死にたがりの俺が、元いた世界を復活させようと頑張ってみた結果。
最強と学園長と……あと変態?
「龍族の長……『龍神』ムスペル――彼奴が直々にここへ向かっているとの情報が入った」
ゲインが、『さてどーしたもんかー』という表情で一言告げる。
それを聞いた時の俺の心境といえば『誰ぞそれ?』だったんだが、他の連中にはそうではなかったらしい。
瞬間――――空気が変わった。
真っ先に反応を示したのは、まだ名前も知らない教師の二人。
「馬鹿な……序列『2位』がこの国へやってくると!?」
「そりゃぁぁ確かにいただけねぇ話だなぁぁぁ」
続いてミハイル、ミルヴァ。
「――――」
「あ、はははは……それはさすがにヤヴァいですねぇ……」
ミハイルは何も言わないが、目付きが明らかに鋭くなっている。
各々言葉は違えど、どうやらそのムスペルとやらを恐れているのは同じみたいだ。あのミルヴァでさえも。
と、まだ一人何も反応していない輩がいた。さきに教師二人の仲裁をしていた女子生徒だ。
ミルヴァの見立てによれば、学園内でもかなりの権限持ちな生徒だろうという話だが。
「…………」
そいつはみんなみたいに恐れおののくといった様子を全く見せず、何故かキラキラした瞳でゲインの話に聞き入っていた。
俺はそれとなく訊ねてみた。
「なあ、あんたは龍神とやらについてどう思う?」
「どうでもいい!」
至極明快な答えが返ってきた。
「今はそんな些事よりも優先すべき事があるじゃないか!」
「……ちなみにそれは?」
「学園長先生のロリ声に聞き入る事に決まっているっ」
「あー……さいですか……」
他にどう言えと?
どうやらこいつは変態の様なので放っておく。
疑問が解消されなかったので、とりあえず挙手してみる。
「どうした?」
「そもそもムスペルって誰さん?」
その場の全員(変態と学園長除き)の狂人でも見るかの如き視線はなかなかに強烈でありました。
いや、そんな眼で見つめられても俺Mじゃねえから。ご褒美にならないよ?
「世界最強」
学園長が、有体に言ってのける。
「史上最強の力を持って生まれたとされる、今現在の龍族の長。それがムスペルだ」
「序列『2位』の龍神ムスペル」
学園長の後に続き、女教師が続けた。
「それまでの生で挙げた功績や実力で付けられる序列で2位につけている彼の名前を知らない? 貴方、本当にこの世界の生まれですか?」
「いや、違うよ?」
素直に答えたら、何故だか蔑みの視線が返ってきた。だから俺Mじゃないってば。
んん、まあでもなんとなくはわかった。
日本で言うところの、錦○圭や羽生○弦を知らないと答えるかの様な。
お前ニュース見てんのか? と言われても仕方ないレベルの有名人なんだろう。
「でもさ、世界最強なのに2位なのか?」
「序列とは、個人の戦闘力だけで決まるものではない。あくまでそれまでの人生で、何を成してきたのかが重要視されて決められる。ちなみに私は4位だぞ?」
えっへんと胸を張られても、見るべき頂がないから逆の意味で目線に困るよ。
そこに、眼鏡を光らせた女教師が切り込んできた。
「彼の功績は、はっきり言って学園長様に比べれば微々たるものです。世界各国の重要人物達とパイプを持ち、世界の安定を保ち続けている学園長様と、あくまで龍族のみを取り纏めているだけの彼とでは、実績の点で差があり過ぎます」
「……」
そして序列とは、その実績を重視して決められるもの。だというのに、そいつが学園長より上に付けている理由とは――
「ただ圧倒的なまでに、強い」
世界レベルの功績の差を覆すほどに。
ゲインが、姿勢を改めて皆を見回した。
「状況は理解できたと思う。ヤツと正面から相対するのだけは、間違っても避けたい。その為にも、状況を整理しておきたいのだ」
それは理解できる。できるのだが、やはり俺がここに呼ばれた理由がまだ分からないんだが。
「ここに集まってもらった君達には、いくつかの共通点がある。まず一つは、学園内でも屈指で荒事に強いこと」
全員に見える様に手を広げ、指を一本折る。
「そして次に、学園きっての問題児であることだ」
「おい」
突っ込みたくもなるわ!
確かにまあ、授業を二回もぶっちぎって、三回目では生徒達を相手に勝負までやらかして、問題児である事は否定できないけども。
それって今ここでなんか関係あんのか?
「あるんだよ、それがな」
お前も十分関係あるんだぞとばかりに、ジト目で睨みつけられた。
「ムスペルはその圧倒的な戦闘力があまりにも有名だが、その反面、歴代龍族の長の中で最も温厚でもある」
「? なんだよ。だったら大事にゃならないじゃないのか?」
「そうであればヤツは住処に引き篭もっているだろうよ。公務で必要な交渉なら他の者に任せて、決して奥からは出てこないヤツだ。もし、ヤツが直々に姿を見せる事があるとすれば、理由はただ一つ――同族を害された時だ」
「――――」
あ、なんかやべぇぞそれ。
もしかして、もしかしてなんだが、俺めっちゃ関係あるかもしんね。
「その上でもう一度言うぞ。私は状況を整理したい。だから問う」
ゲインはそこで、一息入れて、言った。
「この中で龍を害なした者がいれば手を挙げろ。詳しい話を聞きたい」
なんか、俺……大ピンチかもしれないです。
ゲインが、『さてどーしたもんかー』という表情で一言告げる。
それを聞いた時の俺の心境といえば『誰ぞそれ?』だったんだが、他の連中にはそうではなかったらしい。
瞬間――――空気が変わった。
真っ先に反応を示したのは、まだ名前も知らない教師の二人。
「馬鹿な……序列『2位』がこの国へやってくると!?」
「そりゃぁぁ確かにいただけねぇ話だなぁぁぁ」
続いてミハイル、ミルヴァ。
「――――」
「あ、はははは……それはさすがにヤヴァいですねぇ……」
ミハイルは何も言わないが、目付きが明らかに鋭くなっている。
各々言葉は違えど、どうやらそのムスペルとやらを恐れているのは同じみたいだ。あのミルヴァでさえも。
と、まだ一人何も反応していない輩がいた。さきに教師二人の仲裁をしていた女子生徒だ。
ミルヴァの見立てによれば、学園内でもかなりの権限持ちな生徒だろうという話だが。
「…………」
そいつはみんなみたいに恐れおののくといった様子を全く見せず、何故かキラキラした瞳でゲインの話に聞き入っていた。
俺はそれとなく訊ねてみた。
「なあ、あんたは龍神とやらについてどう思う?」
「どうでもいい!」
至極明快な答えが返ってきた。
「今はそんな些事よりも優先すべき事があるじゃないか!」
「……ちなみにそれは?」
「学園長先生のロリ声に聞き入る事に決まっているっ」
「あー……さいですか……」
他にどう言えと?
どうやらこいつは変態の様なので放っておく。
疑問が解消されなかったので、とりあえず挙手してみる。
「どうした?」
「そもそもムスペルって誰さん?」
その場の全員(変態と学園長除き)の狂人でも見るかの如き視線はなかなかに強烈でありました。
いや、そんな眼で見つめられても俺Mじゃねえから。ご褒美にならないよ?
「世界最強」
学園長が、有体に言ってのける。
「史上最強の力を持って生まれたとされる、今現在の龍族の長。それがムスペルだ」
「序列『2位』の龍神ムスペル」
学園長の後に続き、女教師が続けた。
「それまでの生で挙げた功績や実力で付けられる序列で2位につけている彼の名前を知らない? 貴方、本当にこの世界の生まれですか?」
「いや、違うよ?」
素直に答えたら、何故だか蔑みの視線が返ってきた。だから俺Mじゃないってば。
んん、まあでもなんとなくはわかった。
日本で言うところの、錦○圭や羽生○弦を知らないと答えるかの様な。
お前ニュース見てんのか? と言われても仕方ないレベルの有名人なんだろう。
「でもさ、世界最強なのに2位なのか?」
「序列とは、個人の戦闘力だけで決まるものではない。あくまでそれまでの人生で、何を成してきたのかが重要視されて決められる。ちなみに私は4位だぞ?」
えっへんと胸を張られても、見るべき頂がないから逆の意味で目線に困るよ。
そこに、眼鏡を光らせた女教師が切り込んできた。
「彼の功績は、はっきり言って学園長様に比べれば微々たるものです。世界各国の重要人物達とパイプを持ち、世界の安定を保ち続けている学園長様と、あくまで龍族のみを取り纏めているだけの彼とでは、実績の点で差があり過ぎます」
「……」
そして序列とは、その実績を重視して決められるもの。だというのに、そいつが学園長より上に付けている理由とは――
「ただ圧倒的なまでに、強い」
世界レベルの功績の差を覆すほどに。
ゲインが、姿勢を改めて皆を見回した。
「状況は理解できたと思う。ヤツと正面から相対するのだけは、間違っても避けたい。その為にも、状況を整理しておきたいのだ」
それは理解できる。できるのだが、やはり俺がここに呼ばれた理由がまだ分からないんだが。
「ここに集まってもらった君達には、いくつかの共通点がある。まず一つは、学園内でも屈指で荒事に強いこと」
全員に見える様に手を広げ、指を一本折る。
「そして次に、学園きっての問題児であることだ」
「おい」
突っ込みたくもなるわ!
確かにまあ、授業を二回もぶっちぎって、三回目では生徒達を相手に勝負までやらかして、問題児である事は否定できないけども。
それって今ここでなんか関係あんのか?
「あるんだよ、それがな」
お前も十分関係あるんだぞとばかりに、ジト目で睨みつけられた。
「ムスペルはその圧倒的な戦闘力があまりにも有名だが、その反面、歴代龍族の長の中で最も温厚でもある」
「? なんだよ。だったら大事にゃならないじゃないのか?」
「そうであればヤツは住処に引き篭もっているだろうよ。公務で必要な交渉なら他の者に任せて、決して奥からは出てこないヤツだ。もし、ヤツが直々に姿を見せる事があるとすれば、理由はただ一つ――同族を害された時だ」
「――――」
あ、なんかやべぇぞそれ。
もしかして、もしかしてなんだが、俺めっちゃ関係あるかもしんね。
「その上でもう一度言うぞ。私は状況を整理したい。だから問う」
ゲインはそこで、一息入れて、言った。
「この中で龍を害なした者がいれば手を挙げろ。詳しい話を聞きたい」
なんか、俺……大ピンチかもしれないです。
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