アナザー・ワールド 〜オリジナルスキルで異世界とダンジョンを満喫します〜

Blackliszt

47 ダンジョンの空

『なんかアトラクションみた・・・』 


 そんなしょうもない思考が頭をよぎりながら、瞬間の緊張を感じる間も無く・・・  


『・・・いだ』 


 一度礼をし、「いってらっしゃい!」の言葉とともに顔を上げたシーナが突然目の前からいなくなり、その背後に見えていた冒険者達の配置や顔ぶれも一瞬で変わった。 


「おい坊主!・・・起動した魔法陣にずっと乗ってると少しずつ魔力を吸われていくぞ!」 


 呆然と、ただ自分に起きた事象を理解することができずに魔法陣に立ち尽くしていた僕に、そんな忠告が浴びせられる。 


「は、はい!」 


 僕はその声に、慌てて転送の魔法陣より外に出た。 


「消えた・・・」 


 すると、僕の乗っていた魔法陣の光は失われる。 


「シーナさんの言った通りだ・・・」 


 ダンジョンの潜入前の事前説明。その時シーナからあった説明の一つに、起動した陣上に使用者や物資がある場合、その魔法陣は僅かに光り、また、複数ある陣の転送先は固定ではなく、陣の数許容範囲内で自動的に先の選択を陣が行うらしい・・・というものがあった。 


「こんなシステマチックな魔法がこっちにもあるなんて・・・」 


 僕はその技術に思わず感動する。 


 因みに、転送先の陣がそうして全て使えない状態の場合、どうやらスタート側の転送陣はそもそも機能しないらしい。しかしこの技術は実は元々発見、発掘されたオブジェクトダンジョンに基本的に備わっている機能であるそうで、その実態は転送を含め、未だに解明されていない。 


「ハッハッハ、お前がリアムだな!」 


 突然、考え事をしていた僕の背後から響くたくましい声。 


『この声は・・・』 


 その声はつい先ほど、聞き覚えのある声だった。 


「ん?・・・違ったか?」 


 そしてその声に後ろを振り向いた僕の目の前にいたのは、聞こえてきた声からの想像通り、どっかのTHE - 傭兵!・・・という人物像と合致する男だった。 
  
「いえ・・・そうですけど・・・」 


 僕は振り向いた先にいた、僕の名前を知っていた見知らぬ男の問いかけについ、返事をしてしまう。 


『やばいッ!・・・しまったッ!』 


 見知らぬ男の不確かな問いかけに答える。そしてそんなリスクの伴う行動をとってしまった僕は、思わず自らの失態を嘆いた。しかし── 


「俺はジェグド・スクランブル!スクールの肉体授業担当で、魔法訓練では闇魔法の担当だ!よろしくな!」 


「・・・先生?」 


 その僕の知る先生とはお世辞にも思えないほど傭兵が似合いそうな見た目に、僕の反応はワンテンポ・ツーテンポ遅れる。 


「そうだ!今日はお前が初日だっていうから、俺がここまで迎えにきてやったぞ!ハッハッハ!」 


 そんな僕の反応を毛ほども気にしていないようなジェグドは、機能性の良さそうな籠手をつけた手で僕の頭に手を起きながら笑い飛ばす。 


「それじゃあ、早速外に出るか!」 


 そして一方、ジェグドはテンポ良く・・・というかアップテンポでどんどん話を進めていく。 


「わかりましたから!せめて肩車はやめてください!」 


 そうして、外へと急かすジェグドは次の瞬間、僕を抱えて肩車をしたのだ。 
 僕は周りから集まる微笑ましい視線に、恥ずかしさで一杯になりながら、慌ててジェグドにその行為を止めるよう嘆願した。 




▽   ▽   ▽   ▽ 


「ここって本当に・・・ダンジョン?」 


 僕は想像していたそれと、今目の前に広がる光景のそれとのギャップに、驚きを隠せない。 


「おう!驚いたか?ダンジョンにはモンスターが近寄らずスポーンしなかったり、激しい天候の変化がないセーフゾーンやポイントといった安全地帯がある。ようはそれだ」 


 隣では、スクール教師の一人であるジェグドがこの街について説明をしている。 


「それにここは、アースとガイアを繋ぐマザーポイントのセーフエリアで、こうしてダンジョンの中にも一つの街が形成されているってわけだ」 


 今目の前には整備された土の道に、ノーフォークの街とは比べ物にはならないが、ちらほら目立つ立派な建物の他に、幾つも立ち並ぶ素朴な建物らを確認することができた・・・。そして── 


「空が・・・ある」 


 僕が何よりも驚いたのは、そこに空が広がっていたことである。 


「?・・・そこか?それはそんなに驚くことではないだろう?」 


 しかしそんな僕を見て、ジェグドは不思議そうに首を傾けている。 


 僕はこれまでこの世界のダンジョンについて、前世のRPGによくあった迷宮=ダンジョン=洞窟など・・・といった何かしらにしっかりと区切られたものという定義空間を夢想し、それらは閉塞感や暗さ、過酷な環境に置かれた一種の大規模な迷路を想像していた。 


「お前はコンテストを見たことがないのか?」 


「いえ・・・一度だけ見たことがあるんですが、その時の場面は深い森の中で、映像では空を確認することができませんでした・・・」 


 ジェグドのいうコンテストは、ステータスの魔石を受け取った日、僕が一度父さんとアース側のテールで見た地上中央広場のダンジョン内中継による観戦のことである。 


「そうか、ま!気にするな!」 


『なんかシンプルな人だ・・・』 


 僕はそんなジェグドの切り替えの早さとおおざっ・・・もといシンプルさに、とりあえず今は深く考えるの止めることにする。 


「さあ、スクールの魔法練習場はあっちだ!ちょっと歩くし、時間も押してるから早く行こうぜ!」 
  
 そして僕たちのいくべき方向を指差したジェグドは、大きな掛け声とともに僕を牽引し、目的地へと向かうのであった。 

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