アナザー・ワールド 〜オリジナルスキルで異世界とダンジョンを満喫します〜

Blackliszt

65 便り

「ただいま〜」 

「お帰りなさいリアム」 

「母さん、これカリナ姉さんからの手紙と学院からの報告書」 

 挑戦するエリアも決まり、ちょっとしたゴタゴタがあったものの無事に解散して家にたどり着いた僕は、今日学校からもらった書類を母さんに手渡す。 

「あらあら、相変わらず無茶してるわね〜・・・」 

 どうやらカリナ姉さんはまた、王立学院から逃げ出そうとしたらしい。  
 中等部へと進級したカリナ姉さんは、この春から王都にある、アウストラリア王立学院へと進学した・・・・・・というのもスクールでも一際優秀だったカリナ姉さんに、なんと王立学院から直々の招待があったのだ。 

 実を言うとカリナ姉さんは初め、特待生として招待された王立学院に進学することを激しく拒否していたのだがその理由が・・・ 

「リアムと離れ離れになるなんて嫌よ!・・・リアムと離れるぐらいだったら私、中等部には行かないで冒険者になってこっちで生活する!!」 

と、ものすごいブラコンを発動させていたのだ。事実、学院へと進学したカリナ姉さんは既に、3回ほど脱出を試みたそうだ。 

「しかしカリナ、王立学院に招待されるなんて凄いことなんだぞ」 

 そんなカリナ姉さんをどうにか説得しようとする父さん。 

「そうよカリナ・・・王立学院はウィルと私も通っていた学校よ?いいところよ?」 

 そして母さんも、そんなカリナ姉さんを説得しようと必死だ。 

 アウストラリア王立学院。 
 王立学院はこの国の王都アウストラリアに建てられた国立の学院であり、様々な科が連立するいわば国一のエリート学校だ。各地の領地が運営するスクールと比べるとそのレベルは一線を画しており、国の重要な役職であったり、教授といった研究職、中には騎士科もありその重要性は計り知れない。因みにどこのスクールにも中等部までしか存在しないのに対し、唯一国に認められている高等部があるのもこの学院だけでエスカレーターも可能・・・。そんな学院から招待が来ているのに、それを受けないなんてもったいないことこの上ない。 

「それでもリアムが一緒にいないなんて私にはなんの意味もないところよ・・・」 

 そしてやはりカリナ姉さんはその招待を頑として受けようとはしない・・・そこで ──  

「王立学院に招待されるなんてカリナ姉さんはすごいなー・・・」 

 僕は天井を見上げて足をブラブラしながら、純粋さを演出して呟く。 

 ・・・ピクリ。 

 そんな僕のつぶやきに、俯くカリナ姉さんの体がピクリと震える。 

「かっこいいなー・・・尊敬するなー・・・」 

 ・・・ピクピク。 

「僕も将来は王立学院に行ってみたいなー・・・」 

 それはトドメの一言。 

「父さん母さん!私王立学院に行くことにするわ!」 

 そしてカリナ姉さんは僕の思惑通り、王立学院へ行くことを決意した。 

「本当に仕方ないわね・・・カリナは」 

 当時そう呟いた事と同じことを手紙を眺めて呟く母さん。表情カオにはとても優しい微笑みを浮かべ、それは一人の母親の顔である。 

「そういえば母さん・・・来週いよいよ挑戦しようと思うんだ」 

 そんな母さんに、僕はもう一つの報告をする。 

「そう・・・カリナも遠いところで一人頑張っているわ。リアムも頑張りなさい」 

 そしてその報告を聞いた母さんは先程同様、優しい眼差しで僕の背中を押してくれるのだった。 

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