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猫耳無双 〜猫耳に転生した俺は異世界で無双する〜

ぽっち。

第10話 救出準備















綺麗な水色の毛並みを持った猫族の少女は名をシエル・クレール。
至って大人しい彼女は感情を表に出すことが苦手の少女だ。
そんなシエルもクロらと同様に人族の街から離れた小さな集落に暮らしていた。
口うるさいがシエルのことを1番に考えてくれる母、少し寡黙で厳しいが実はとても優しい父。
そして、周りには同年代の子供がたくさん居て毎日遊び、充実した日々を過ごしていた。
そんな平和な日々が崩れる事になったのは突然の出来事であった。


「害獣どもの住処だ!!!殺し尽くせ!!!」


聴くに耐えない恐ろしい怒号が響き渡ったのだ。
そこからは一方的な蹂躙が始まった。
それほどの実力者がいなかった小さな集落では抵抗する術もなく、女性は犯され、男は動かなくなるまで剣で刺され、子供は連れ去られていく。
中には笑いながら獣人の誇りでもある耳と尻尾を切り落とす人族もいた。


「お母さんっ!!お母さん!!!」


シエルは家族で逃げようとするが父が殺され、自分を庇った母は捕まってしまった。


「シエル!お願いしますっ!!その子だけは・・・・!その子だけには手を出さないでください・・・・!!」


人族の兵士は卑劣な笑みを浮かべながらシエルの母に剣先を突き刺した。
心臓を貫いたであろう剣はシエルの母の命を数秒で奪い去った。


「ひゃっひゃっひゃ!!ガキは利用価値があるから殺さねぇけど大人の害獣はいらねぇんだよ!!」


すると男はなにかを思い付いたかのように卑劣な笑みを浮かべる。
シエルは絶望の表情を浮かべ、母の死体を見つめる。


「――――いい事、思い付いたぜ?おい。しっかりと押さえつけとけよ?」


シエルを押さえている男は何をするかを察したようでニヤッと笑い、先ほどより強い力でシエルを押さえる。


「な、なにを――――!?」


男はおもむろにズボンを下ろし、そそり立つ逸物でシエルの母を死姦し始める。


「やめてっ!!やめてええええええ!!!!お母さんに!!そんなこと!!!やめてえええええ!!!」


「ひへへへへへ!タマンネェなぁ!!その顔!その表情!!」


男は顔を高揚させ、ヨダレを垂らす。
シエルを押さえる男もニヤニヤと気持ち悪い笑みを浮かべている。


「おいおい〜!それ以上やると獣臭くなっちまうぞ?」


辞めさせようと止めるように言うが、実際は止める気などさらさらない。
ただ、シエルを逆らえぬよう絶望の淵に落とすためにやってることだ。
男は何度もシエルの母を死姦しながら、剣を突き刺す。
何度も、何度も、何度も。
シエルが初めて感情を表に出し、叫び、泣き叫んだ。
そして、シエルはこの物語の主人公であるクロに出会うまで人前で感情を表に出さなくなった。


















    



「――――っは!?」


シエルはベッドとは呼べぬ、薄汚い布の上で目を覚ます。
涙が勝手に流れ出て来るので、それを汚れ、ボロボロの服の袖で拭き取る。


「・・・・夢か。」


牢獄のような地下の部屋で彼女は呟く。
声は木霊して、石レンガの壁に吸収されて行く。
地獄のようなあの日から1年。
シエルは奴隷にされ、各地を転々と売られていた。
最初は自分の貞操すら諦めていたが流石に幼過ぎたのか、そこまでには至ってはいない。
だが、時間の問題だと覚悟は決めている。


「・・・・お母さん。」


ふと、優しかった母の顔が脳裏をよぎる。
シエルが首元をスッと触ると冷たい金属の首輪が付けられている。
最初は慣れず、苦しいものだったが最近になって慣れてしまってもう奴隷が板についたなと悲観するようになっていた。
この首輪は奴隷契約の魔法がエンチャントされており、主人の命令に逆らったり、無理に外そうとすれば縮まり始めて首を絞めつけ、最終的には死に至らしめる。
そのため、無理してでも主人の命令に従わなければならない。


「・・・・っ!!」


突然、涙が溢れ出て来る。
いつ死ぬか分からぬ恐怖、両親を殺された怒り。
どれだけ時間が経とうとこれらの感情とは切り離すことが出来ず、毎日こうして声を殺して嗚咽を漏らしている。
母を殺したあの人族が憎い。母を犯したあの人族が憎い。全ての人族が憎い。
しかし、復讐などできるわけもなく、この復讐心を抱えながら人族に使い潰され、殺される。
自身に力が無いことを激しく恨む。


「――――誰か、助けて。」


何度、口にしたかわからない悲痛な叫び。
いくら言っても助けてくれるヒーローのような存在は居なかった。
ボロボロと涙を零しながらシエルの声は虚空へと消えた。






















「――――で、どうするんだい?」


場所はヘルネの街にある宿屋の一室。
3人で一部屋を借りたクロら一行は奴隷にされていた少女を助ける為に作戦を考えていた。
どうするかずっと唸っているクロに対して契約精霊で相棒のケットは問いただす。


「正面から強行突破――――「はダメって言っただろ?」―――わかってるよ。」


クロは少し冷静さを失い、怒りに任せ強行突破しようとしている。
しかし、そんなことをすれば今までやってきたことが無駄になる可能性が高い。


「クロ、クロが怒るのもわかるし、早くあの子を助けたい気持ちも私には分かる。でも、今ここでクロが冷静じゃ無くなったら助けてあげれるあの子を助けれなくなっちゃう。」


意外とここで冷静だったのはティナだった。
彼女にも怒りがこみ上げて来る。しかし、クロほど魔法が使えるわけでもなく、精霊とも契約していないティナは自分の無力さを痛感していた。
何もできない、足手まといの自分が嫌になる。
だからこそ、彼女はここで冷静にクロを説得することにした。
ケットは契約精霊のため、クロが力を使うとなれば否応無しに協力しなければならなくなる。
今、クロを確実に止めることができるのはティナだけなのだ。
悔しいがそれが最善の手だとティナは理解し、クロを説得する。


「あの子は絶対に助ける。でも、それには冷静なクロの判断がいる。だから、落ち着いて。」


クロは奥歯を強く噛み締めながら、ティナの声に耳を傾ける。
クロは息を大きく吸い込み、深呼吸をする。


「・・・・すまない、2人とも。その事については理解はしていたがどうしても身体が動きそうになった。・・・・特にティナ、お前が声をかけてくれなかったら確実にあの場であの男の首を切り落としてた。」


ティナは冷静を取り戻したクロを見て安堵する。
クロは目を閉じて、現状を整理し始める。


「・・・・まず、公で彼女を助けるのはやめたほうがいいな。」


「うん。絶対に人族の人たちが追って来る。また撒くのは大変だって私にも分かる。」


「じゃあ、あの子を助けるためには情報が居る。」


「情報?」


ティナは首を傾げる。


「まず、救出は夜が最適だろう。俺たちは夜目だから、灯を持たなくてもそれなりに行動できる。」


猫の目は人間が必要とする光量の7分の1の光量で十分に見える。
猫族も然り、その特性だけを引き継ぎ、人族よりも夜の行動がしやすい。
灯を持っているだけで見つかるというリスクを軽減できる。


「だが、彼女がどこにいるかは分からない。そして、彼女を奴隷として使ってるあの商会らしき所も調べとかないとな。」


「・・・・ふふっ。キミのそういう冷静に考えて行動する所はボクは好きだよ?」


調子が戻ってきたクロを見てケットはニヤッと笑みをこぼす。


「・・・・茶化すなよ。とりあえず、1週間だ。」


「・・・・??どういう事?クロ?」


その期限がよくわからないティナ。


「1週間でアイツらの行動を把握する。そして、あの商人を殺して彼女を助ける。」


ケットは少し顔を顰める。


「1週間の情報収集には賛成だけど、商人を殺す理由はなんだい?わざわざ騒ぎを大きくするリスキーな行動をとる理由が分からない。」


「簡単だ。彼女だけを助けてしまえば獣人が助けたかもしれないって言う懸念が残る。だが、商人を殺してしまえば、誰かに恨みを買われて殺されたかもっていう道筋ができる。」


「なるほど、殺された商人からその騒ぎに乗じて奴隷が1人いなくなっても仕方がない・・・・か。相変わらず、そういう所は頭良いんだから。」


「お褒めに預かり光栄です・・・・。」


クロは皮肉を込めてお礼を言う。


「情報収集してる時にあの商人に恨みを持つ人族が居たらそいつにも一役買ってもらうさ。」


















情報収集を始めて、3日が経った頃。
クロは冒険者組合に来ていた。
昼間というのに賑わっている組合が提携する酒場。
この街は貿易の街として栄えているため、商人が行き来することが多い。そのため、護衛としての依頼が多いので冒険者の数が異様に多い。
そのせいか、冒険者の中には情報屋と呼ばれる組合非公認の輩が居る。
クロは指定された席に座り、ミルクを一杯あおっている所に後ろの席に男が座るのを気配から感じ取る。


「・・・・依頼の情報が見つかったぜ坊主。」


「そうか。どうだった?」


言われた通り、クロは振り向くことはせずに男の話を聞く。
かなり小声で話しているため、周りの雑音で周囲の人は聞き取ることができないだろう。
聞き取れるであろう場所はクロが座る席のみ。


「・・・・ま、坊主の懸念の通りだな。あそこの商会はきな臭え。」


クロは事前に『あそこの商会の護衛任務に就くことになったが、信用できない。依頼を蔑ろにされないために弱みを握りたい。更に恨みを持っているような人物がいたら知りたい。その人物から更なる弱みを聞き出したいから。』と依頼したのだ。
 

「どうやら、脱税は日常茶飯事らしいな。しかも女を誑かすのが上手いようでな・・・・、毒牙にかけられた人妻は数知れず・・・・。その中に妻を奪われ、脱税の罪を擦りつけられた元従業員の男がいた。これがその男の住所だ。」


そう言って男は下から一枚のメモ書きをクロに渡す。
クロはそれと引き換えに金貨が10枚ほど入った小さな麻袋を手渡す。


「・・・・おいおい。少し多い気がするが良いのか?」


嬉しそうにニヤッと笑う情報屋の男。


「あぁ。口止め料も入ってる。受け取れ。」


情報屋というのは面倒な人種であり、情報を買ったということ自体が売り物になる場合がある。
その為、金を握らせることによってその情報の値段を引き上げてリークされにくくするのだ。


「へへへっ。わかってるじゃねぇか坊主。」


「まぁな。その代わりの仕事はしてもらったしな。」


男は麻袋を開けて、金貨を数える。


「しっかし、こんな情報のためにこんな金をねぇ・・・・。赤字だろ?」


「冒険者は信頼されてナンボだ。依頼を失敗したなんか知れたら俺の箔が落ちちまう。先行投資ってやつだよ。」


クロはペラペラと嘘をつらつらと並べる。
情報屋の男はすっかり騙されるが、それより貰った金貨をら眺めながらニヤニヤと笑みをこぼす。


「・・・・本当にしっかりしてるぜ。じゃあ、依頼が成功することを祈ってるぜ。」


そう言って情報屋の男はその場を離れていった。
















クロが情報屋と会合している時、ティナとケットは商会について色々と調べていた。


「へぇ〜、つまりお兄さんはそのウィリアム商会の店員さんなんだ!」


「あぁ!この街じゃかなりデカイ卸売の商会さ。少し、会長のフランクさんの性格はちょいと面倒だが給料に文句はねぇから満足さ!」


「すっご〜い!!あ、お兄さんグラス空いてるよ!注いであげる。」


「おお。すまない!気がきくねぇティーナちゃんは!俺の嫁もこれくらい気が利けばなぁ!あっははは!」


「そんなこと言ったら奥さんに失礼だよ〜。私にはこれくらいしかできないので!」


ティナは無垢な笑顔で今回のターゲットである商会の従者である男に酌をする。
隣では若干の苦笑いに驚愕を混ぜた表情をしたのケットがティナの様子を見ている。


「(・・・・意外な才能かな?ティナにこんな能力があるとはねぇ。)」


ティナたちは情報収集の際にあの商会、ウィリアム商会の従者であろうこの男に目をつけ、1人で酒をあおっている所にワザと水を零し、謝罪とお詫びに話し相手のお酌をしたのだ。
咄嗟の行動にケットは硬直してしまったがティナの話術であっという間に男は骨抜きにされ、聞いてもない仕事の愚痴などを話している。


「(・・・・お母さんの言う通り、笑顔でお酒注いだらなんでも話してくれるや。)」


とティナは思った。
ティナの母であるテトは『男はね!お酒注いで飲んで飲んでって言ってれば何でも話してくれるのよ!その時におねだりしたら・・・・お父さんだって、クロ君だってイチコロよ?』とティナに教えていた。
ティナの美貌あっての技だが、テトはそれを知ってて教えていた。
クロがこの話を聞いたら「いや、子供に何教えてんだよ。」と突っ込む所だが生憎ここにはクロはいない。


「お兄さ〜ん!私ね、あのおっきいお店がどうなってるか知りたいなぁ〜?」


甘ーい声で巧みに男を操っていくティナ。
まるでキャバ嬢が金持ちの男に甘い声で「シャンパン飲みたいなぁ〜?」と言って開けさせるような情景が浮かんで来る。


「ティーナちゃんは知りたがりだなぁ〜!よーし、おじちゃん、たくさん教えちゃうぞ〜!」


「わーい!!お兄さんだーいすき!」


と言いながらティナは更にグラスに酒を注ぐ。
ケットはこの時思った。
ティナは敵に回してはならない。今後も絶対に仲良くしよう、と。


















そして、シエル救出を決意してから1週間。
彼らが決めた作戦の決行日。


「・・・・どうしたんだよ、ケット?そんなにゲンナリして。」


「・・・・いや、何でもないよ。」


ケットはティナの行動が大胆すぎて、いつあの男にティナの貞操が奪われないかヒヤヒヤしていた。
しかしティナは言葉巧みに彼の攻撃を回避し、彼が重度のロリコンになるのを阻止していた。
救われたのはティナなのか、彼なのかケットはよく分からなかったが、よく分かったのはティナを敵には回してはならないということだった。
とにかく、ケット精神的に疲れたのだ。


「でもまぁ、ティナとケットはよくやった。・・・・どうやって店の見取り図を手に入れたんだよ?」


ティナは言葉巧みに男を騙し、見取り図を手に入れた。


「いや、聞かないほうがいいと思うよ。ボクは疲れたよ。」


「えへへ〜!凄いでしょ!」


クロは微笑み、「よくやった」と褒めながらティナの頭を撫でる。


「じゃあ、作戦通りにティナはここで待機。俺とケットは彼女の救出を決行する。」


ティナはどうしても戦力でのメンバーとしてはカウントできない。
ティナもそれは理解できているようで小さく頷く。


「クロ・・・・お願い。あの子を助けてあげて。」


「当たり前だ。俺は猫族を決して見捨てない。」


彼のモットーは前世の頃から一切変わっていない。
猫のために生き、猫のために動き、猫のために死ぬ。
だが、今世は死ねない。泣いてしまう子が居るからだ。
決意を改めて、クロはティナに言う。


「いってきます。」


「いってらっしゃい。気をつけてね。」


そう言い残して、クロとケットは窓から飛び降りて夜の街へ消えていった。
残されたティナは願う。


神様。どうか、どうかお願いします。
クロを、ケットを、あの子を助けてください、と。



















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