死にたがりの俺が、元いた世界を復活させようと頑張ってみた結果。
とんでる人が三人集まるとカオスです。
外見から判断して、俺と同い年かやや下くらい。
捕虜とは思えないほど艶を持った栗色のセミロング。捕まってからも手入れできたとは思えないから、それ以前に十分過ぎるだけの事をやっていたのだろう。それだけ育ちが良いという証拠で、なるほど海賊に攫われるだけの理由は持っていそうだ。
こちらを見る瞳には確かな光が宿っており、上質そうな服装も大して乱れているわけではないから、一線を越えるほどの仕打ちは受けていないらしい。
……むしろ、いきなり体当たりをかましにくるほど元気が有り余っているくらいだ。少しくらいは削っておいてほしかったと、自分の手でこの世から消してしまった海賊達を逆恨みしてみる。
さらにはこの――
「お姫じゃない。お姫じゃない。ただのむらむすぅめさぁ~♪」
攫われた時にでも頭を打ったんじゃないかと疑いたくなる言動。まともなコミュニケーションが可能なのかも怪しい。
つーかその歌、語呂が合ってねえぞ。
「んー……」
考えていても仕方ないので、とりあえず口撃してみた。
「おいデンパ娘」
「ででで、デンパじゃありません! 村娘です !」
「どっちも似たようなもんだし、細かいこと気にすんなよ」
「全ッ然違いますよ!? あなた村娘にどんな偏見持ってんですか!?」
ちょっとからかってやっただけなのに噛み付いてきやがる。とっ捕まってたくせに、元気なヤツだな。
ひとまず会話はできるみたいで、少しだけ安心した。
しかしその安堵も、次のヤツの台詞で少し怪しくなる。
「ふっふっふっ私を連れ去って身代金でも要求するつもりなのでしょうが、あいにくそんな上手くはいきませんよ! 何せ私、姫ではなくただの村娘なのですからね!」
「……あん?」
もしかしてこいつ、俺を海賊の一味とでも勘違いしてやがんのか? あれだけドンパチかましたってのに。
いくらこんな場所に押し込められていたとはいえ、まるで気づかないとは考えにくいんだが……
あるいはとっくに気づいていて、俺から何かしらの情報でも引き出そうとしているのか。だとすればこの奇天烈な態度も、何かを目的とした演技なのかもしれない。
少しだけ警戒し、探りを入れるつもりで少女の目をじっとみつめる。
すると少女はたちまち全身を真っ赤に染め、頬に手を当てて顔を背けた。
「わ、私の美貌に見惚れたからといって、そんなに見つめられては恥ずかしいです……」
「……」
「あっ!? そそ、それとももしかして、この私の姫々しい色香に惑わされて劣情を!? だっ駄目ですよっだってわたし村娘ですから! あれ? でもあなた良く見るとなかなかイケメンですね…………ちょ、ちょっとくらいなら許してあげても――」
……身構えていた俺がアホみたいだ。
こいつが猿轡で他の部屋に比べて防音の効いた船長室に封印されていた理由を、嫌というほど思い知った。
一度口を開いたら止まんねえ。有体に言うとウゼェ!
「それでそれで! 結婚式には家族親類臣下に国民も招いて盛大に――――あれ? そんな分厚いロープ用意して何やってるんですか?」
「再封印の準備に決まってるだろ」
大人しく封印されてくれるはずもなく、案の定押し合いになった。
「ぐぐぐ……! こ、この私の姫パワーを甘く見てはいけませんよ……っ! あ違う。村娘パワーでした……!」
「どうだってええわ! ってかお前もしかすると海賊共より腕力あんじゃねえのか!?」
あいつら良くこの女の封印に成功したな。唯一可能性があるとすればリーダーくらいのもんだが。
力比べで拮抗しているので、ヘイトの『強化』でも試してみようかとも考えたが、さすがに馬鹿らし過ぎて止めた。
「おやあ? ちょっっっと力が弱まってきたんじゃありませんかぁ? ぷぷぷ! この私の姫威こ――でなく村娘威光の前に、陥落寸前ですかぁ?」
「お前マジうぜえええええぇぇぇッッ!!」
こんなムカつくヤツに出会う、これもヘイトの影響なのか? つまり元凶=アルティ。
…………
「アルティぶっコロ!!」
『なぜそこでわらわの名前が出るんじゃよ!?』
反応があった。あれ? そういや俺、スマホの通話切ってないっけ? って事は今までの血みどろ劇場からずっと筒抜け?
口には出さなかったが、読心はスマホ越しでも可能なのか、アルティが気まずそうにぼそぼそと続けてきた。
『う……む、決して聞いていて気持ちのいいものではなかったがな。これでも神じゃ、覚悟はしておったさ。……ちょっとお昼ご飯を戻したくらいで」
「まじかよ、あいつらの死体処理なんか後回しにして、もっと耳を傾けときゃ良かった。せっかく弱みを握るチャンスだったってのに」
『お主ぃぃぃぃ!? 不謹慎にもほどがあるぞおおおおおお!?』
「あれ? どこからか知らない声が聞こえる……はっ! まさか私のひ――村娘パワーがそこまでの領域に達してしまったと言うの!?」
「どんな領域だよ!?」
「姫ランクの最上級……そう! 『神姫』の領域ですっ」
「合ってるんだか間違ってるんだが、ツッコミ辛いとこを突いてくるんじゃねえええ!!」
『しかもそやつ、村娘パワーと言っていたくせに、姫ランクとか叫んでおるぞ!?』
変人と理不尽と神様の叫びが交錯している。
いやもう、まったく。
何なのかな。この状況。
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今回のヘイトポイント加減値
『創造』分厚いロープ=-15p
少女の嘲笑=+20p
現在のヘイトポイント=100億4千922p
捕虜とは思えないほど艶を持った栗色のセミロング。捕まってからも手入れできたとは思えないから、それ以前に十分過ぎるだけの事をやっていたのだろう。それだけ育ちが良いという証拠で、なるほど海賊に攫われるだけの理由は持っていそうだ。
こちらを見る瞳には確かな光が宿っており、上質そうな服装も大して乱れているわけではないから、一線を越えるほどの仕打ちは受けていないらしい。
……むしろ、いきなり体当たりをかましにくるほど元気が有り余っているくらいだ。少しくらいは削っておいてほしかったと、自分の手でこの世から消してしまった海賊達を逆恨みしてみる。
さらにはこの――
「お姫じゃない。お姫じゃない。ただのむらむすぅめさぁ~♪」
攫われた時にでも頭を打ったんじゃないかと疑いたくなる言動。まともなコミュニケーションが可能なのかも怪しい。
つーかその歌、語呂が合ってねえぞ。
「んー……」
考えていても仕方ないので、とりあえず口撃してみた。
「おいデンパ娘」
「ででで、デンパじゃありません! 村娘です !」
「どっちも似たようなもんだし、細かいこと気にすんなよ」
「全ッ然違いますよ!? あなた村娘にどんな偏見持ってんですか!?」
ちょっとからかってやっただけなのに噛み付いてきやがる。とっ捕まってたくせに、元気なヤツだな。
ひとまず会話はできるみたいで、少しだけ安心した。
しかしその安堵も、次のヤツの台詞で少し怪しくなる。
「ふっふっふっ私を連れ去って身代金でも要求するつもりなのでしょうが、あいにくそんな上手くはいきませんよ! 何せ私、姫ではなくただの村娘なのですからね!」
「……あん?」
もしかしてこいつ、俺を海賊の一味とでも勘違いしてやがんのか? あれだけドンパチかましたってのに。
いくらこんな場所に押し込められていたとはいえ、まるで気づかないとは考えにくいんだが……
あるいはとっくに気づいていて、俺から何かしらの情報でも引き出そうとしているのか。だとすればこの奇天烈な態度も、何かを目的とした演技なのかもしれない。
少しだけ警戒し、探りを入れるつもりで少女の目をじっとみつめる。
すると少女はたちまち全身を真っ赤に染め、頬に手を当てて顔を背けた。
「わ、私の美貌に見惚れたからといって、そんなに見つめられては恥ずかしいです……」
「……」
「あっ!? そそ、それとももしかして、この私の姫々しい色香に惑わされて劣情を!? だっ駄目ですよっだってわたし村娘ですから! あれ? でもあなた良く見るとなかなかイケメンですね…………ちょ、ちょっとくらいなら許してあげても――」
……身構えていた俺がアホみたいだ。
こいつが猿轡で他の部屋に比べて防音の効いた船長室に封印されていた理由を、嫌というほど思い知った。
一度口を開いたら止まんねえ。有体に言うとウゼェ!
「それでそれで! 結婚式には家族親類臣下に国民も招いて盛大に――――あれ? そんな分厚いロープ用意して何やってるんですか?」
「再封印の準備に決まってるだろ」
大人しく封印されてくれるはずもなく、案の定押し合いになった。
「ぐぐぐ……! こ、この私の姫パワーを甘く見てはいけませんよ……っ! あ違う。村娘パワーでした……!」
「どうだってええわ! ってかお前もしかすると海賊共より腕力あんじゃねえのか!?」
あいつら良くこの女の封印に成功したな。唯一可能性があるとすればリーダーくらいのもんだが。
力比べで拮抗しているので、ヘイトの『強化』でも試してみようかとも考えたが、さすがに馬鹿らし過ぎて止めた。
「おやあ? ちょっっっと力が弱まってきたんじゃありませんかぁ? ぷぷぷ! この私の姫威こ――でなく村娘威光の前に、陥落寸前ですかぁ?」
「お前マジうぜえええええぇぇぇッッ!!」
こんなムカつくヤツに出会う、これもヘイトの影響なのか? つまり元凶=アルティ。
…………
「アルティぶっコロ!!」
『なぜそこでわらわの名前が出るんじゃよ!?』
反応があった。あれ? そういや俺、スマホの通話切ってないっけ? って事は今までの血みどろ劇場からずっと筒抜け?
口には出さなかったが、読心はスマホ越しでも可能なのか、アルティが気まずそうにぼそぼそと続けてきた。
『う……む、決して聞いていて気持ちのいいものではなかったがな。これでも神じゃ、覚悟はしておったさ。……ちょっとお昼ご飯を戻したくらいで」
「まじかよ、あいつらの死体処理なんか後回しにして、もっと耳を傾けときゃ良かった。せっかく弱みを握るチャンスだったってのに」
『お主ぃぃぃぃ!? 不謹慎にもほどがあるぞおおおおおお!?』
「あれ? どこからか知らない声が聞こえる……はっ! まさか私のひ――村娘パワーがそこまでの領域に達してしまったと言うの!?」
「どんな領域だよ!?」
「姫ランクの最上級……そう! 『神姫』の領域ですっ」
「合ってるんだか間違ってるんだが、ツッコミ辛いとこを突いてくるんじゃねえええ!!」
『しかもそやつ、村娘パワーと言っていたくせに、姫ランクとか叫んでおるぞ!?』
変人と理不尽と神様の叫びが交錯している。
いやもう、まったく。
何なのかな。この状況。
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今回のヘイトポイント加減値
『創造』分厚いロープ=-15p
少女の嘲笑=+20p
現在のヘイトポイント=100億4千922p
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