ニートの魔法
10話 下山
山で修行を始めてから1週間。
俺の力はどんどん強くなっているように感じた。
「幕くん、相当強くなってるね!オーラが全然違うもん!」
適正属性がなんたるかを知って、ショックルを中心に鍛え始めた。
努力すればするほど魔法に磨きがかかってゆく。
「今日、この山を出るんだな。」
「うん!1週間お疲れ様!」
俺は身支度をした。家の奴らには旅行と言ったがさすがにこれ以上滞在すると怪しまれそうだ。俺には資金力も学力もないからな。
すぅぅ…大きく息を吸った。ありがとう、山!
俺は靴紐を結び直し、山を下り始めた。
「ただいま〜」
「お帰り、あに」
俺の事を“あに”と呼ぶこの美少年は俺の弟。赤川鳶(あかがわとんび)。
現在中学生2年生で神童と呼ばれてる。
成績優秀、運動神経優秀、ルックス優秀、コミュ力優秀の俺の弟とは思えない神童だった。
でもなぜか俺には懐いてる。
俺はいつものようにとんびの横を抜け、2階に上がろうとしたその時。
「なに?その動物。」
ん?動物なんて連れてきてたか?
その時、最悪のケースが脳裏をよぎる。
「そいつなにー?」
指差した先にはセジアントがいた。セジアントも怯え身構えている。
「とんび…お前、そいつが見えるのか?」
「うん。ネズミみたいでかわいい」
セジアントが小声で俺に話しかける。
「とんび殿はめちゃめちゃ暇なの?」
「ああ…あまりにも優秀すぎてできない事がないから暇なのかもしれない。」
俺は考えた。そして一か八か質問してみた。
「とんび、魔法ってあると思うか?」
「魔法…?うーん、どうだろう。地球の生態系と輪廻の流れがどーちゃらで…あれ?ネズミのおばけ、消えちゃった!」
俺はついついガッツポーズをした。こいつになにか難しい問題を叩きつければそれを考えてしまう。すなわち暇じゃなくなるんだ!俺はホッとしながら、ゆっくりと自分の部屋に上がった。
「何をしたの?」
セジアントは部屋について早々に質問してきた。
俺はとんびについて、そして俺がした質問の意味についてを語ったら
「あたまいいー!」だとか「すごーい!」だとか褒めてくる。
さすがにお前が他の人に見られたら俺も必死になるさ。
俺はいまさっきのことを振り返りながら思った。
俺はもう普通の人間ではないんだな、と。
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