死にたがりの俺が、元いた世界を復活させようと頑張ってみた結果。
学食での職割は、五割引です。
そんなこんながあって、俺の記念すべき第一回目の授業が行われたわけなのだが、結果は知っての通り。
補助兼お目付け役として、ベテランの教師であり魔法士でもあるミハイル。
若手だが卒業生にして、将来有望才能豊かなミルヴァ。
その二人が副担任に就く形でスタートした。
――が。
「ったくてめぇら余計な邪魔してんじゃねぇぞっ。こんな一々茶々入れられんじゃ、進められるもんも進めらんねえだろが!」
「あんな無茶苦茶なもん、進められなくなって正解ですよ! なんですか自殺の名所!? 身辺整理!? アホですか貴方は!」
「けっ! そういう事言ってるヤツに限って、いざそういう状況になった時、あれやっときゃよかったこれやっときゃよかっただの迷うんだよ! 王族なんだろ? いついつ何時そういう事があってもおかしくない身分だろうが! 今のうちにそういう事を学ばせといて何が悪い!?」
「一理もないとは言いませんっ。ただしそれは、各々のお家で粛々と進められる話であるべきで、貴方のやっている事は全くの部外者が口を挟んで良い領分を、ランランと鼻歌混じりにダンスを踊りながら踏み躙っているも同然です!」
がるるる……!
両方とも、牙を剥き出しに睨み合っていると、
「はいはい、そこまで……はぁ、私は後何回これを言えば良いのでしょうか?」
「「たぶん一生(です)!!」」
「……そのシンクロ率を、もっとプラスになる方向で生かしてもらえると助かるのですが……」
「「ムリ!!」」
「…………はあ」
そのどうしようもないわぁって感じの溜息やめろ。
「まあ、ひとまずその話題はおいておきましょう。それで、如何でした? 初めての教鞭の感触は?」
「練習で躓かれては、話にならないんですけどねぇー」
「ミルヴァさん……」
「『不適合クラス』の生徒達は、あんなに物分りが良くはありませんよぉ?」
「それは彼も理解していますよ。その様な言い方は――」
当て付ける様に、いや、事実当て付けているのだろうが。ミルヴァの一言一言を、ミハイルはやんわりと嗜める。
――俺に宛がわれるはずの『不適合クラス』。
しかし前回俺が授業を担当したのは、それとは別。この学園の中で、カリキュラム的に偶々自習となっていた、優秀な生徒が集まる特待生クラスだった。
魔法の使えない(という設定)俺の両脇に、ミハイルとミルヴァの二人を付けて、不手際があれば補う形で経験を積ませたかったのだと。ゲインが考えそうな事ではある。
あの女が思慮深いのは直接やりあって良く理解したつもりだが、学園の事となると、特にその傾向が強い。
いかに気に入った相手であっても、学園全体を見て不利益をもたらす様であれば、即刻お役御免となっていたはずだ。
それを踏まえた上での練習授業。
とはいえ、そんな思惑を理解してはいても、俺が付き合う理由にはならないな。
ド素人にプロ並みの理路整然とした授業を要求する方が間違っているし、そもそもそんな杓子定規で計れる様な教師を望んではいないはずだ。
不適合クラスなどと、明らかに学園の中でも異分子となる存在の集まりを導けと。
ゲイン学園長が。
あの責任感の塊が、そう命じているのだから。
「ま、なるようになるんじゃねぇの? それよかこの学食うめぇな!」
「そりゃ、世界中の都市から名産品を仕入れていますから――ってそうではなく!」
三ツ星レストランもかくやというレベルの、何か世界の摂理に間違いでも生じてんじゃないのかと文句をつけたくなる高級学食の教職専用スペース。
そこの一角を陣取り、他者に邪魔されずに一皿ウン千~ウン万にもなる料理を味わっているというのに、テーブルをぶっ叩いて皿を跳ね上げるとは。
この学園では、王族を教えるくせにテーブルマナーを仕込んではいないというのかね?
「いいですかセツナさん?」
「よくない」
「不適合クラスというのは、単に魔法が使えない、という生徒達とは違うのですよ? 以前は分かり易さ優先で、その様な言い方をしましたがね!」
「ふん…………魔法以外の適正についても判断されてるって事だろ」
それに反応したのは、ミハイルだった。
「ほう……それに気が付きましたか」
「自明の理だろうがよ」
前回の授業。
不完全に終わりはしたが、総じて優秀な生徒達ばかりだった事は良く覚えている。魔法はもちろん、勉学、そして人格的にも。
最初は俺とて、魔法学園の名前に騙されて、そういった方向で判断しようとしていた。
しかしよくよく観察した結果。むしろ、上級生達が特に気を張っていたのは人としての格。そんな印象を受けたのが俺の感想だった。
「不適合クラス」
敢えてその名を、自ら口に出す。
「つまりは、魔法でも学力でも人格でも、何がしか一定以上のレベルに到達しない連中を集めたクラスなんだろうが」
魔法士として不適合なのではない。
人間として――否、王族として不適合。そんな生徒達を集めたクラスが、不適合クラスの正体。
「おもしれぇ……」
濃厚な汁を滴らせた肉に、思い切り齧り付く。
旨みが口一杯に広がり、抑え切れずに口端から一筋垂れていく。
だが気にしない。
些事が気にならないほど、楽しみな事が待っている。
「しかと教えてやるぜ」
この世の真理というものをな!
「あ、流石に今度あんな授業やらかしたらクビですので、そのつもりで」
「……」
ミハイルに釘を刺された俺は、講義二回目にして、いきなりクビの危機に陥る羽目になった。
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今回のヘイトポイント加減値
ミルヴァの怒り=+500P
現在のヘイトポイント=100億1万5千52P
補助兼お目付け役として、ベテランの教師であり魔法士でもあるミハイル。
若手だが卒業生にして、将来有望才能豊かなミルヴァ。
その二人が副担任に就く形でスタートした。
――が。
「ったくてめぇら余計な邪魔してんじゃねぇぞっ。こんな一々茶々入れられんじゃ、進められるもんも進めらんねえだろが!」
「あんな無茶苦茶なもん、進められなくなって正解ですよ! なんですか自殺の名所!? 身辺整理!? アホですか貴方は!」
「けっ! そういう事言ってるヤツに限って、いざそういう状況になった時、あれやっときゃよかったこれやっときゃよかっただの迷うんだよ! 王族なんだろ? いついつ何時そういう事があってもおかしくない身分だろうが! 今のうちにそういう事を学ばせといて何が悪い!?」
「一理もないとは言いませんっ。ただしそれは、各々のお家で粛々と進められる話であるべきで、貴方のやっている事は全くの部外者が口を挟んで良い領分を、ランランと鼻歌混じりにダンスを踊りながら踏み躙っているも同然です!」
がるるる……!
両方とも、牙を剥き出しに睨み合っていると、
「はいはい、そこまで……はぁ、私は後何回これを言えば良いのでしょうか?」
「「たぶん一生(です)!!」」
「……そのシンクロ率を、もっとプラスになる方向で生かしてもらえると助かるのですが……」
「「ムリ!!」」
「…………はあ」
そのどうしようもないわぁって感じの溜息やめろ。
「まあ、ひとまずその話題はおいておきましょう。それで、如何でした? 初めての教鞭の感触は?」
「練習で躓かれては、話にならないんですけどねぇー」
「ミルヴァさん……」
「『不適合クラス』の生徒達は、あんなに物分りが良くはありませんよぉ?」
「それは彼も理解していますよ。その様な言い方は――」
当て付ける様に、いや、事実当て付けているのだろうが。ミルヴァの一言一言を、ミハイルはやんわりと嗜める。
――俺に宛がわれるはずの『不適合クラス』。
しかし前回俺が授業を担当したのは、それとは別。この学園の中で、カリキュラム的に偶々自習となっていた、優秀な生徒が集まる特待生クラスだった。
魔法の使えない(という設定)俺の両脇に、ミハイルとミルヴァの二人を付けて、不手際があれば補う形で経験を積ませたかったのだと。ゲインが考えそうな事ではある。
あの女が思慮深いのは直接やりあって良く理解したつもりだが、学園の事となると、特にその傾向が強い。
いかに気に入った相手であっても、学園全体を見て不利益をもたらす様であれば、即刻お役御免となっていたはずだ。
それを踏まえた上での練習授業。
とはいえ、そんな思惑を理解してはいても、俺が付き合う理由にはならないな。
ド素人にプロ並みの理路整然とした授業を要求する方が間違っているし、そもそもそんな杓子定規で計れる様な教師を望んではいないはずだ。
不適合クラスなどと、明らかに学園の中でも異分子となる存在の集まりを導けと。
ゲイン学園長が。
あの責任感の塊が、そう命じているのだから。
「ま、なるようになるんじゃねぇの? それよかこの学食うめぇな!」
「そりゃ、世界中の都市から名産品を仕入れていますから――ってそうではなく!」
三ツ星レストランもかくやというレベルの、何か世界の摂理に間違いでも生じてんじゃないのかと文句をつけたくなる高級学食の教職専用スペース。
そこの一角を陣取り、他者に邪魔されずに一皿ウン千~ウン万にもなる料理を味わっているというのに、テーブルをぶっ叩いて皿を跳ね上げるとは。
この学園では、王族を教えるくせにテーブルマナーを仕込んではいないというのかね?
「いいですかセツナさん?」
「よくない」
「不適合クラスというのは、単に魔法が使えない、という生徒達とは違うのですよ? 以前は分かり易さ優先で、その様な言い方をしましたがね!」
「ふん…………魔法以外の適正についても判断されてるって事だろ」
それに反応したのは、ミハイルだった。
「ほう……それに気が付きましたか」
「自明の理だろうがよ」
前回の授業。
不完全に終わりはしたが、総じて優秀な生徒達ばかりだった事は良く覚えている。魔法はもちろん、勉学、そして人格的にも。
最初は俺とて、魔法学園の名前に騙されて、そういった方向で判断しようとしていた。
しかしよくよく観察した結果。むしろ、上級生達が特に気を張っていたのは人としての格。そんな印象を受けたのが俺の感想だった。
「不適合クラス」
敢えてその名を、自ら口に出す。
「つまりは、魔法でも学力でも人格でも、何がしか一定以上のレベルに到達しない連中を集めたクラスなんだろうが」
魔法士として不適合なのではない。
人間として――否、王族として不適合。そんな生徒達を集めたクラスが、不適合クラスの正体。
「おもしれぇ……」
濃厚な汁を滴らせた肉に、思い切り齧り付く。
旨みが口一杯に広がり、抑え切れずに口端から一筋垂れていく。
だが気にしない。
些事が気にならないほど、楽しみな事が待っている。
「しかと教えてやるぜ」
この世の真理というものをな!
「あ、流石に今度あんな授業やらかしたらクビですので、そのつもりで」
「……」
ミハイルに釘を刺された俺は、講義二回目にして、いきなりクビの危機に陥る羽目になった。
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今回のヘイトポイント加減値
ミルヴァの怒り=+500P
現在のヘイトポイント=100億1万5千52P
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