死にたがりの俺が、元いた世界を復活させようと頑張ってみた結果。
引き受けてしまいました。
「えーっとつまり、俺には二つの異能が授けられていると?」
「うむ……一つはさきも言った通り『不死の祝福』。そしてもう一つが『ヘイト』じゃ」
『不死』は文字通り、死なない異能だ。致命傷となるダメージを完全に遮断し、病気や毒などの肉体的な異常も無効化する。
どうみても致命には至らないかすり傷などは流石に防がないらしいが、それでも十分に強力な能力だろう。
次いで、もう一つの能力。
ネトゲ経験者であるなら聞き覚えがあるだろう単語『ヘイト』は憎しみの力である。
敵意・悪意・害意・殺意などなど。マイナスの感情を向けられると『ヘイトポイント』が少しずつ溜まっていくらしい。直接攻撃されるといっそう大きく溜まり、溜まったポイントを使用する事で強力な力を得る事ができるとか。
力の使い方はほぼ限りがなく、直接肉体を超人的に強化する事もできるし、強力な道具を生み出したり、あるいは魔法の様に撃ち出したりする事も可能だという。
副作用としては、この能力の持ち主は総じて世界レベルの不幸に陥るのだそうな。。
どうやら俺が今までロクな人生を送ってこれなかったのも、こいつが原因らしいな。ようやく得心。
アルティは俺に生まれ付き不死とヘイトの二つの能力を与え、絶対に俺が死なない様にしつつも、不幸な人生でモリモリとヘイトポイントが溜まっていくのを、お茶飲みながら待っていたというわけだ。
つくづく、人の人生弄んでくれたものである。
そのくせ最終的に失敗しているし。
「なんだってまー、そんな事を?」
「妾は創造神じゃからな。ちょっと世界創世にその力を使ってやってみたい事がの」
「失敗したけどな」
「ぬぐ……っ! そ、そうじゃな、まさか世界を滅ぼしてしまうとは我ながら情けないの」
おろ? 噛み付いてくるかと思えば堪えやがった。早くも慣れてきてしまったか。
「それに、まだ失敗というには違うの。正確には中断じゃな」
「何か違うのかそれ?」
「大違いじゃよ」
アルティは何かを確認するかの様に、俺に向けて手を翳し、やはりな――と何やら一人で納得していた。
「お主のヘイトポイントはまだそっくりそのまま活きておる。すなわち再挑戦が可能なわけじゃ」
「やだよ」
話しの筋が見えたところで即座に言った。
「話を最後まで聞けぇっ! ……まったく、答えを急くでないわ。お主にもメリットのある話じゃからな」
「ふん?」
「もし妾の頼みを聞いてくれたら……『不死』を外してやろう」
「ほほう……」
「いや、それよりお主の願いは死に場所じゃったな。ならばもっと直接的に、望みのままの死に場所を用意してやろう」
自分ならばそれが出来ると、アルティの神としての自負が垣間見えた。
確かに俺としても魅力的な提案である。長年頭を悩ませてくれた難題を、解消してくれるというのだから。
「頼みってのは?」
こちらが聞く体勢を作った事に、アルティは二ヤリと笑みを浮かべた。
なんとなくそれがイラっときたので、ちくりと刺しておく。
「ポーカーフェイス崩壊中のアルティちゃん」
「いいい良いじゃろ少しくらい喜んだって! 妾とて、ここまで人とやり合うなど初めてなんじゃからな!」
「なんだぼっちか……」
「ぼ、ぼ、ぼっちちゃうわ! ちょっと考え過ぎて会話のテンポが合わないだけじゃ!」
「ボッチリアンはみんなそう言う」
「うぐぐぐぐ…………」
「そんな事より頼みってのは?」
ひとしきりからかって満足できたので先を促す。
アルティが悪鬼の如くこちらを睨んでくるのが心地いい。
「ぐぬぬ……ま、まあ良い。お主も予想は出来ているのじゃろ? そのヘイトポイントを抱えたまま、異世界へ飛んでもらいたい。そして、その世界で不足分のヘイトポイントを回収して欲しい」
「何ポイント溜めれば良い? そもそも今何ポイント持ってるんだ?」
「今現在のヘイトポイントは『100億』じゃな」
「それ既にめちゃくちゃ凄くねえか!?」
1ポイントがどんな程度か知らんけど!
「うむ、確かに今のままでも地球くらいのサイズであれば、星の一つや二つは余裕で破壊できるの!」
「むしろそれ以上の力が必要って、一体何に使うつもりなのか……」
核爆弾なんてもんじゃねえぞこれ。
「『ヘイト』はのう、恨み憎しみを原動力にしておるゆえに、癒しの類の力には不向きなんじゃよー」
「要するに、回復系魔法が使えないって事か」
「使い難いのであって、使えないわけではないがな。創造にも影響しておるぞ、武器を創造するのは容易いが、回復薬などは創造し辛い」
「攻撃特化か……嫌いじゃねえけど、ポイント溜めるなら回復系があった方がやり易そうなんだがな」
適当に相手を挑発して、良い感じに攻撃を喰らいまくった所で回復、適当に――以下繰り返しが使えない。
「仲間と申し合わせて自分を殺すつもりで攻撃してもらうとかどうよ?」
「無理じゃよ。悪意の類が込もってなければポイントは溜まらんし、そもそもそんなんで本気で殺しに掛かってくるような輩が仲間になるわけないじゃろ」
たしかに……いやまて、諦めるにはまだ早い!
「もしかしたら相手を殺そうとする事で性的に興奮できるヤンデレを仲間にできるかもしれないじゃないか!」
「食い下がるところかここ!? ってかそんなの仲間にしてホントに嬉しいのかお主!?」
閑話休題。
「ヘイトポイントは地道に稼いでいくしかないのう。その辺はお主のやり方に任せるよ」
「やり方、ねえ」
こんなポイント、どうやってもロクな稼ぎ方が無さそうだがな。
「それと頼みはもう一つ」
「やだよ」
「お主の世界を復活させたい」
こ、こいつやっぱり慣れてきやがった……!
「さすがにあんな終わり方は不本意じゃからな。妾も創造神として責任を感じておる。ゆえにお主に頼みたい。ヘイトポイントを、お主のいた世界を復活させる分も上乗せして稼いで欲しい」
「100億じゃ足んねえのかよ?」
「地球一つならば足りるがな、世界全ての創造には到底足りん」
「具体的に何ポイント?」
「5000億ポイントくらい」
「無理じゃね!?」
俺ケッコー修羅場の多い人生送ってきてんだけど! それでも十七年で100億しか溜まってないんだけど! 残り数十年くらいで5000億? 無理だろ!
「あっ俺不死だから寿命とかないのか!」
「あるぞ? 不死はあくまで外的要因を防ぐものじゃからな。老衰は範囲外じゃ」
「そうなの!?」
俺寿命で死ねたのかよ!? 地味にショックな事実だぞそれ。一時は「寿命が無かったらどうしよう」とか考えて鬱になりかけたのに!
「じゃあ別にそんなお願い聞かなくても、寿命がくるまでここでぼうっとしてれば俺死ねるんじゃねえの?」
「一々面倒な事を考えるヤツじゃなお主は……ここは神々の使う空間じゃぞ? 人間のお主にとっては時間の概念など有って無きが如く。お主の体感で百年が過ぎようと、実際には一秒も経過していない事とて有り得る。寿命が来る前に精神が壊れるのがオチじゃろう。そんな死に方がお主の望みなのか?」
「むぅ……」
死ねるのならばなんだっていい。そう思っていた時期も確かにあった。
しかしこうして選択肢ができた以上、どうせならより良い形で死にたいと思ってしまう欲目が出るのは、俺もやはり人間だという証だろう。
どのみち百年掛かってしまうのなら、能動的に動いた方が場合によっては早まるかもしれないし気分も良い。
俺が考えを落ち着けたのを読んだのか、アルティが静かに言う。
「……仮にお主が寿命を迎えるまでにやり遂げられんでも責めるつもりはない。もとはといえば妾の不手際じゃからの。思い詰めずに、可能な範囲でこなしてくれればそれで良い。きちんとやってくれている事が分かれば、例え達成できずとも報酬は払うつもりじゃよ」
俺にとって都合の良い条件だ。良すぎる気さえする。
それでも疑う気になれなかったのは、アルティの瞳を見てしまったからだ。
アルティはこの上なく真っ直ぐに俺の眼を見ている。深淵まで透かしてしまいそうなほどに、凝視している。
その時になって初めて気付いた。
燃え上がりそうなほどに紅い瞳は、褐色の少女に実に良く似合っていると。
その強い意思を、今までの頼りない雰囲気が嘘の様に、ただ真摯にこちらに向けて。
それは世界を滅ぼしてしまった尻拭いを一個人に押し付ける形になってしまったことへの罪悪感からだろうか。あるいは俺の知り得ない、別の何かだろうか。
「キラノ・セツナよ」
名前を呼ばれただけで、背筋に緊張が走る。それを恥とは思わない。今のこいつの一言一言に、それだけの神威が宿っている。
おかげで、どうやらここが正念場なのだと、この上なく理解できた。
「まずは謝罪申し上げる。お主の人生を、妾の都合で弄んでしまった事について」
両膝をつき、手を揃え、頭を深々と下げてくる。
一糸乱れぬあまりにも完璧な所作に、頭を下げている立場とは思えない、人間を超えた気品を感じた。
「その上で重ねて申し上げる。どうか、妾の身勝手な二つの頼みを、聞き入れてはもらえぬだろうか?」
かつて銃弾の雨の中、戦車をも相手取った事のある俺でさえ、この局面で勝てるイメージが思い浮かばない。
「はあ……」
つくづく、溜め息しか出て来ない。
どうやらこの『ヘイト』とやらが呼び寄せる厄介事は、神様相手でも例外ではないらしい。
「……わかった」
「――――え?」
「やるよ。その二つの頼み、受けてやる」
「うむ……一つはさきも言った通り『不死の祝福』。そしてもう一つが『ヘイト』じゃ」
『不死』は文字通り、死なない異能だ。致命傷となるダメージを完全に遮断し、病気や毒などの肉体的な異常も無効化する。
どうみても致命には至らないかすり傷などは流石に防がないらしいが、それでも十分に強力な能力だろう。
次いで、もう一つの能力。
ネトゲ経験者であるなら聞き覚えがあるだろう単語『ヘイト』は憎しみの力である。
敵意・悪意・害意・殺意などなど。マイナスの感情を向けられると『ヘイトポイント』が少しずつ溜まっていくらしい。直接攻撃されるといっそう大きく溜まり、溜まったポイントを使用する事で強力な力を得る事ができるとか。
力の使い方はほぼ限りがなく、直接肉体を超人的に強化する事もできるし、強力な道具を生み出したり、あるいは魔法の様に撃ち出したりする事も可能だという。
副作用としては、この能力の持ち主は総じて世界レベルの不幸に陥るのだそうな。。
どうやら俺が今までロクな人生を送ってこれなかったのも、こいつが原因らしいな。ようやく得心。
アルティは俺に生まれ付き不死とヘイトの二つの能力を与え、絶対に俺が死なない様にしつつも、不幸な人生でモリモリとヘイトポイントが溜まっていくのを、お茶飲みながら待っていたというわけだ。
つくづく、人の人生弄んでくれたものである。
そのくせ最終的に失敗しているし。
「なんだってまー、そんな事を?」
「妾は創造神じゃからな。ちょっと世界創世にその力を使ってやってみたい事がの」
「失敗したけどな」
「ぬぐ……っ! そ、そうじゃな、まさか世界を滅ぼしてしまうとは我ながら情けないの」
おろ? 噛み付いてくるかと思えば堪えやがった。早くも慣れてきてしまったか。
「それに、まだ失敗というには違うの。正確には中断じゃな」
「何か違うのかそれ?」
「大違いじゃよ」
アルティは何かを確認するかの様に、俺に向けて手を翳し、やはりな――と何やら一人で納得していた。
「お主のヘイトポイントはまだそっくりそのまま活きておる。すなわち再挑戦が可能なわけじゃ」
「やだよ」
話しの筋が見えたところで即座に言った。
「話を最後まで聞けぇっ! ……まったく、答えを急くでないわ。お主にもメリットのある話じゃからな」
「ふん?」
「もし妾の頼みを聞いてくれたら……『不死』を外してやろう」
「ほほう……」
「いや、それよりお主の願いは死に場所じゃったな。ならばもっと直接的に、望みのままの死に場所を用意してやろう」
自分ならばそれが出来ると、アルティの神としての自負が垣間見えた。
確かに俺としても魅力的な提案である。長年頭を悩ませてくれた難題を、解消してくれるというのだから。
「頼みってのは?」
こちらが聞く体勢を作った事に、アルティは二ヤリと笑みを浮かべた。
なんとなくそれがイラっときたので、ちくりと刺しておく。
「ポーカーフェイス崩壊中のアルティちゃん」
「いいい良いじゃろ少しくらい喜んだって! 妾とて、ここまで人とやり合うなど初めてなんじゃからな!」
「なんだぼっちか……」
「ぼ、ぼ、ぼっちちゃうわ! ちょっと考え過ぎて会話のテンポが合わないだけじゃ!」
「ボッチリアンはみんなそう言う」
「うぐぐぐぐ…………」
「そんな事より頼みってのは?」
ひとしきりからかって満足できたので先を促す。
アルティが悪鬼の如くこちらを睨んでくるのが心地いい。
「ぐぬぬ……ま、まあ良い。お主も予想は出来ているのじゃろ? そのヘイトポイントを抱えたまま、異世界へ飛んでもらいたい。そして、その世界で不足分のヘイトポイントを回収して欲しい」
「何ポイント溜めれば良い? そもそも今何ポイント持ってるんだ?」
「今現在のヘイトポイントは『100億』じゃな」
「それ既にめちゃくちゃ凄くねえか!?」
1ポイントがどんな程度か知らんけど!
「うむ、確かに今のままでも地球くらいのサイズであれば、星の一つや二つは余裕で破壊できるの!」
「むしろそれ以上の力が必要って、一体何に使うつもりなのか……」
核爆弾なんてもんじゃねえぞこれ。
「『ヘイト』はのう、恨み憎しみを原動力にしておるゆえに、癒しの類の力には不向きなんじゃよー」
「要するに、回復系魔法が使えないって事か」
「使い難いのであって、使えないわけではないがな。創造にも影響しておるぞ、武器を創造するのは容易いが、回復薬などは創造し辛い」
「攻撃特化か……嫌いじゃねえけど、ポイント溜めるなら回復系があった方がやり易そうなんだがな」
適当に相手を挑発して、良い感じに攻撃を喰らいまくった所で回復、適当に――以下繰り返しが使えない。
「仲間と申し合わせて自分を殺すつもりで攻撃してもらうとかどうよ?」
「無理じゃよ。悪意の類が込もってなければポイントは溜まらんし、そもそもそんなんで本気で殺しに掛かってくるような輩が仲間になるわけないじゃろ」
たしかに……いやまて、諦めるにはまだ早い!
「もしかしたら相手を殺そうとする事で性的に興奮できるヤンデレを仲間にできるかもしれないじゃないか!」
「食い下がるところかここ!? ってかそんなの仲間にしてホントに嬉しいのかお主!?」
閑話休題。
「ヘイトポイントは地道に稼いでいくしかないのう。その辺はお主のやり方に任せるよ」
「やり方、ねえ」
こんなポイント、どうやってもロクな稼ぎ方が無さそうだがな。
「それと頼みはもう一つ」
「やだよ」
「お主の世界を復活させたい」
こ、こいつやっぱり慣れてきやがった……!
「さすがにあんな終わり方は不本意じゃからな。妾も創造神として責任を感じておる。ゆえにお主に頼みたい。ヘイトポイントを、お主のいた世界を復活させる分も上乗せして稼いで欲しい」
「100億じゃ足んねえのかよ?」
「地球一つならば足りるがな、世界全ての創造には到底足りん」
「具体的に何ポイント?」
「5000億ポイントくらい」
「無理じゃね!?」
俺ケッコー修羅場の多い人生送ってきてんだけど! それでも十七年で100億しか溜まってないんだけど! 残り数十年くらいで5000億? 無理だろ!
「あっ俺不死だから寿命とかないのか!」
「あるぞ? 不死はあくまで外的要因を防ぐものじゃからな。老衰は範囲外じゃ」
「そうなの!?」
俺寿命で死ねたのかよ!? 地味にショックな事実だぞそれ。一時は「寿命が無かったらどうしよう」とか考えて鬱になりかけたのに!
「じゃあ別にそんなお願い聞かなくても、寿命がくるまでここでぼうっとしてれば俺死ねるんじゃねえの?」
「一々面倒な事を考えるヤツじゃなお主は……ここは神々の使う空間じゃぞ? 人間のお主にとっては時間の概念など有って無きが如く。お主の体感で百年が過ぎようと、実際には一秒も経過していない事とて有り得る。寿命が来る前に精神が壊れるのがオチじゃろう。そんな死に方がお主の望みなのか?」
「むぅ……」
死ねるのならばなんだっていい。そう思っていた時期も確かにあった。
しかしこうして選択肢ができた以上、どうせならより良い形で死にたいと思ってしまう欲目が出るのは、俺もやはり人間だという証だろう。
どのみち百年掛かってしまうのなら、能動的に動いた方が場合によっては早まるかもしれないし気分も良い。
俺が考えを落ち着けたのを読んだのか、アルティが静かに言う。
「……仮にお主が寿命を迎えるまでにやり遂げられんでも責めるつもりはない。もとはといえば妾の不手際じゃからの。思い詰めずに、可能な範囲でこなしてくれればそれで良い。きちんとやってくれている事が分かれば、例え達成できずとも報酬は払うつもりじゃよ」
俺にとって都合の良い条件だ。良すぎる気さえする。
それでも疑う気になれなかったのは、アルティの瞳を見てしまったからだ。
アルティはこの上なく真っ直ぐに俺の眼を見ている。深淵まで透かしてしまいそうなほどに、凝視している。
その時になって初めて気付いた。
燃え上がりそうなほどに紅い瞳は、褐色の少女に実に良く似合っていると。
その強い意思を、今までの頼りない雰囲気が嘘の様に、ただ真摯にこちらに向けて。
それは世界を滅ぼしてしまった尻拭いを一個人に押し付ける形になってしまったことへの罪悪感からだろうか。あるいは俺の知り得ない、別の何かだろうか。
「キラノ・セツナよ」
名前を呼ばれただけで、背筋に緊張が走る。それを恥とは思わない。今のこいつの一言一言に、それだけの神威が宿っている。
おかげで、どうやらここが正念場なのだと、この上なく理解できた。
「まずは謝罪申し上げる。お主の人生を、妾の都合で弄んでしまった事について」
両膝をつき、手を揃え、頭を深々と下げてくる。
一糸乱れぬあまりにも完璧な所作に、頭を下げている立場とは思えない、人間を超えた気品を感じた。
「その上で重ねて申し上げる。どうか、妾の身勝手な二つの頼みを、聞き入れてはもらえぬだろうか?」
かつて銃弾の雨の中、戦車をも相手取った事のある俺でさえ、この局面で勝てるイメージが思い浮かばない。
「はあ……」
つくづく、溜め息しか出て来ない。
どうやらこの『ヘイト』とやらが呼び寄せる厄介事は、神様相手でも例外ではないらしい。
「……わかった」
「――――え?」
「やるよ。その二つの頼み、受けてやる」
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