ろに跳びのき、少し距離を取るとバットに返事を返す。
「では、お待ちしております」
そうしてバットはエリシアの返事を聞くと、そのままダイニングの方へと向かっていった。
▽      ▽      ▽      ▽
「おはよう」
「おはよう二人とも、昨晩はゆっくり眠れたかしら」
朝食の並べられたダイニングに僕たちがつくと、先に食事を始めていたヴィンセントとリンシアが僕たちと挨拶をする。
「おはようございます。お父様、お母様。・・・今日はお母様も一緒に朝食を摂ってるのね!」
丁寧に朝の挨拶を交わし、いつもは一緒に朝食をとることがないリンシアがいることに興奮を隠せないエリシア。
「ええ、昨日の今日ですもの・・・。あなたたちの様子が心配でね」
どうやら、リンシアは昨日吸血を行った僕たちのことを心配して今日は一緒に食事をとっている様である。・・・これで昨日の別れ際の彼女の言葉にも納得だ。
「・・・おはようございます。・・・あの、父さんと母さんは・・・」
「ああ、ウィルさんたちなら先に朝食を摂られてお仕事に行かれたわよ。なんでも、ウィルさんは今日約束していた仕事があるとかで、アイナさんもその準備をお手伝いするために先に家に帰られたわ」
「そうですか・・・。わかりました、ありがとうございます」
僕はふと、この場にいない両親のことが気にかかり、そのことを尋ねたが、どうやら二人とも先に帰ってしまった様だ。
「アイナさんとはもっとお話をしたかったのだけれど・・・、また是非、いらしてくださいと伝えておいてもらえるかしら?」
「はい、もちろんです」
二人のことを教えてくれたリンシアからの願いに答えながら、僕はエリシアとともにクロッシュの被せられた朝食が並ぶ席へと腰を落ち着ける。
「これは我が家の毎朝の食事だ。気に入ってくれると嬉しい」
そうして、僕たちが席につくと、ヴィンセントがそう言って、バットがそれぞれ目の前に置かれたクロッシュを取り去る。
「とても美味しそうですね・・・」
僕はそのプレートに乗った食事を見て一言、そう呟く。
朝食の内容はいたってシンプル。スープにソーセージ、スクランブルエッグ。そして後ろからボウルに入った野菜を空いたお皿にバットが盛り付けてくれ、テーブル中央に置かれたバケットから更に注文した個数のパンをとってくれた。
ソーセージは腸詰する分流通量が少なく高価で朝食に口にすることは普段なく、スープはよくダシが染み出ている澄み切ったコンソメ、スクランブルエッグには味付けとして一つまみの黒い胡椒がまぶしてある。
「おいしい」
それは前世ではまさに理想の朝食。パンが白パンでなかったり、サラダにドレッシングはなく塩とオリーブオイルでの味付けと、その食べ方には多少のギャップもあったが、やはりこの世界に来て、この様に贅沢な朝食を摂ったのは初めてであった。
── 朝食を食べ終えた後。
「ところで、昨日は上手く事は進んだかな? よければ契約の印を見せてくれ」
「契約の印?」
僕は吸血による魔力契約が上手くいったかどうかを聴くヴィンセントに、質問を返す。
「ああ。我々が吸血によって魔力を交わらせて繋がりを作ると、それぞれの体のどこかに印が刻まれるものだ・・・この様に」
するとヴィンセントは自分の左手を掲げて見せ、その薬指に指輪の様に絡みつく一つの印を出現させる。
「普段は見えぬが、魔力を込めれば自然と浮き上がる。リンシア同様、大抵は左手の薬指に浮き上がるが、リアム君たちにもそれがしっかり刻まれているかを確かめてほしい」
そういって魔力を込めることを止め、印をしまったヴィンセントは、僕たちに印の確認を勧める。
「あった! 出たよ、お父様!」
そして、体に魔力を巡らせたエリシアが自分の左手薬指に、その紋様が描き出された印を掲げて見せる。しかし── 
「あれ? 出ない・・・」
「ふむ? 他の場所、指や腕、足はどうかね・・・」
「・・・ありません」
同様に、体に魔力を巡らせた僕の体のどこにも、その印が現れる事はなかった。
「なぜだ・・・エリシアの指には印が刻まれている。それに本当に僅か、微かにだが私の中の魔力と類似する小さな魔力を感じるのだが・・・」
「魔力? ・・・あの、もしかしなくても、魔力契約ってお互いに何か影響があったり・・・」
僕はふと、そんな今更な質問をヴィンセントに尋ねてしまう。なぜなら、僕はそれまで魔力契約は単なる一方通行、エリシア
「ああ。魔力契約を結ぶ際、そこに魔力量の差があればあるほど、相手に何かしらの影響を与えやすい。エリシアは人の血も引いているから、特に多少の差があってもマイナスな影響はないだろうが君は別、そして君の魔力は相当なものなのだろう。消え入りそうなロウソクの火の様に弱々しいが、確かに君の中にそれを感じるのだよ」
そしてヴィンセントは、体のどこにも印の顕れなかった僕を時折見ては、そのまま何やらブツブツと唱え始めた。
「エリシア様、リアム様。 とりあえず、ステータスを確認してみてはいかがですかな?」
すると、そんなヴィンセントを横目に、執事であるバットが提案する。
「そうね、魔力契約が結ばれていれば称号の欄にその事が追加されているはずだわ・・・それに ──」
そしてずっと一緒に話を聞いていたリンシアも、そのバットの意見に賛同し── 
「── ああなったヴィンスには、暫く何を言っても無駄よ」
今もブツブツと独り言を唱えているヴィンセントを眺めながら仕様がなさそうに軽く溜息を漏らす。しかしそんな彼を見つめる彼女の眼差しからは、愛おしさの様なものを感じた。
「「ステータス」」
リンシアに促されたエリシアと僕は、二人同時にステータスの呪文を唱える。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
必然と流れる沈黙。僕たちは自分たちのステータスボードを静かに眺める。
「どう? 二人とも、魔力契約の表示はあったかしら?」
そんな特に反応を示さない僕たちに、心配そうに状態を尋ねるリンシア。しかし ── 
「「・・・・・・」」
僕たちは二人とも、その一度めの質問に答える事はなかった。
「エリシア!? リアム君!!」
すると束の間、異変を感じ取ったリンシアが大声で僕たちの名を呼ぶ。そして── 
「「・・・あっ」」
漸く、その大きな声で現実へと帰ってきた僕とエリシアは、二人してそんな間抜けな声を出す。
「二人とも大丈夫?」 
そして再び僕たちの心配を口にするリンシア 。
「・・・すみません。ちょっと想定外の変化があって・・・」
僕はリンシアに謝罪を告げる。・・・そう、僕が直ぐに返事ができなかった理由は、表示されたステータスにある変化があったからであった。そして── 
「私も・・・、ごめんなさい」
僕の謝罪に続くエリシア。だがその言葉には、聞き逃せない一言が混じっていた。
「エリシアも?」
「うん・・・その、よくわからないけど、魔力の値が見たこともない数字になっていて・・・」
「「・・・ッ!」」
そのエリシアの言葉に、僕とリンシアは驚愕を隠せない。
「エリシア・・・よかったらそのステータス、私にも見せてくれないかしら」
どこか真剣な声色で、エリシアにステータスの共有を求めるリンシア。そして── 
「《魔力契約:リアム》・・・魔力契約は上手くいったよう・・・ッ魔力1万と920!? なにこの異常な数値!!?」
エリシアのステータスを見たリンシアの口から、更なる驚きの情報が告げられる。
「なんだと!?」
すると先ほどまで、ブツブツと独り言を呟いていたヴィンセントも驚愕の声をあげてエリシアのステータスボードを食い入るように見る。
「エリシアの魔力は1000に届くかどうか・・・それでも、人種の成人平均魔力と同等程度であったはずだが・・・」
そしてリンシアの言葉に間違いがなかったことを確認したヴィンセントが、その不可解な変化に疑問を呈する。
「これでは我が父と同等の魔力量だぞ・・・。私の魔力も精々5000、それもエリシアはまだ8歳だ・・・。一体何が・・・」
再び、考察の世界へと誘われたヴィンセント。
「リアム君も魔力が増えていたとか・・・?」
しかし今度は、ただ一人の世界に浸る事はなかったようだ。
「いいえ、魔力は元の数値から変化なかったんですが・・・。称号の他に新しいスキルが追加されていて・・・」
「・・・なに?」
僕の言葉を聞いて、片眉を上げるヴィンセント。そして ── 
「《魔眼:魔族の血胤》・・・」
僕がそのスキルを読み上げた瞬間 ── 
「ヴィンス・・・」
「・・・!」
それまでも、不可解な晴天霹靂に見舞われていたヴィンセントとリンシアであったが、そのスキルの名を聞いた瞬間、彼らは今日一番の驚きを見せるのだった。
「ん・・・朝」
僕は窓から差し込む日の光を受け、目を覚ます。
「いつもと違う天井・・・」
この体験には妙なデジャヴを感じる。
「それになんだか体が重・・・ッ!」
すると、僕の胸元から下肢にかけて、いつもは感じることのない重みを感じた。
僕はその重さの原因を確かめようと、両手をついてゆっくりと抜け出す様に下半身を後ろに引く。すると── 
「え・・・エリシア?」
なんとそこには、エリシアがスヤスヤと寝息をたてて僕の膝の上で眠っていた。
「ん・・・ん〜・・・あれ、リアム・・・?」
するとその声に反応したのか、目を覚ましたエリシアが目をこすりながら片手をついて体を起こし、僕の目の高さまで顔をあげる。体勢的には、エリシアが僕に覆いかぶさる・・・そんな感じだ。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
訪れる沈黙に、チュンチュンと外の庭で小躍りする小鳥たちの鳴き声のみが部屋に響き渡る。
「・・・はぅ」
次の瞬間、沸騰するお湯のごとく一瞬で顔を真っ赤にするエリシア。
「へ・・・?」
僕はそんなエリシアの反応に間抜けな声を出して状況を飲み込めずにいた。すると── 
── コンコン「エリシア様、リアム様、朝食のご用意ができました。準備ができましたら、ダイニングまでお越しください」
部屋の扉を叩き、朝食の準備ができたことを知らせに来たバットの声が廊下の方から聞こえてきた。
「わ・・・わかったバット! 直ぐに行く!」
転進、その声にハッとなったエリシアは直ぐ様後ろに跳びのき、少し距離を取るとバットに返事を返す。
「では、お待ちしております」
そうしてバットはエリシアの返事を聞くと、そのままダイニングの方へと向かっていった。
▽      ▽      ▽      ▽
「おはよう」
「おはよう二人とも、昨晩はゆっくり眠れたかしら」
朝食の並べられたダイニングに僕たちがつくと、先に食事を始めていたヴィンセントとリンシアが僕たちと挨拶をする。
「おはようございます。お父様、お母様。・・・今日はお母様も一緒に朝食を摂ってるのね!」
丁寧に朝の挨拶を交わし、いつもは一緒に朝食をとることがないリンシアがいることに興奮を隠せないエリシア。
「ええ、昨日の今日ですもの・・・。あなたたちの様子が心配でね」
どうやら、リンシアは昨日吸血を行った僕たちのことを心配して今日は一緒に食事をとっている様である。・・・これで昨日の別れ際の彼女の言葉にも納得だ。
「・・・おはようございます。・・・あの、父さんと母さんは・・・」
「ああ、ウィルさんたちなら先に朝食を摂られてお仕事に行かれたわよ。なんでも、ウィルさんは今日約束していた仕事があるとかで、アイナさんもその準備をお手伝いするために先に家に帰られたわ」
「そうですか・・・。わかりました、ありがとうございます」
僕はふと、この場にいない両親のことが気にかかり、そのことを尋ねたが、どうやら二人とも先に帰ってしまった様だ。
「アイナさんとはもっとお話をしたかったのだけれど・・・、また是非、いらしてくださいと伝えておいてもらえるかしら?」
「はい、もちろんです」
二人のことを教えてくれたリンシアからの願いに答えながら、僕はエリシアとともにクロッシュの被せられた朝食が並ぶ席へと腰を落ち着ける。
「これは我が家の毎朝の食事だ。気に入ってくれると嬉しい」
そうして、僕たちが席につくと、ヴィンセントがそう言って、バットがそれぞれ目の前に置かれたクロッシュを取り去る。
「とても美味しそうですね・・・」
僕はそのプレートに乗った食事を見て一言、そう呟く。
朝食の内容はいたってシンプル。スープにソーセージ、スクランブルエッグ。そして後ろからボウルに入った野菜を空いたお皿にバットが盛り付けてくれ、テーブル中央に置かれたバケットから更に注文した個数のパンをとってくれた。
ソーセージは腸詰する分流通量が少なく高価で朝食に口にすることは普段なく、スープはよくダシが染み出ている澄み切ったコンソメ、スクランブルエッグには味付けとして一つまみの黒い胡椒がまぶしてある。
「おいしい」
それは前世ではまさに理想の朝食。パンが白パンでなかったり、サラダにドレッシングはなく塩とオリーブオイルでの味付けと、その食べ方には多少のギャップもあったが、やはりこの世界に来て、この様に贅沢な朝食を摂ったのは初めてであった。
── 朝食を食べ終えた後。
「ところで、昨日は上手く事は進んだかな? よければ契約の印を見せてくれ」
「契約の印?」
僕は吸血による魔力契約が上手くいったかどうかを聴くヴィンセントに、質問を返す。
「ああ。我々が吸血によって魔力を交わらせて繋がりを作ると、それぞれの体のどこかに印が刻まれるものだ・・・この様に」
するとヴィンセントは自分の左手を掲げて見せ、その薬指に指輪の様に絡みつく一つの印を出現させる。
「普段は見えぬが、魔力を込めれば自然と浮き上がる。リンシア同様、大抵は左手の薬指に浮き上がるが、リアム君たちにもそれがしっかり刻まれているかを確かめてほしい」
そういって魔力を込めることを止め、印をしまったヴィンセントは、僕たちに印の確認を勧める。
「あった! 出たよ、お父様!」
そして、体に魔力を巡らせたエリシアが自分の左手薬指に、その紋様が描き出された印を掲げて見せる。しかし── 
「あれ? 出ない・・・」
「ふむ? 他の場所、指や腕、足はどうかね・・・」
「・・・ありません」
同様に、体に魔力を巡らせた僕の体のどこにも、その印が現れる事はなかった。
「なぜだ・・・エリシアの指には印が刻まれている。それに本当に僅か、微かにだが私の中の魔力と類似する小さな魔力を感じるのだが・・・」
「魔力? ・・・あの、もしかしなくても、魔力契約ってお互いに何か影響があったり・・・」
僕はふと、そんな今更な質問をヴィンセントに尋ねてしまう。なぜなら、僕はそれまで魔力契約は単なる一方通行、エリシア
「ああ。魔力契約を結ぶ際、そこに魔力量の差があればあるほど、相手に何かしらの影響を与えやすい。エリシアは人の血も引いているから、特に多少の差があってもマイナスな影響はないだろうが君は別、そして君の魔力は相当なものなのだろう。消え入りそうなロウソクの火の様に弱々しいが、確かに君の中にそれを感じるのだよ」
そしてヴィンセントは、体のどこにも印の顕れなかった僕を時折見ては、そのまま何やらブツブツと唱え始めた。
「エリシア様、リアム様。 とりあえず、ステータスを確認してみてはいかがですかな?」
すると、そんなヴィンセントを横目に、執事であるバットが提案する。
「そうね、魔力契約が結ばれていれば称号の欄にその事が追加されているはずだわ・・・それに ──」
そしてずっと一緒に話を聞いていたリンシアも、そのバットの意見に賛同し── 
「── ああなったヴィンスには、暫く何を言っても無駄よ」
今もブツブツと独り言を唱えているヴィンセントを眺めながら仕様がなさそうに軽く溜息を漏らす。しかしそんな彼を見つめる彼女の眼差しからは、愛おしさの様なものを感じた。
「「ステータス」」
リンシアに促されたエリシアと僕は、二人同時にステータスの呪文を唱える。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
必然と流れる沈黙。僕たちは自分たちのステータスボードを静かに眺める。
「どう? 二人とも、魔力契約の表示はあったかしら?」
そんな特に反応を示さない僕たちに、心配そうに状態を尋ねるリンシア。しかし ── 
「「・・・・・・」」
僕たちは二人とも、その一度めの質問に答える事はなかった。
「エリシア!? リアム君!!」
すると束の間、異変を感じ取ったリンシアが大声で僕たちの名を呼ぶ。そして── 
「「・・・あっ」」
漸く、その大きな声で現実へと帰ってきた僕とエリシアは、二人してそんな間抜けな声を出す。
「二人とも大丈夫?」 
そして再び僕たちの心配を口にするリンシア 。
「・・・すみません。ちょっと想定外の変化があって・・・」
僕はリンシアに謝罪を告げる。・・・そう、僕が直ぐに返事ができなかった理由は、表示されたステータスにある変化があったからであった。そして── 
「私も・・・、ごめんなさい」
僕の謝罪に続くエリシア。だがその言葉には、聞き逃せない一言が混じっていた。
「エリシアも?」
「うん・・・その、よくわからないけど、魔力の値が見たこともない数字になっていて・・・」
「「・・・ッ!」」
そのエリシアの言葉に、僕とリンシアは驚愕を隠せない。
「エリシア・・・よかったらそのステータス、私にも見せてくれないかしら」
どこか真剣な声色で、エリシアにステータスの共有を求めるリンシア。そして── 
「《魔力契約:リアム》・・・魔力契約は上手くいったよう・・・ッ魔力1万と920!? なにこの異常な数値!!?」
エリシアのステータスを見たリンシアの口から、更なる驚きの情報が告げられる。
「なんだと!?」
すると先ほどまで、ブツブツと独り言を呟いていたヴィンセントも驚愕の声をあげてエリシアのステータスボードを食い入るように見る。
「エリシアの魔力は1000に届くかどうか・・・それでも、人種の成人平均魔力と同等程度であったはずだが・・・」
そしてリンシアの言葉に間違いがなかったことを確認したヴィンセントが、その不可解な変化に疑問を呈する。
「これでは我が父と同等の魔力量だぞ・・・。私の魔力も精々5000、それもエリシアはまだ8歳だ・・・。一体何が・・・」
再び、考察の世界へと誘われたヴィンセント。
「リアム君も魔力が増えていたとか・・・?」
しかし今度は、ただ一人の世界に浸る事はなかったようだ。
「いいえ、魔力は元の数値から変化なかったんですが・・・。称号の他に新しいスキルが追加されていて・・・」
「・・・なに?」
僕の言葉を聞いて、片眉を上げるヴィンセント。そして ── 
「《魔眼:魔族の血胤》・・・」
僕がそのスキルを読み上げた瞬間 ── 
「ヴィンス・・・」
「・・・!」
それまでも、不可解な晴天霹靂に見舞われていたヴィンセントとリンシアであったが、そのスキルの名を聞いた瞬間、彼らは今日一番の驚きを見せるのだった。
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