VRゲームでも身体は動かしたくない。
第1章15幕 岩塩<rock salt>
起きたばっかりなのですが一度宿屋に帰りエルマを起こすことにします。
「エルマ?」
「むにゃむにゃ……」
「起きてるの知ってるから。瞼ぴくぴくしてるから」
「たはー! ばれちゃった!」
「ずっと寝たふりしてたの?」
「そうだよ! チェリーがいつ帰って来てもいいようにね!」
「もっと遅く帰ってきた方がよかったかな?」
「さすがにそれは困る! ほんとに寝ちゃう!」
「寝ていいよ」
「せっかく一緒に遠くまで来たんだから観光行こうよ!」
「うーん。もう夜だけどどうする?明日にする?」
「いまからでいいかな! ちょっとクエスト見たいし」
あっ案内所まで行っておいてクエスト見るの忘れてた。
「いいクエストあった?」
「……。あったよ」
「とりあえずいこっか」
「うん」
エルマと会話をしつつ案内所まで歩いていきます。
「採掘系の依頼とかだったらもうどうしようもないね」
「それだったら前に≪ネクロマンシー≫でモンスター召喚してやったら楽だったよ」
「その手があったかー。まぁ≪ネクロマンシー≫持ってないし自前の召喚獣でやったらすぐEN枯渇しちゃうよ」
「土の精霊とか召喚したら効率よさそう」
「でも岩塩だよ?」
「たしかに」
しばらく歩き案内所に到着したのですぐさまクエストを見に行きます。
『岩塩採掘依頼』
『岩塩採掘依頼』
『岩塩採掘依頼』
そりゃそーだ。
「緊急のほうはなにかあった?」
「ううん。でも面白いのはあったよ」
「どれどれ?」
『緊急依頼』
『岩塩鉱山に住み着いたモンスターの駆除』
『報酬1匹につき1万金』
「どうする?」
「岩塩掘りに行くついでに見に行く?」
「岩塩掘る気ないんだけど」
「じゃぁ岩塩舐めるついでにいく?」
「いく」
ということで『緊急依頼』を受け、エルマと二人で岩塩鉱山までやってきました。
「昔お父様に連れられて行ったパキスタンのケウラ・ソルト・マインに似てる」
「そうなんだ」
「いえーす! 舐めようと思ったらばっちいからやめなさいって怒られたー!」
「とりあえず下りよっか」
テクテク、ぺちゃぺちゃと整備された階段を下り、地下の大きな空間へとやってきました。
「岩塩っぽい色してるね」
「チェリーなめてみる?」
「じゃぁちょっとだけ」
そういって舌をチロっとだし壁を舐めます。
「……?」
「どうしたの?」
「あっいや……うん。岩塩なのはわかるよ。ただジャリジャリする……」
あと少ししょっぱいと付け足すとエルマも可愛らしい舌を出し、ベローンと壁を舐めました。
「ほんとだ! ちょっとだけしょっぱい! 思ってたんとちがう!」
「それな」
奥の方が狭くなっているようなのでそちらに向かって進んでいきます。
真っ暗で視界がないので松明、代わりの木の棒に魔法で火をつけ、照らします。
松明の灯に照らされ、岩塩が神秘的に輝いています。
「こうしてみるときれいだねー」
「たべちゃうのがもったいないよね!」
「あとでお土産がてらすこし削って帰ろう」
「さんせーい」
徐々に道が狭くなり、人一人がやっと通れるほどの道幅になってしまいました。
エルマはずんずん進んでいきますが、私は中腰なので置いて行かれそうです。
「エルマ! ちょっとまって!」
「おっとごめんよ!おねぇさんにはちょうどいい高さだったもんでね!」
わざとだな。
「なんで急にこんな狭くなったんだろう」
「わからない。奥に何かあるのかもしれないね。ちょっと楽しみ!」
ついには這って行かなければ通れないほどの狭さになってしまいました。
「あたしでもきついんだ。チェリーはお尻がつっかえちゃうかな?」
「はっ?」
「なんでもなーい」
しばらく這っていると奥に広い空間があったようです。
まるで掘った岩塩を持ち帰るのを防ぐように作られていたトンネルを潜り抜けるとそこは……。
モンスターの巣でした。
「エルマこれって」
「わかってる。はめられたね。まさか都市までグルだとは思わなかったけど」
「とりあえず倒そう」
「あいさー」
「≪スパーク≫」
「≪アクア・レイン≫」
初級属性魔法や中級属性魔法で雑魚レベルの敵は駆逐できますが、高レベルモンスターが出た場合に上級や絶級を使うとなると都市の真下に位置するここではあまりにもリスキーです。
『雑魚では相手にならんか。まぁいい』
「誰!?」
エルマが大きい声で誰何します。
『行けお前たち、外から来た不届きものの侵略者を滅せよ』
「無視かよ!」
チクショーと叫びつつもエルマは次の手を準備しています。
「≪召喚〔アース・エレメンタル〕スコードロン≫」
土属性の精霊を大量に呼び出し、敵の出方を見ます。
しかし、すぐに消滅させられ、状況をひっくり返すほどではありませんでした。
『その程度か小虫』
「ムキー! 小虫っていうほうが小虫なんだぞ!」
「それは小学生の理屈じゃない?」
「どっちの味方!?」
「それは置いておいて、このままじゃじり貧。≪ライトニング≫」
「その通りだね。≪ウィンド・カッター≫」
「地形を変えたり、影響を与えない範囲で高威力の魔法使うしかないね!」
「わかってる。だから雷系しか使ってない」
「さすが!」
「化学は苦手だけどね。≪サンダー・ボルト≫」
「雷の精霊たくさんよぼっか」
「お願い」
「≪召喚〔サンダー・エレメント〕スコードロン≫」
エルマがたくさん雷属性の精霊を呼んでくれたのですが、地面に足を着けるなり消滅してしまいました。
「なんで!?」
「わからない!≪ライトニング≫」
あれ? 魔法が発動しない?
「≪ライトニング≫」
やはり発動しないですね。
「エルマ、魔法を封じられた」
「いや、召喚はできてたからたぶん……≪フレイム≫」
ボゥっと目の前が燃えます。
「雷だけ封じられてる! 弱点なのがわかってるんだ」
「なるほど。強敵」
「これじゃステイシーを呼んでも使い物にならないね!」
どうする……? どうする……!?
冷静を装ってはいても頭の中はパニック一歩手前です。
「賭けに出るには敵が多すぎるしね!」
「賭け? 何かあるの?」
「チェリーの詠唱魔法でここら一帯ふっとばす! 懸念は都市が死なないかどうか!」
「それは私が重罪人になるからNG」
「誰か近接の強い人助けに来ないかな」
「流石に来ないでしょ」
「だよね」
「とりあえず雑魚はそろそろ出尽くしたかな?」
「みたいだね」
雷属性以外の魔法を使い何とか大量の雑魚は消しました。
でも……。
『ふふふふ……はぁーっはっはっはは! カッ! ゲッホッホ』
むせるなよ。緊張感台無しだよ。
『では次は少し強い魔物で行こうか≪喚起〔マシナリー・ウルフ〕≫』
喚起?
「エルマ!」
「相手は人間だったみたいだね」
「どこにいるのかがわからないと何もできないのは変わらないね」
「不幸中の幸いはここは灯りで明るいってことくらい?」
「そうだね」
こいつを投入するために雷を封じたみたいですね。
「≪シャドウ・バインド≫」
『ギャッルルル?』
「エルマ!」
「わかってるよー!≪聖剣の加護≫」
エルマの持つ魔法剣のスキルですね。
なかなか強力なスキルですが、魔法スキルが一切使えないデメリットがあったはずです。
「ッシ!」
拘束魔法により動きを止めてあった〔マシナリー・ウルフ〕はすぐに動かなくなりました。
『さて次は……≪喚起〔マシナリー・ナイトワーム〕≫』
「!?」
「チェリーに任すね」
「うん」
マシナリー……機械化されてるとは言え元は〔ナイトワーム〕のはずです。初めて魔法で戦いますが弱点は百も知ってる!
「≪ダーク・スピア≫」
弱点の首の裏に目標を定め発動しました。
よし!倒した!
「ナイスチェリー」
「〔ナイトワーム〕なら任せて。こいつら硬いけどHPが少ない。かなり脆いんだと思う」
「そうだね。次は何が来るのか考えたら震えるね」
「もうユニークレベルのが出てくると考えたほうがいいかも」
「だね」
…………。
追撃がこないですね。
「チェリー?」
「なんだいエルマ?」
「これ絶対敵の親玉逃げたよね?」
「私もそう思う」
「「見なかったことにして帰ろう!」」
歩いて戻るのは大変なので≪テレポート≫で帰ってきました。
「ギルドのメンバーにちょっと声かけて探ってもらう?」
「なんだかんだ言ってハリリンの諜報技能はすごいからね。死んでも別にいいし」
「じゃぁ一応連絡する」
エルマがギルドのみんなに説明をしている頃私は先ほどの相手の笑い声が耳から離れず、胸にチクッと針が刺さったような感覚になっていました。
雷魔法の完全アンチスペル。
高レベル改造モンスターの喚起。
この2点がどうしても引っ掛かります。
「チェリー。とりあえずこのことは案内所の職員に報告しよう」
「そうだね。倒した証拠はあるしね」
そういって案内所まで行き職員に報告をします。
「……ということがあって、大量のモンスターが湧いていました。高レベルのアンチスペルや喚起魔法を使うので生半可な冒険者じゃ返り討ちでおしまいです」
「わかりました。案内所からも正式に依頼を出そうと思います。少々お待ちください」
そういって奥に引っ込んでいきました。
5分ほどして職員が申し訳なさそうな顔で戻ってきます。
「あの……この依頼は出せないそうです」
「えっ? どういうことですか?」
「案内所のクエスト部門の上司から、依頼を出さないことと他言しないことを厳命されました」
「つまり……」
「全てがグル……なんだね」
「人手が足りない、集めよう」
「そうだね。ステイシーにも連絡入れて戦えるプレイヤーを集めよう」
「そうだね」
「少し良いだろうか」
初めて聞く声がします。
振り返るとそこには〔天地阿修羅〕が立っていました。
「すまぬ。盗み聞きをするつもりではなかった。許せ」
「あっはい」
「大方聞いてしまった。拙者も参加させていただこう」
「どうして?」
「街ぐるみで人を騙す。そのようなこと許すべきではない」
「そっか。どうしてここに?」
「風の噂でこの国が腐っていると聞いた。故に馳せ参じた」
「ありがとうございます。とても心強いです」
「拙者一人の加勢などさして足しにもならん。期待するなよ」
「とりえずパーティーに入ってもらってもいいかな?」
「是非もない」
こうしてパーティーメンバーに〔天地阿修羅〕……【最速】を加え、秘かにこの国の浄化作戦を練っています。
to be continued...
「エルマ?」
「むにゃむにゃ……」
「起きてるの知ってるから。瞼ぴくぴくしてるから」
「たはー! ばれちゃった!」
「ずっと寝たふりしてたの?」
「そうだよ! チェリーがいつ帰って来てもいいようにね!」
「もっと遅く帰ってきた方がよかったかな?」
「さすがにそれは困る! ほんとに寝ちゃう!」
「寝ていいよ」
「せっかく一緒に遠くまで来たんだから観光行こうよ!」
「うーん。もう夜だけどどうする?明日にする?」
「いまからでいいかな! ちょっとクエスト見たいし」
あっ案内所まで行っておいてクエスト見るの忘れてた。
「いいクエストあった?」
「……。あったよ」
「とりあえずいこっか」
「うん」
エルマと会話をしつつ案内所まで歩いていきます。
「採掘系の依頼とかだったらもうどうしようもないね」
「それだったら前に≪ネクロマンシー≫でモンスター召喚してやったら楽だったよ」
「その手があったかー。まぁ≪ネクロマンシー≫持ってないし自前の召喚獣でやったらすぐEN枯渇しちゃうよ」
「土の精霊とか召喚したら効率よさそう」
「でも岩塩だよ?」
「たしかに」
しばらく歩き案内所に到着したのですぐさまクエストを見に行きます。
『岩塩採掘依頼』
『岩塩採掘依頼』
『岩塩採掘依頼』
そりゃそーだ。
「緊急のほうはなにかあった?」
「ううん。でも面白いのはあったよ」
「どれどれ?」
『緊急依頼』
『岩塩鉱山に住み着いたモンスターの駆除』
『報酬1匹につき1万金』
「どうする?」
「岩塩掘りに行くついでに見に行く?」
「岩塩掘る気ないんだけど」
「じゃぁ岩塩舐めるついでにいく?」
「いく」
ということで『緊急依頼』を受け、エルマと二人で岩塩鉱山までやってきました。
「昔お父様に連れられて行ったパキスタンのケウラ・ソルト・マインに似てる」
「そうなんだ」
「いえーす! 舐めようと思ったらばっちいからやめなさいって怒られたー!」
「とりあえず下りよっか」
テクテク、ぺちゃぺちゃと整備された階段を下り、地下の大きな空間へとやってきました。
「岩塩っぽい色してるね」
「チェリーなめてみる?」
「じゃぁちょっとだけ」
そういって舌をチロっとだし壁を舐めます。
「……?」
「どうしたの?」
「あっいや……うん。岩塩なのはわかるよ。ただジャリジャリする……」
あと少ししょっぱいと付け足すとエルマも可愛らしい舌を出し、ベローンと壁を舐めました。
「ほんとだ! ちょっとだけしょっぱい! 思ってたんとちがう!」
「それな」
奥の方が狭くなっているようなのでそちらに向かって進んでいきます。
真っ暗で視界がないので松明、代わりの木の棒に魔法で火をつけ、照らします。
松明の灯に照らされ、岩塩が神秘的に輝いています。
「こうしてみるときれいだねー」
「たべちゃうのがもったいないよね!」
「あとでお土産がてらすこし削って帰ろう」
「さんせーい」
徐々に道が狭くなり、人一人がやっと通れるほどの道幅になってしまいました。
エルマはずんずん進んでいきますが、私は中腰なので置いて行かれそうです。
「エルマ! ちょっとまって!」
「おっとごめんよ!おねぇさんにはちょうどいい高さだったもんでね!」
わざとだな。
「なんで急にこんな狭くなったんだろう」
「わからない。奥に何かあるのかもしれないね。ちょっと楽しみ!」
ついには這って行かなければ通れないほどの狭さになってしまいました。
「あたしでもきついんだ。チェリーはお尻がつっかえちゃうかな?」
「はっ?」
「なんでもなーい」
しばらく這っていると奥に広い空間があったようです。
まるで掘った岩塩を持ち帰るのを防ぐように作られていたトンネルを潜り抜けるとそこは……。
モンスターの巣でした。
「エルマこれって」
「わかってる。はめられたね。まさか都市までグルだとは思わなかったけど」
「とりあえず倒そう」
「あいさー」
「≪スパーク≫」
「≪アクア・レイン≫」
初級属性魔法や中級属性魔法で雑魚レベルの敵は駆逐できますが、高レベルモンスターが出た場合に上級や絶級を使うとなると都市の真下に位置するここではあまりにもリスキーです。
『雑魚では相手にならんか。まぁいい』
「誰!?」
エルマが大きい声で誰何します。
『行けお前たち、外から来た不届きものの侵略者を滅せよ』
「無視かよ!」
チクショーと叫びつつもエルマは次の手を準備しています。
「≪召喚〔アース・エレメンタル〕スコードロン≫」
土属性の精霊を大量に呼び出し、敵の出方を見ます。
しかし、すぐに消滅させられ、状況をひっくり返すほどではありませんでした。
『その程度か小虫』
「ムキー! 小虫っていうほうが小虫なんだぞ!」
「それは小学生の理屈じゃない?」
「どっちの味方!?」
「それは置いておいて、このままじゃじり貧。≪ライトニング≫」
「その通りだね。≪ウィンド・カッター≫」
「地形を変えたり、影響を与えない範囲で高威力の魔法使うしかないね!」
「わかってる。だから雷系しか使ってない」
「さすが!」
「化学は苦手だけどね。≪サンダー・ボルト≫」
「雷の精霊たくさんよぼっか」
「お願い」
「≪召喚〔サンダー・エレメント〕スコードロン≫」
エルマがたくさん雷属性の精霊を呼んでくれたのですが、地面に足を着けるなり消滅してしまいました。
「なんで!?」
「わからない!≪ライトニング≫」
あれ? 魔法が発動しない?
「≪ライトニング≫」
やはり発動しないですね。
「エルマ、魔法を封じられた」
「いや、召喚はできてたからたぶん……≪フレイム≫」
ボゥっと目の前が燃えます。
「雷だけ封じられてる! 弱点なのがわかってるんだ」
「なるほど。強敵」
「これじゃステイシーを呼んでも使い物にならないね!」
どうする……? どうする……!?
冷静を装ってはいても頭の中はパニック一歩手前です。
「賭けに出るには敵が多すぎるしね!」
「賭け? 何かあるの?」
「チェリーの詠唱魔法でここら一帯ふっとばす! 懸念は都市が死なないかどうか!」
「それは私が重罪人になるからNG」
「誰か近接の強い人助けに来ないかな」
「流石に来ないでしょ」
「だよね」
「とりあえず雑魚はそろそろ出尽くしたかな?」
「みたいだね」
雷属性以外の魔法を使い何とか大量の雑魚は消しました。
でも……。
『ふふふふ……はぁーっはっはっはは! カッ! ゲッホッホ』
むせるなよ。緊張感台無しだよ。
『では次は少し強い魔物で行こうか≪喚起〔マシナリー・ウルフ〕≫』
喚起?
「エルマ!」
「相手は人間だったみたいだね」
「どこにいるのかがわからないと何もできないのは変わらないね」
「不幸中の幸いはここは灯りで明るいってことくらい?」
「そうだね」
こいつを投入するために雷を封じたみたいですね。
「≪シャドウ・バインド≫」
『ギャッルルル?』
「エルマ!」
「わかってるよー!≪聖剣の加護≫」
エルマの持つ魔法剣のスキルですね。
なかなか強力なスキルですが、魔法スキルが一切使えないデメリットがあったはずです。
「ッシ!」
拘束魔法により動きを止めてあった〔マシナリー・ウルフ〕はすぐに動かなくなりました。
『さて次は……≪喚起〔マシナリー・ナイトワーム〕≫』
「!?」
「チェリーに任すね」
「うん」
マシナリー……機械化されてるとは言え元は〔ナイトワーム〕のはずです。初めて魔法で戦いますが弱点は百も知ってる!
「≪ダーク・スピア≫」
弱点の首の裏に目標を定め発動しました。
よし!倒した!
「ナイスチェリー」
「〔ナイトワーム〕なら任せて。こいつら硬いけどHPが少ない。かなり脆いんだと思う」
「そうだね。次は何が来るのか考えたら震えるね」
「もうユニークレベルのが出てくると考えたほうがいいかも」
「だね」
…………。
追撃がこないですね。
「チェリー?」
「なんだいエルマ?」
「これ絶対敵の親玉逃げたよね?」
「私もそう思う」
「「見なかったことにして帰ろう!」」
歩いて戻るのは大変なので≪テレポート≫で帰ってきました。
「ギルドのメンバーにちょっと声かけて探ってもらう?」
「なんだかんだ言ってハリリンの諜報技能はすごいからね。死んでも別にいいし」
「じゃぁ一応連絡する」
エルマがギルドのみんなに説明をしている頃私は先ほどの相手の笑い声が耳から離れず、胸にチクッと針が刺さったような感覚になっていました。
雷魔法の完全アンチスペル。
高レベル改造モンスターの喚起。
この2点がどうしても引っ掛かります。
「チェリー。とりあえずこのことは案内所の職員に報告しよう」
「そうだね。倒した証拠はあるしね」
そういって案内所まで行き職員に報告をします。
「……ということがあって、大量のモンスターが湧いていました。高レベルのアンチスペルや喚起魔法を使うので生半可な冒険者じゃ返り討ちでおしまいです」
「わかりました。案内所からも正式に依頼を出そうと思います。少々お待ちください」
そういって奥に引っ込んでいきました。
5分ほどして職員が申し訳なさそうな顔で戻ってきます。
「あの……この依頼は出せないそうです」
「えっ? どういうことですか?」
「案内所のクエスト部門の上司から、依頼を出さないことと他言しないことを厳命されました」
「つまり……」
「全てがグル……なんだね」
「人手が足りない、集めよう」
「そうだね。ステイシーにも連絡入れて戦えるプレイヤーを集めよう」
「そうだね」
「少し良いだろうか」
初めて聞く声がします。
振り返るとそこには〔天地阿修羅〕が立っていました。
「すまぬ。盗み聞きをするつもりではなかった。許せ」
「あっはい」
「大方聞いてしまった。拙者も参加させていただこう」
「どうして?」
「街ぐるみで人を騙す。そのようなこと許すべきではない」
「そっか。どうしてここに?」
「風の噂でこの国が腐っていると聞いた。故に馳せ参じた」
「ありがとうございます。とても心強いです」
「拙者一人の加勢などさして足しにもならん。期待するなよ」
「とりえずパーティーに入ってもらってもいいかな?」
「是非もない」
こうしてパーティーメンバーに〔天地阿修羅〕……【最速】を加え、秘かにこの国の浄化作戦を練っています。
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