アナザー・ワールド 〜オリジナルスキルで異世界とダンジョンを満喫します〜
55 もう一悶着・・・?
アランの推察に見事ボロを出して逃走を図った挙句、残念な結果を迎えたケイト。 
「・・・もう・・許して」 
先生達に捕縛されたケイトは現在、アランが下したジェグドによる闇魔法の一種であろう黒いオーラを纏い、正座させられていた。 
『こっちの世界にも正座・・・あったんだ・・・』 
そんなケイトに課せられた懲罰を見て、僕は日本の正座文化を思い出す。 
「すまなかったなリアム君。教師たるもの、本来生徒の前でこんな弱音を見せてはいけないのだが・・・」 
「いいえ、なんかもう慣れました」 
「そうか・・・」 
アランは僕のその「慣れた・・・」という回答に、只々やるせないように気持ちのやり場に困っているようだった。 
▽   ▽   ▽   ▽ 
「あっ・・・お帰りなさいリアムくん!大丈夫?どこも怪我してない?」 
「シーナさん?」 
ケイトへのお仕置きも程々、今僕は転送陣を使ってアース側のテールへと戻ってきていた。 
「なんでシーナさんがここに?」 
そしてそんな僕を出迎えてくれたのは僕のダンジョンオペレーターとなった彼女、シーナだった。 
「よかった〜・・・実はね、ダンジョンの中でスクールの先生が実験に失敗して大爆発を起こしたんだって・・・それでリアム君大丈夫かな〜って心配してたの」 
「そ・・・それはわざわざありがとうございます」 
どうやらシーナはダンジョン内で(僕が)起こした爆発に巻き込まれていないか心配で出迎えにきてくれたらしい。 
「それじゃあ今日はついでに退場ゲートまで一緒に行きましょうか!」 
「で・・でも」 
しかし僕はそのシーナの提案にすぐに乗ることができなかった・・・すると── 
「私たちのことは気にしなくていい。また今後のことは後日話し合うとしよう」 
一緒に転送陣に乗って帰ってきたアランが気を使い、残りの話し合いは後日にしようと提案をしてくれる。 
「ありがとうございます!アラン先生!」 
そんなアランに、僕は直ぐさま礼を述べた。 
「それじゃあ俺たちは先にスクールに戻ってるぜ!」 
「またね!リアム君!」 
「また学校で」 
そして僕に次々と声をかけてくれる先生たち。 
「ほら!お前もシャキッとしないか!」 
しかしそんな中、一人だけグッタリして口を重くしている人物がいた。 
「全く・・・あと少しで校舎に着くからもう一踏ん張りだ・・・」 
・・・そう、その先生とは言わずもがな僕の担当教師であるケイトである。 
「だって・・・みんな・・容赦ないん・・・・ですから・・・」 
現在ジェグドに肩を貸してもらっているケイトは今完全に憔悴しきっていて、震える足で踏ん張りがきかずに、まるで生まれたばかりの子鹿のようにプルプルとその体を支えていた。 
・ 
・ 
・ 
しかし── 
「あの・・・その方、ダンジョンから出て来たのになんでそんな体調悪そうなんですか?」 
ふとその光景に違和感を覚えたシーナが、具合悪そうにしていたケイトに疑問を呈する。 
「・・・!」 
するとシーナに健康状態を指摘されたケイトは、まるで目から鱗が落ちたようにハッとした顔をしていた。 
『それほど精神的にきてたんだな・・・』 
僕はそんなケイトの様子を見て、なんだか申し訳ない気持ちになってくる。 
実際、ダンジョンを出ると入る前の状態で肉体の負傷は回復するのだが精神までは回復しない・・・のだが・・・ 
「そう・・・そうでした!私は遂にあの呪縛から解放されたのですね!」 
 
おそらくケイトの言う呪縛とは正座による足の痺れ、そしてジェグドによってかけられた魔法負荷による疲労のことであろう。 
「ああ、私としたことが失念しておりました!」 
しかしシーナの提起により自身の足の痺れが取れていることに気づいたケイトはみるみるうちに元気を取り戻していく。 
「魔法陣学の鬼才ケイト!ここに復活です!」 
そして最後には決めポーズまで決めて復活を宣言するまでに回復していた。 
「それではリアムさん・・・私はこれから考察したい魔法事案がありますので、また学校でお会いしましょう・・・」 
それからは一秒も待たずに、やることがあるとその場を去ろうとするケイト。 
「バカ者!お前は帰ったらまず始末書だ!」 
そんな一目散に走っていくケイトを咎めようと叱りつけるアラン。 
「アラン!私には私の使命があるのです!そんないつでもできることは後です後!」 
しかし振り返り返事をするのも早々、アランの忠告も聞かずにケイトは再び走り出して行ってしまった。 
「コラ待てケイト!・・・それではリアム君また学校でな!」 
それからアランはケイトを追いかけるように、だが律儀にも別れの挨拶をしてその場を立ち去る。 
「面白い先生方ですね・・・」 
 
そんな二人の背中を見送りながら、隣にいたシーナは唖然としつつもそう呟いた。 
「はい・・・良い先生方です」 
そして僕の初ダンジョンは、そんな嵐の後の静けさを残して幕を閉じた・・・・・・ 
と思っていたのだが・・・・・・ 
▽   ▽   ▽   ▽ 
「なんでダンジョンポイントが316万ptもあるのよ!」 
ダンジョンの退場ゲートで、一人の女性が驚愕の声を上げる。 
「なに言ってるんですかクロカさん?そんなはずはないですよ?」 
因みにクロカとは、退場ゲートでのもう一人の僕の担当オペレーターとなった女性である。 
そして実は僕と彼女は面識がある・・・・・・というのも、僕がギルドカードとステータスの魔石をもらいに行ったあの日、クロカは受付にいた女性だった。 
・・・どうやら彼女はあれから数ヶ月、その間に配属が変わったようで、偶然にも僕のもう一人の担当オペレーターとなったのだ。 
「リアムくんは今日ダンジョンに入ったばっかりですし、第一私が入場前に確認したポイントも餞別分の100ptのみ・・・そんな急激に溜まるようなものじゃありませんよ?」 
僕のギルドカードを見てありえない数字を口にするクロカに「冗談言わないでくださいよ〜」と笑顔で問いかけるシーナ。 
「それに個人のダンジョンポイントを漏らすような発言は原則禁止じゃないですか・・・クロカさんももう少し気をつけて・・・」 
しかし隣でクロカに注意していたのも束の間、突然シーナが言葉を詰まらせる・・・。 
「クロカさんも・・・気をつけて・・・・・・」 
そしてつい、僕は突如壊れたラジオのように様子を可笑しくしたシーナの方へと視線を移す・・・ 
 
「気を・・・・・・気を・・つけて・・・」
すると、シーナの顔の前にクロカが黙って見せつけるように僕のギルドカードを晒していた。 
・ 
・ 
・ 
「──嘘」 
数秒遅れで漏れるシーナの疑心の呟き・・・・・・そして── 
「クロカさん・・・どうやら私、転送に紛れ込んだマッドラットの錯乱を受けたようです・・・今すぐ上層部にゲートの封鎖を要請して来ます」 
混乱してしまったシーナは、あらぬことか現実的にまずあり得ないことを口にし始める。 
 
「現実逃避しないでシーナ!そもそもセーフエリア内にある転送陣に野生のマッドラットが紛れこめるわけないでしょ!」 
左右キョロキョロしながら混乱するシーナをクロカが戒める。 
「ハッ・・・!だとするととある組織の計画的な犯行!?それとも密猟者の・・・」 
しかしその戒めも虚しく、遂にはありもしない空想の謀略を唱え始めたシーナ。 
「んなワケないでしょ!」 
するとシーナにクロカがすかさずチョップを入れる・・・ 。
「アテッ!・・・酷いですよクロカさん!いきなりブツなんて・・・」 
クロカの突然のチョップに悶絶するシーナ──。 
『それにしても、こういう光景を最近よく目にする気がする・・・』 
僕は不覚にも、そんな二人のやりとりを見て、ふとカリナとラナ、そしてアランとケイトの顔を思い浮かべてしまった。 
しかしそんな想像に耽るのも数秒 ──
「とりあえずリアム君・・・ギルド支部の方まで同行してもらえるかしら・・・」 
突然告げられるクロカのギルド連行宣言。 
「へっ・・・?」 
そして当然のように理解が追いついていない僕。 
「ほらこれ・・・まさかあなたには別の数字が見えていたりしないわよね?」 
そうして僕の目の前にも晒されたダンジョンカード・・・・・・
そこには己の正しさを証明しようとする僅かなクロカの杞憂を十分に示す、どう見てもおかしい桁と数字で構成された316万ものダンジョンポイントが載る僕のダンジョンカードがあった。 
「・・・もう・・許して」 
先生達に捕縛されたケイトは現在、アランが下したジェグドによる闇魔法の一種であろう黒いオーラを纏い、正座させられていた。 
『こっちの世界にも正座・・・あったんだ・・・』 
そんなケイトに課せられた懲罰を見て、僕は日本の正座文化を思い出す。 
「すまなかったなリアム君。教師たるもの、本来生徒の前でこんな弱音を見せてはいけないのだが・・・」 
「いいえ、なんかもう慣れました」 
「そうか・・・」 
アランは僕のその「慣れた・・・」という回答に、只々やるせないように気持ちのやり場に困っているようだった。 
▽   ▽   ▽   ▽ 
「あっ・・・お帰りなさいリアムくん!大丈夫?どこも怪我してない?」 
「シーナさん?」 
ケイトへのお仕置きも程々、今僕は転送陣を使ってアース側のテールへと戻ってきていた。 
「なんでシーナさんがここに?」 
そしてそんな僕を出迎えてくれたのは僕のダンジョンオペレーターとなった彼女、シーナだった。 
「よかった〜・・・実はね、ダンジョンの中でスクールの先生が実験に失敗して大爆発を起こしたんだって・・・それでリアム君大丈夫かな〜って心配してたの」 
「そ・・・それはわざわざありがとうございます」 
どうやらシーナはダンジョン内で(僕が)起こした爆発に巻き込まれていないか心配で出迎えにきてくれたらしい。 
「それじゃあ今日はついでに退場ゲートまで一緒に行きましょうか!」 
「で・・でも」 
しかし僕はそのシーナの提案にすぐに乗ることができなかった・・・すると── 
「私たちのことは気にしなくていい。また今後のことは後日話し合うとしよう」 
一緒に転送陣に乗って帰ってきたアランが気を使い、残りの話し合いは後日にしようと提案をしてくれる。 
「ありがとうございます!アラン先生!」 
そんなアランに、僕は直ぐさま礼を述べた。 
「それじゃあ俺たちは先にスクールに戻ってるぜ!」 
「またね!リアム君!」 
「また学校で」 
そして僕に次々と声をかけてくれる先生たち。 
「ほら!お前もシャキッとしないか!」 
しかしそんな中、一人だけグッタリして口を重くしている人物がいた。 
「全く・・・あと少しで校舎に着くからもう一踏ん張りだ・・・」 
・・・そう、その先生とは言わずもがな僕の担当教師であるケイトである。 
「だって・・・みんな・・容赦ないん・・・・ですから・・・」 
現在ジェグドに肩を貸してもらっているケイトは今完全に憔悴しきっていて、震える足で踏ん張りがきかずに、まるで生まれたばかりの子鹿のようにプルプルとその体を支えていた。 
・ 
・ 
・ 
しかし── 
「あの・・・その方、ダンジョンから出て来たのになんでそんな体調悪そうなんですか?」 
ふとその光景に違和感を覚えたシーナが、具合悪そうにしていたケイトに疑問を呈する。 
「・・・!」 
するとシーナに健康状態を指摘されたケイトは、まるで目から鱗が落ちたようにハッとした顔をしていた。 
『それほど精神的にきてたんだな・・・』 
僕はそんなケイトの様子を見て、なんだか申し訳ない気持ちになってくる。 
実際、ダンジョンを出ると入る前の状態で肉体の負傷は回復するのだが精神までは回復しない・・・のだが・・・ 
「そう・・・そうでした!私は遂にあの呪縛から解放されたのですね!」 
 
おそらくケイトの言う呪縛とは正座による足の痺れ、そしてジェグドによってかけられた魔法負荷による疲労のことであろう。 
「ああ、私としたことが失念しておりました!」 
しかしシーナの提起により自身の足の痺れが取れていることに気づいたケイトはみるみるうちに元気を取り戻していく。 
「魔法陣学の鬼才ケイト!ここに復活です!」 
そして最後には決めポーズまで決めて復活を宣言するまでに回復していた。 
「それではリアムさん・・・私はこれから考察したい魔法事案がありますので、また学校でお会いしましょう・・・」 
それからは一秒も待たずに、やることがあるとその場を去ろうとするケイト。 
「バカ者!お前は帰ったらまず始末書だ!」 
そんな一目散に走っていくケイトを咎めようと叱りつけるアラン。 
「アラン!私には私の使命があるのです!そんないつでもできることは後です後!」 
しかし振り返り返事をするのも早々、アランの忠告も聞かずにケイトは再び走り出して行ってしまった。 
「コラ待てケイト!・・・それではリアム君また学校でな!」 
それからアランはケイトを追いかけるように、だが律儀にも別れの挨拶をしてその場を立ち去る。 
「面白い先生方ですね・・・」 
 
そんな二人の背中を見送りながら、隣にいたシーナは唖然としつつもそう呟いた。 
「はい・・・良い先生方です」 
そして僕の初ダンジョンは、そんな嵐の後の静けさを残して幕を閉じた・・・・・・ 
と思っていたのだが・・・・・・ 
▽   ▽   ▽   ▽ 
「なんでダンジョンポイントが316万ptもあるのよ!」 
ダンジョンの退場ゲートで、一人の女性が驚愕の声を上げる。 
「なに言ってるんですかクロカさん?そんなはずはないですよ?」 
因みにクロカとは、退場ゲートでのもう一人の僕の担当オペレーターとなった女性である。 
そして実は僕と彼女は面識がある・・・・・・というのも、僕がギルドカードとステータスの魔石をもらいに行ったあの日、クロカは受付にいた女性だった。 
・・・どうやら彼女はあれから数ヶ月、その間に配属が変わったようで、偶然にも僕のもう一人の担当オペレーターとなったのだ。 
「リアムくんは今日ダンジョンに入ったばっかりですし、第一私が入場前に確認したポイントも餞別分の100ptのみ・・・そんな急激に溜まるようなものじゃありませんよ?」 
僕のギルドカードを見てありえない数字を口にするクロカに「冗談言わないでくださいよ〜」と笑顔で問いかけるシーナ。 
「それに個人のダンジョンポイントを漏らすような発言は原則禁止じゃないですか・・・クロカさんももう少し気をつけて・・・」 
しかし隣でクロカに注意していたのも束の間、突然シーナが言葉を詰まらせる・・・。 
「クロカさんも・・・気をつけて・・・・・・」 
そしてつい、僕は突如壊れたラジオのように様子を可笑しくしたシーナの方へと視線を移す・・・ 
 
「気を・・・・・・気を・・つけて・・・」
すると、シーナの顔の前にクロカが黙って見せつけるように僕のギルドカードを晒していた。 
・ 
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「──嘘」 
数秒遅れで漏れるシーナの疑心の呟き・・・・・・そして── 
「クロカさん・・・どうやら私、転送に紛れ込んだマッドラットの錯乱を受けたようです・・・今すぐ上層部にゲートの封鎖を要請して来ます」 
混乱してしまったシーナは、あらぬことか現実的にまずあり得ないことを口にし始める。 
 
「現実逃避しないでシーナ!そもそもセーフエリア内にある転送陣に野生のマッドラットが紛れこめるわけないでしょ!」 
左右キョロキョロしながら混乱するシーナをクロカが戒める。 
「ハッ・・・!だとするととある組織の計画的な犯行!?それとも密猟者の・・・」 
しかしその戒めも虚しく、遂にはありもしない空想の謀略を唱え始めたシーナ。 
「んなワケないでしょ!」 
するとシーナにクロカがすかさずチョップを入れる・・・ 。
「アテッ!・・・酷いですよクロカさん!いきなりブツなんて・・・」 
クロカの突然のチョップに悶絶するシーナ──。 
『それにしても、こういう光景を最近よく目にする気がする・・・』 
僕は不覚にも、そんな二人のやりとりを見て、ふとカリナとラナ、そしてアランとケイトの顔を思い浮かべてしまった。 
しかしそんな想像に耽るのも数秒 ──
「とりあえずリアム君・・・ギルド支部の方まで同行してもらえるかしら・・・」 
突然告げられるクロカのギルド連行宣言。 
「へっ・・・?」 
そして当然のように理解が追いついていない僕。 
「ほらこれ・・・まさかあなたには別の数字が見えていたりしないわよね?」 
そうして僕の目の前にも晒されたダンジョンカード・・・・・・
そこには己の正しさを証明しようとする僅かなクロカの杞憂を十分に示す、どう見てもおかしい桁と数字で構成された316万ものダンジョンポイントが載る僕のダンジョンカードがあった。 
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