破壊の創造士

ノンレム睡眠

018:~ジークルス視点~

   ワシは創造されて間もなく我らが主、リューク様こと坊ちゃんから戦闘員統括の地位を授かった。この戦いはその期待にお応えするいい機会だ。私が誰よりも敵を倒し、坊ちゃんへの強い忠誠心を示そう。私はそう考え、やる気に満ち溢れていた。


 しかし坊ちゃんからある心波が届いた。どうやら私たちに連携なるものを伝授したいとのことだった。簡単に説明すれば、防御の堅いワシが守り役。その間に攻撃を仕掛けるのがフレイアとリュンム。屯ってくる雑魚を魔法で穿つのがラルファだ。ワシは内心その作戦には反対であった。4人がまとまって行動すると総合的に相手取る敵の数が減る。それに味方の巻き添えを食らったり、又その逆も然りと考えたからだ。 


 しかし、連携というものは実に素晴らしいものであった。確かに戦う相手は減るが、坊ちゃんが指示したような強力な魔物と私たちのレベル差は50は開いているようで、一人では手に余る相手だった。しかし、連携を組むことによって苦戦することなく敵を殲滅できるのだ。


 敵との実力差を適切に判断し、その対応手段も的確である。そんな素晴らしい主人に創造してもらうことができたことに、ただただ感謝するだけだった。
 

 ところで坊ちゃんはというと、巨大な魔法で一つで数百もの敵を殲滅している。ミリア様も然り、一体どうしたらそんなに強くなれるのだろうと疑問に思うのであった。


「ぬっ!!」


ワシは突然強力な衝撃を受け、吹き飛ばされた。


「ジークお爺ちゃん!」


 孫のように可愛いがっているリュンムが駆けてきた。


「なんじゃあれは、、、。」


 私たちの前に立ちはだかったのは、背丈が5メートル、縦に10メートルはありそうな巨大なスケルトン、いや、ドラゴンであった。


「ジークさん。体勢を整えてください。しっかりと連携をとれば勝てるはずです。」


そう声あげたのはフレイアだ。


「わかっとる。さあいくぞ!」


ワシたちは再び連携を立て直し、ドラゴンへ剣を向けた。


 ワシを先頭にドラゴンへ突撃する。少し後ろをフレイアとリュンムを付ける。ドラゴンが前右足をこちらに向けて振りかぶる。あれを直接防いではまた吹き飛ばされてしまう。ワシは左手に装備した大きな盾(坊ちゃん作)を少し傾けて受け流した。重い腕が盾の上を滑る。それによりドラゴンの重心が右へ傾いた。それを見逃すわけがなく、リュンムが無詠唱で左前足に魔法を叩き込む。


『ブロウアクメト!』


ボキッと左前足が反対方向へ向く。支えをなくしたドラゴンの高い頭部が地面を付く。


『プロミネンス!』


 フレイアの巨大な炎の弾がドラゴンの頭部を焼き尽くす。


 上位魔法を発動して隙のできたフレイアを周りの魔物が襲うが、瞬く間に電撃が走り灰にされる。


「ありがとうラルファ。また助けられました。」


「これが私の役目ですよー。」


 そう明るく受け答えるラルファであったが、まだ勝負はつかないようだ。
 途端。ドラゴンの口から炎のブレスが放たれた。それはワシの防御範囲を超え、中衛の二人にも届いてしまった。


「なかなか手ごわいね、お爺ちゃん。そろそろあれ使ってもいい?」


「この際は仕方ない。頼んだぞリュンム。」


リュンムは笑顔で頷くと、大きな雄たけびを上げた。彼女のスキルによりステータスが大きく上がるのを感じた。


「皆の者、これで終わらせるぞ!」


そう言って再び突撃を開始する。ワシ等がブレスに弱いと確信したのか、今度は吹雪を吹いた。


「させるか!」


ワシは飛び出してドラゴンの顎を蹴り上げた。ブレスは口の中で発動し、後頭部を凍らせた。


「今だ。全力の攻撃を。」


 フレイアとリュンムがお互い顔を見合って頷くと、二人の掌を合わせて同時に魔法を放った。それは風に包み込まれる炎であった。確か坊ちゃんの魔法だがそれの数倍の大きさを誇る。


『いけ!リュークドフレイ!!』


魔法がすさまじいスピードで発射された。あまりの威力にドラゴンは宙に飛ばされ、爆発に巻き込まれてバラバラになった。


「なかなかの魔法じゃな。魔法名が少し気になるが、、、。」


「いいの、かっこいいから。」


そんな軽い会話を紡んだが、やはりミリア様の戦いが気になる。周りを見渡すと大体の戦いは終わったようだが、驚くべき光景が目に入った。


膝をつくミリア様の前に坊ちゃんが背を向けて立っており、敵大将と向かい合っていたのだ。

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