ニートの魔法

山本の熊

5話 恐怖


俺は続けざまに現実ではありえないことが起きすぎてるせいで、感覚がマヒしてきてるのかもしれない。

セジアントが言うには、エムラスは敵。だがその敵を倒す方法も知らないし、見たこともないから考えようもない。

「まずいな…ぼくは君に戦わせようとしたんだけど、ここは公共の場だ。」

うーん、公共の場でなくとも俺は嫌なんだが…

「少し危ないけど、ぼくが戦うよ!」

「危ないって?もし負けたらどうなるんだ?」

「ぼくとともに魔法書も消えて無くなるよ。」

どうやらあの分厚い本は魔法書らしい。とことん説明不足なネズミだ。

ここはセジアントに任せることにした。




階段を急いで駆け上っている。運動不足には辛い。

「移動してる間に説明するけど、エムラスというのは簡単に言うと現実世界を侵食する事故という名のウイルスなんだ!」

「ハァッ…!ハァッ…!ちっとも…!簡単じゃねえ…!」

息を切らしながらセジアントにツッコむ。

「うーん、例えば君が花瓶に肘を当てて倒してしまうとする。それはエムラスのせいだ!エムラスはいわば事故の原因なんだ!」

少しはわかりやすい説明だ。なるほど、とは言いにくいが

「フゥ…!ハァ…!ってことは、事故が起きるその時エムラスを倒すんだなっ…?」

「そうだよ!幕くん!勘がいいね!」

生きてきた中でこんなにも勘が良かったことを憎む人間なんて見たことない。

「ゼェ…ゼェ…で、エムラスの反応はどこから来てるんだ?」

「ぼくの計算によるとあとちょっとで対面になりそうだ!身構えといてね!」

俺は気合を入れ直し、左右と上からなにかが落ちてこないかを気にしながら走った。

ーーーその時!

「…くるよ!」

俺はその声に動揺したのか足を階段につまづいた、その瞬間

「キャップチャッ!」

バシューッ!

大きな音とともに俺は無事つまづき転ぶこともなく手を地面につけている。

「今のが事故さ。エムラスをキャプチャしたから君は転ばなかっただろう?」

ははぁ、なるほど。と強がって言ったつもりだったが声が出ていなかった。

俺は帰るまで口を開けなかった。

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