破壊の創造士

ノンレム睡眠

029:戦争準備




 俺と配下達は皆武器を構え、目の前の三人を睨み付ける。その視線を全く気にせず、三人は面倒そうに口を開く。

「ったく手間かけさせやがって。かなり危ないところだぜ。」

「まったくね。無能な王は受け入れるのに、なぜこいつら否定するのかしら。おかげで完全憑依もままならないわ。」

「フフフン。今からお楽しみなんでしょ?そう機嫌を悪くすることもないよ。」

 老人が女性口調で話し、ガッチリした剣聖が子供のように振舞うカオスな状況が展開されているが、俺たちの意識はそれどころではなかった。

「あら。固まっっちゃってどうしたの?突然すぎて声も出ないようだけど、要件を言わせてもらうわね。」

 老人が一歩前に出て大きな巻物を取り出して読み上げる。

「本国、ネルディウス王国は貴国に宣戦布告を受け渡す。拒否権は認めない。戦争形式は『攻城戦』とする。尚、他国の介入やそれに相応する行為は認められない。開戦までの期間は今日を含め1か月。勝利条件は戦争形式によるが、リタイアも認められない。」

 「拒否させてもらおう。」

 俺はきっぱりと断りを入れた。

「聞いてなかったのかしら。戦争放棄は認められないのよ?」

「戦争は世界法律にのっとって行われる。そうだろう?ならば俺たちは戦争の拒否権ならある。貴国に対する武力行使やあらゆる妨害はしていないからな。」

  図書館で世界法律の存在は知っていた。もちろん調べ、必要そうなものだけは頭に入れておいた。その中の一つが戦争における共通認識だ。戦争は、承認国が政治的、武力的な妨害を行っていない場合、承諾側に拒否権、形式の決定権がある。もちろん俺たちにもその権利はある。

「ふぅ。もうお気づきだと思うけど、貴方たちが相手にするのは表面上ネルディウス王国で、実際は不死の魔人様の憑依部隊よ?そんな法律関係ないわ。最悪、この国に罪を担ってもらうわ。」

「そうか。それでは『他国の介入やそれ相応の行為は認めない』はどう言い訳をするんだ?」

「何を言いっているの?ネルディウス王国はもはや不死の魔人様のものよ。国王がそれを認めてしまってはそう言わざる得ないわよね?」

 成程、この国が戦争で死者一人でない理由が良く分かった。ステータスを見ると憑依した奴のステータスが加算されているのだ。500~1000といった決して大きな数字ではないが、一般民からしてみれば数十倍強くなるようなものだ。

「まあいい。それに攻城戦は俺が城を用意するといことか?」

「もちろんよ。この城でもいいけど、町が邪魔だわ。町ごと蹂躙していいならそれでも構わないわ。」

「それなら安心だ。お前らを殲滅したら町ごと巻き込んでたようなことがあったら嫌だからな。」

「私たちを殲滅?おかしなことを言うのね。戦力差を理解できていないのかしら。」

「お前らはここに来て何を見た?偵察のつもりで来たようだが、その重役がこの程度なら恐れるに足らずだ。」

 そうして前話冒頭に続く。




「さて、一か月前から準備を進めていてよかった。あとは城を創って少し小細工をすれば終わりだ。」

「流石ですリューク様。相手が攻城戦に持ち込むことを予測して準備を進められるなんて。」

 攻城戦になることは読めていた。相手の目的は脅威となりうる俺の抹殺と建国計画の阻止。攻城戦の勝利条件は相手リーダーの抹殺。そして敗戦国は勝戦国の要求をすべて飲まなければならない。勝てば両方の目的を果たせる最良方だ。ただこの国は非常に環境が整っており、破壊するにはもったいない。だから城を創るように言った。すなわち要求は国を明け渡すことだろう。

「しかし、城を創るのは面倒だな。今回は様々な仕掛けが必要そうだ。魔素はあり余っているが、そこまで人員は必要ない。城以外の準備はほぼ終わっているからな。」

「そうですな。本と地獄のような一か月じゃった。」

 俺たちが今日までの一か月で何をしたかを説明しよう。

1:相手の偵察隊の捕獲

2:創造魔法のデパートリーの拡大

3:全員のレベル上げ且スキル付与

4:ダンジョンの攻略



主にこの四つだ。

まず相手の偵察隊。強力な魔法のよる監視だと予想していたがこれは全く魔法とは関係なかった。彼らは地中に潜っていたのだ。霊魂ということもあり、自由に物を転脱できる。俺やミリアが気づけないわけだ。

次に創造魔法のデパートリーの拡大。これはダンジョン攻略と同時進行で進めた。というのも一か月のうち、ダンジョンに3週間も潜っていたのだ。デパートリーを増やすのが目的だったのだが、三週間でかなり創造魔法の精度も上がり、想像に必要な時間もかなり短縮できた。魔法の内容は開戦まで伏せておく。

ダンジョンに潜っている間にかなりの魔物を相手取った。最終階層の80階ではほとんどの魔物のランクがAで、レベルも100前後のものであった。そのため、一匹当たり10万ほどの魔素を含む魔石を落としていった。総合800万ほど魔素がたまったため、魔素不足で困ることはないだろう。全員のレベルも100まで上げられた。

ダンジョン攻略だが、最下層のダンジョン主も倒した。ダンジョン主は一週間周期で現れるらしく、過去に俺が倒した魔人の兵士を倒した後新しい魔物にダンジョン主の称号が付与されたらしい。

「城を創ろう。お前たちはまた素材を集めてきてくれ。山一つはいらないからな。」

俺が釘を押してそう言ったが、結局また地形変更がなされたことは別の話だ。

・・・楽しみだ。進化した俺たちの力を思い知れ。

前戦のようにはさせない。俺は深くそう心に誓い、創造を始めた。




 


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