VRゲームでも身体は動かしたくない。
第4章49幕 村長<hizzoner>
『聖精林 ホースト』と『闇精林 ダーッズ』の精霊神像に接触し『精霊神像9/11』まで進めた私は皆の待つ馬車に乗ります。
「エルマが調べた通り、ただの森だった」
「でしょ? エルフがたくさんいるかもってんで、エルファーがたくさん集まってたみたいなんだけど、誰もいなかったっていう書き込みを見つけてね」
エルファー……。
「そうだったんだ」
「『ウィンデール』と同じで誰もいませんからね。では『精霊の森 エレスティアーナ』へ参りましょう」
クルミがそう言い、手綱を握りなおしました。
しばらく馬車に揺られていると、森を抜け見渡しの良い場所へ来ました。
「『精霊の森』が見えてまいりました」
クルミがそう言い、馬車の速度を落とします。
「『精霊の森』は副都市で最も狭いですが、『エレスティアナ』の国軍の約半数以上が『精霊の森』出身です」
「そうなんだ」
「うん。特に精霊感応が高くて、みんな高位の【精霊術師】になってる」
「ちょっと興味あるかも」
エルマがそう呟いていました。
「では到着ですね。私は休憩所に預けてきます。折角来たので本家にも挨拶してきたいですし」
「あっ。私もうちの従業員の子の本家に少し顔出したいな」
「うん。じゃぁ私挨拶終わったら休憩所に戻ってるから」
「わかった」
クルミはそう言い、休憩所に向かっていきました。
「挨拶するとは言ったもののどうしよう」
「ん? 何がだい?」
「うちの従業員の子の本家とか知らない」
「あぁ。そう言うことか。聞けばいいじゃないか。チャットで」
「そうだね。そうする」
こういう時NPCとでもチャットできる機能はありがたいです。
『ハンナ。久しぶり』
『あれ? どうしたの?』
『今『エレスティアーナ』に来ててね。本家がここにあるって聞いたから少し挨拶しておきたいんだけど』
『なるほどね。村長の家の近くに案内所があって、その近くに相談役っていう看板がある家があるからそこだよ』
『ありがとう。あとアンナさんってお姉ちゃんだよね?』
『アンナ姉さんにあったの?』
『うん。よろしくだって』
『よかった元気なんだ……ありがと。またすぐ顔出してね』
『うん。落ち着いたらね。じゃぁまた』
「場所分かったから少し行ってくるよ。皆は好きなようにしてて」
「あぁ。気を付けて行ってくるんだよ」
「あたし、修練場覗いてくる」
「僕も修練場ちょっと見たいかなー」
「マオ、も、気になるわ」
「ということだチェリー。ワタシ達は修練場にいるだろう」
「わかった。またあとでね」
修練場に行くといった4人と別れ、私はまず案内所に向けて歩き出しました。
事前の情報の通り、他の副都市に比べかなり狭いようで、少し歩いただけで案内所だろう家が見えてきました。
案内所の近くの相談役という家もすぐに見つけることができました。
すぅと深く息を吸い、ふぅと大きく吐き出し、心を落ち着けます。
コンコンコンと扉をノックします。
「今出ますね」
そう扉の奥から声がし、扉が開きました。
「どちら様でしょうか?」
こちを見て怪訝そうな顔をします。
「初めまして。私チェリーと申します。分家のハンナさんとカンナさんの雇い主でございます」
「まぁ。ハンナとカンナの。中へどうぞ。お茶をお出しします」
「いえ。お構いなく。すこし立ち寄っただけですので。二人とも元気にやっています」
「それはよかったです」
「お伝え出来て良かったです。アンナさんもよろしく言っていました」
「そうですか。アンナも」
「ではこれで失礼します」
「わざわざありがとうございます」
「いえ。こちらこそ突然押しかけてしまい申し訳ありませんでした。今度彼女達には休暇を出して、こちらに来るように伝えますね」
「ありがとうございます」
「では、失礼します」
私はそう言い、その場を後にしました。
当初の目的の精霊神像を探すため、先ほど通り越した案内所まで来ました。
扉を開け中に入ります。
「めずらしいね。何かようかい?」
「えっと精霊神像を探していまして」
「精霊神像かい? それなら村長の家だよ。見せてくれと頼めば見せてくれるはずさ」
「ありがとうございます」
「精霊駆動かい?」
振り向き案内所を出ようとしていた私の背中にそう声がかかります。
「はい。乗り物を作りたいんです」
「乗り物かい。なら精霊駆動を手に入れた後、本都市の【鍛冶職人】デュレアルを訪ねなさい。不肖の息子だが腕はいい」
「分かりました。ありがとうございます」
「気にすることないよ」
また一つ情報を仕入れることができました。
そのままの足で村長の家までやってきました。
「ごめんください」
「はい」
村長というには若すぎる声が帰ってきます。そして扉を開け、10歳かそこらの少年が出てきました。
「何か用でしょうか?」
「えっと村長さんに精霊神像を見せていただこうと思いまして」
「分かりました。ではどうぞ。こちらです」
少しの違和感を感じながらも少年に案内され、家に上がります。
「これです」
歴代の村長の写真のようなものが飾ってある場所へ案内され、その中心に鎮座する精霊神像を見ることができました。
「近づいてもいいですか?」
「大丈夫ですよ」
いつものように精霊神像に近づき、手をかざします。
すると『精霊神像10/11』という表記とともにクエストが更新したことを知らせるアラート音が鳴ります。
詳しく確認します。
『最後の精霊神像を探し、試練を受けよ』
試練……。
「精霊駆動の獲得依頼でしょうか?」
後ろから聞こえた少年の声に答えます。
「はい。精霊駆動を使った乗り物を作りたくて」
「なるほど。手を見せてもらっても良いでしょうか?」
「え、ええ。どうぞ」
私は手を差し出します。
「なるほど。もう大丈夫です。ありがとうございます」
「? はい」
大丈夫、そう言われたので手を引っ込めようとします。
引っ込めようとした手に何かが絡みつき、私を拘束します。
「!?」
「さぁ。試練の時間です」
先ほどの少年から爆発的な魔力が発現し、私を飲みこんでいきました。
「ここは……?」
先ほど正面にいた少年の魔力を浴びてどこかに飛ばされたのでしょうか。
『ここは、精霊の住まう世界』
先ほどの少年の声です。
「精霊の住まう世界とはなんですか?」
『精霊が存在する次元と君たちが存在する次元には少しのズレがあるのさ』
「目に見える精霊もいますよ?」
『それは僕たち精霊神以下超上級の精霊だけさ。普通の精霊達は君たちの力を借りないと顕現することすらできないからね』
納得です。
『さて、試練の内容だけど、いたってシンプルだよ』
「なんでしょうか」
『この次元で最後の精霊神像を見つけるんだ』
「無茶言いますね」
『なぁに。君なら簡単だと思うけどね。如何せん精霊の力を微塵も感じないから』
あっ。酷い。私だって武器を変えれば多少の精霊魔法くらい……。
『装備は何も使えないよ』
「なるほど」
つまり【称号】は使えるということですね。
『そうだね。【称号】の力は精神的な力だから僕レベルでも押さえこめないね』
「あのちょっと。心読まないでもらえます?」
『これは失礼した。この次元では全てお見通しなんだよ』
「そうですか」
『では試練開始。あっ安心していいよ。この次元は時の流れがとてもゆっくりだからね』
「具体的には?」
『先ほどの次元の一分がこちらの一時間に値するね』
「わかりました。では気兼ねなくやれますね」
『じゃぁ僕は向こうの次元から観察しているね。頑張って』
to be continued...
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