天才少年は、除外されて異世界転移したので雑貨屋やります

AMS

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サンタことカーネルと別れてからのこと。
   無事、転移されたのか、草原あろうダンジョンで、僕は、うつ伏せになっていたようだ。
   どうやらここが、僕の新たな移住地。中世ヨーロッパ風RPGの世界=異世界なのだろう。

「あの...大丈夫ですか?」

   ちなみに、うつ伏せになっていた僕は、ただ、かっこ悪い姿で転移して来た訳じゃない。
   腹痛だ。それと、バス酔いしたかのように胃が重いし頭も痛い。

「大丈夫だ.....」

   やれやれ...。
   そんな不健康な僕を、たまたま偶然見かけて助けてくれたのは、黒髪ストレートの16くらいの少女だ。ついでに、メインヒロインになれるだろう美貌も持っていて、何かと、普通のテンポで会話ができない。

「あの、動いたらダメですよ....まだ調子が悪いのだから」

   動くなと言われても、腹痛の時、ジッとしているのって、もっと辛いんだぞ?

   そうだ.....。
   酔い止め薬と、腹痛の痛みを軽減する薬でも作ってみるか。

「おい。なんかいらない物とか無いか?2つくらい」

   と、僕は少女にいらない物を渡せと要求してみた。

「あ! 2枚ならちょうど、捨てるのがあります!持ってきますので待ってて下さいね!」

   僕の力は、どんな素材でも思う物に変える特殊能力があるのだから、それで薬に出来ないかと思ったのだ。

「これでいいですか?...」
「ああ.......」

   この世界のハンカチは三角の形をしてるのか......。

「あの...それで何をするつもりですか?」

「ああ、形を変えて飲むってところだろう」

   言ってることは、間違ってないはずなのだが、

「....え!?」

   何か不味い事を言ったかもしれないな?
   その一言で少女の機嫌が変わったのは、間違い無い。

「やっぱり返して下さい!貴方には、やっぱり渡せません!」

   と、貰った物を引っ張ってくる。
   そもそもハンカチくらいで顔を赤くしたりして大げさすぎないか?

「まあ、落ち着け...これを...」
   
   引っ張りあってるハンカチに、僕が頭で思ってるイメージを送ったら薬2包に直ぐに変わった。

「え?今どうやって?」
「とりあえず、水をくれないか?」
「なんで水なんですか?」
「いや、飲むからだよ」

   僕は、水と一緒に飲まないと飲めないタイプの錠剤をイメージしてしまったからな。どうしても水が必要だ。

「・・・・・・・・」

   少女は、水を持ってきてくれるわけで無く、その場で固まって、どちらかと僕を変態って顔で睨んでいた。

「水を下さい...」

   と、僕は、丁寧に言って、もう一度お願いしてみるが、

「嫌です.....水は、あげられません!」

   ダメだった。
   ひょっとすると、この世界での水は、高価な物なのかもしれないな。

「分かった。なら、水も自分で.....」

   と、僕は着ている服のポケットを漁る。そして、消しゴムとケータイ、カードが右ポケットにあった。

   やれやれ.....
   まあ、消しゴムは要らないか。
   僕は、消しゴムだけを取り出し、カバーを外して、分離させた。
   カバーをグラスに、ゴムを水に。

「え!?どうやって?」

   まるで手品に見えるだろうからそう言われるのもおかしくも無いか.......。

「これは、僕の力だ。素材であれば思った物に変えれる」

   と言っても伝わらないだろうから、ついでに職業が錬金術師とも言ってみた。

「あ、そういう事なんですね!」

   どうやら理解してくれたようだ。

「けど、それを...飲むのは...」

   ゴク...
   薬の味は、苦味があって現実の再現は完璧っと。

「って!?飲んじゃダメだってば!」

「ん?」

   なんだ?この世界では錠剤が毒薬に見えるのか?

「ああ...私のパンツ.....洗ってるけど、飲まれるなんて........」

「・・・・・・・・・」

  さっきからハンカチでやたらと変態の視線を感じたが、なるほど、この少女のパンツを薬にして、僕は、普通に飲んでしまったのか。なら、今、どんな風に見られてるかは、説明するまでも無い。

「いや、すまなかった」

   と、申し訳なく頭を下げてみるが、聞いちゃいなかった。

「いやん...もうお嫁に行けません...」

   少女は、それをずっと連呼しながらしゃがんで落ち込んでいる。

   参ったな。僕の恩人でもあるから、悪いことは、したくなかったのだけど。

「分かった。分かったから、それで失った物を僕が責任取ってやるから
?」

   と、思いつきを僕は口にした。それの意味を理解する前に。

「え?それって.....つまりお嫁にしてくれるって事でしょうか?」

   って言われるのもおかしく無いか.....。

「うん?」

   そんな事より、さっきサンタから貰ったカードがポケットの中で揺れているな?

   気になって取り出してみたら。カードに亀裂が入って砕け散ってしまったんだ。

「?」

   何だったんだ?特に何も........。
   と、周りも確認してるのが、特に変化は、無かった。
   変わったとするならば、少女の顔色が違うような?

「けど、君ならいいよ」

   と、ラブコメで良くありそうなセリフをこの少女が僕にときめきながら言ってくるんだ。

「いや...どうしたんだ?オマエ?」

   まさかと思うが、あのカードを発動させてしまったからだろうか?。
   ハート柄的にこっち系の効果があるとは、察していたが、発動した条件がまず、分からないし、効果も何か不明だ。

「私は、本気だよ?」
「............................」

   やはりカードの仕業なんだろう....。
   恐らく効果は、告白を100パー成立するとか、告白した相手が婚約相手になるとかそんなんだろう。

「ダメかな?私、君がいないと.......」
「・・・・・・・・・・・」

   もしも断ったら恩人の人生に影響があるかもしれないな。
   やれやれ.....。
   けど、僕がこの地で生きるには、住む場所と、この世界の身分を持つ者と一緒に居た方が何かと良いかもな........。
   それに、この地で最初にあった人で、命の恩人で、パンツを薬にして食してしまったのだ。
   これで、ふったら主人公として申し訳ないからな。

「分かったよ。旦那になってやる」
「本当?...ぐすん...えへへ♪今、凄く幸せ♡」

   やれやれ.....。
   メインヒロインが序盤から恋人になってる物語になってしまったな。
   これがラブコメの世界だったらこれでハッピーエンドなんだろうけども......。
   だけど、勘違いするな。僕の物語は、これからなんだ。



   僕は、メインヒロインのヒナミと雑貨屋を始めて、この世界を現代にする野望なんかもある。
   そして、個性あるキャラクターと共に日常を送るギャグファンタジーなんかでもあって、また冷静沈着な僕らしい物語が始まろうとしていた。

   プロローグおわり

*アイテム説明【♡カードの能力】

[このカードを所持すると、運命の相手に遭遇する事ができる。また、恋人関係になれると確定した場合。このカードは消滅する]
注意:このカードを所持しても好感度パラメーターは、一切上がったりしません。PS.恋は自力で頑張りましょう。

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