猫耳無双 〜猫耳に転生した俺は異世界で無双する〜

ぽっち。

間話 獣王国と世界の狂気









フレイド・アウルム。
彼は金猫と呼ばれる獣王国の中で最も少ない、種族の長の息子として生まれた。
金猫は獣王国で最もある種族への進化・・を可能だと言われている種族である。
獣人の中でも過去、1人しかなり得なかった伝説の種族。
獣人の頂点にして終着点、獅子族。
獅子族は数百年前、獣王国の発足のため立ち上がった金猫の1人がたどり着いたと言う。


その伝説の一片をここで、語ろう。
伝説の種族は傍若無人に世界を蹂躙していた人族を制圧することから始まった。
快進撃は止まらなかった。
人族は追い詰められている、と勘違いをしていた。
実際は自分たちの領土だけを守り続けた初代獣王。
だが、傲慢で強欲な彼ら人族は元々獣人たちの領土を人族のものと主張し続け、そして禁忌に触れる。
世界の理から外れた者を召喚すること。
勇者召喚だ。
召喚された彼らは人族に言いくるめられ、獣王国との戦争を始めた。
そして、獣王国は負けてしまう。
何とか撤退し、小さいながらも国としての役割を果たすことができる領土を守り抜くことができた。
そして、人族により歴史が改変される。
獣王国は侵略国家としての烙印を勝手に押され今後数百年間、迫害され続けるのだ。
そして、獣王が亡くなり獅子族になり得る猫族たちが獣王国を切り盛りしていった。


しかし、安寧は続かなかった。
再び人族は侵略を始めたのだ。
奪われた領土を取り返すという妄言を吐きながら。
圧倒的な数を使い、獣人達は敗走する他なかった。
そして、当時獣王であるフレイド・アウルムの父であるフーレ・アウルムは我が子であるフレイドを逃す際に囮になり、捕まってしまう。
人族は容赦などは一切せず、フーレは処刑された。
そこからは一方的な蹂躙を人族は行い続ける。
そんな中、フレイド・アウルムは戦い続けた。
同族を守るため。残された王族として国を守るため。
しかし、彼は力はあった。だが、王としての才能は無かった。


「・・・・確かにここは俺たちの故郷だ。でも、いつかは人族が来るかもしれない。それでも、それでも残るのか?クロード、ティルト?」


フレイドはクロードに問う。
彼らはフレイドの部下でもあり、獣人国で三獣士と呼ばれた武人でもある。そして、彼が心を許せる友人でもあった。
しかし、彼らは人族の猛攻により負傷。本来の力を出せなくなっていた。


「・・・・申し訳ないです、フレイド殿下。せめて死ぬなら・・・・皆でこの土地で、と決めたのです。」


クロードは悲しそうな、諦めた表情を浮かべる。


「・・・・無理に戦えとは言わないさ。」


フレイドは彼らの後ろの家の外で談笑している愛弟子2人、ククルとテトを見つめる。
彼女らは身籠っており、2人とも同じくらいお腹が出ている。


「・・・・無理は言わない。だが、今から生まてくる子供を、巻き込むのは・・・・心苦しい。」


「・・・・わかっています。」


「今からでもいい、新獣王国、エデンに来てくれ。・・・・大変な道のりだが、君たちが協力し合えば――――」


「殿下、彼女らは今は安静にしないといけないんです。・・・・エデンに行くにはあの、竜王山を通らなければなりません。」


「・・・・俺の転移魔法で行ければいいんだがな。すまない。」


「あれは殿下専用でしょうに・・・・。」


フレイドの転移魔法は才能スキルであるため、彼にしか使えない。
クロードは妻のククルを見つめる。
彼女は自分の大きくなったお腹をゆっくり撫でながら笑顔になる。


「・・・・単なる予感なんですけど、うちの子達が何とかしてくれるんじゃって思うんです。」


「・・・・僕もそんな気がしますよ。」


ティルトも同様に言う。


「殿下、最後に私たちのワガママを聞いてくれませんか?」


クロードは悲しげな表情で言う。


「・・・・なんだ、言ってみろ。」


「たぶん、いつかこの村は人族に蹂躙されます。・・・・私たちはこの地で死ぬかもしれません。ですが、命を懸けてあの生まれてくる子供たちを守ります。もし、守りきれそうになかった時はあの子達を助けてください。そして、あの子達がエデンに向かうようなことになったら迎え入れてください。」


フレイドは悲痛な表情を浮かべる。


「わかった。約束しよう。」


この約束は守られることとなる。
クロード、ティルト、ククル、テトは子供を命を懸けて守り抜いた。
そして、その様子を歯を食い縛りながら、見守った。
ククルの忘れ形見であるクロはフレイドの予想をはるかに上回る才能を発揮する。




























「・・・・懐かしい、夢だな。」


フレイドは木の上で仮眠を取っていた。
戦友であり、部下である2人との約束を夢に見たフレイド。
起き上がり、少し遠くに見える人族の軍隊を見据える。


『・・・・タイミングがいいわね。そろそろよ?』


フレイドの後ろには獣人の村がある。
元王族として、彼はか弱い国民を守る義務がある。


「エイス・・・・、俺はどこで間違えたのだろうな。」


『何よ・・・・急に?』


フレイドは旧友の夢を見て、彼らを死なさない方法は無かったのだろうかと考えていた。


『・・・・間違いを後悔し続けても意味がない。後悔し、反省し、乗り越えた先に意味がある、よ。』


「ははっ・・・・、君らしくない言葉だ。」


フレイドは笑みをこぼす。


『当たり前よ・・・・。これは私の上司が貴方を助けれなかった時に言ってくれた言葉よ。・・・・まぁ、あの人もこれはあの少年から言われたらしいけど。』


「・・・・ククルの忘れ形見はよく分からんな。君の上司に言うほど長くは生きてないと思うんだが。」


『・・・・ふふっ。精霊には精霊の情報網があるのよ。』


茶化しながらエイスはフレイドの肩に乗る。
遠くから、人族の雄叫びが聞こえてくる。


「・・・・さぁ、行くぞ。」


『ええ・・・・。』


膨大な魔力が2人から溢れ出てくる。
そして、魔力が混ざり合い、同調し合う。


『「完全氷化」』


エイスがフレイドの中にスーッと入り込み、彼の周りを冷気が包み込んでいく。
そして、始まる。
最強の精霊魔法士による一方的な暴殺が。


























エルラルド王国の王都。
その中央に位置する王城の謁見の間にて、1人の男の怒号が鳴り響く。
彼はある獣人の村を襲撃を命令した。
しかし、その結果は惨敗。連隊は8割が1匹の獣人により蹂躙されたのだ。


「くぅそぉ!!!『金魔のフレイド』めぇ!!!」


ドンッ!!!
と国王であるサードス・フォン・エルラルドは玉座の手摺に拳を落とす。
報告をしに来た兵士は自分の首が飛ばないか、ビクビクしている。


「何をしておるのだこの愚図供は!!!?一個連隊だぞ!?それが何をどうしたら1匹の亜人に8割も殺されるのだ!?」


「も、申し訳ありませんっっ!!」


兵士の男は跪いた状態でこれ以上とないほど頭を下げる。
サードスは怒鳴ることをやめない。


「神託が!!神託が降っておるのだぞ!?私たち人族は!!この世の全ての亜人を駆逐せねば行かぬのだ!!!」


「っっは!次こそは!必ず!!」


兵士の男は冷や汗を流していた。
一国の王が1つの神託に政治を委ねているのだ。
まるでそれをやらねばならぬ運命と思っているかの様だ。


「ええい!!!言い訳など聞きとうない!!下がれ!!」


「・・・・っは!」


「1秒でも早く!!あのゴミ供を蹴散らせ!!わかったな!?」


「承りました・・・・っ!!!」


兵士の男は小走りで謁見の間を後にする。
国王は玉座の後ろに盛大に装飾された一体の像に跪き、祈りを捧げる。


「あぁっ・・・・、慈悲深き至高の神、主神ラッシュ様よ・・・・っ!この哀れな私めに・・・・どうかご慈悲を・・・・!!」


一国の王が必死に神に祈る姿は見るものが見れば哀れな姿にも捉えれるだろう。
しかし、サードスは神託を授かってからこれを毎日、行なっている。
そう。狂っているのだ。彼もまた、他の人族も。
だが、世界が更なる狂気に落ちていくのはまだ先のことであった。


























世界から少し離れた次元に存在する神々が住む世界。
神界と呼ばれるその世界で球体の水晶を見ながら、少し顔を顰める男がいた。
金色に輝く髪の毛は神々しい光を放っているかの様で、それに比例する造形の整った顔立ち。
水晶には映像流れており、下界・・・・人間たちが住む世界の様子が映せるようになっている。
今はある男の映像が流れている。
黄金色の金髪の髪の毛に猫耳を生やした20代後半の男。
彼は魔法を使いながら人族たちを蹂躙していた。


「・・・・獣が。」


若干の苛立ちが顔に浮かぶ。


「・・・・まぁいい。もうすぐ私の計画は完遂するのだからな。」


男はほそく笑み、水晶に手をかざすと映像が消え、ただの水晶になる。


「ふふふ、ふはははは!」


不気味な笑い声を響かせながら男はその場から姿を消した。





















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