十番目の黄金胎児

タントンテン

切り裂くモノ

(家族4人は自動車ごと切られていた……)

 平沢洋一は、連続怪奇殺人にかんする被害届を交番でよんでいた。記載内容は洋一たち地域課の警官があつめた情報をまとめている。
 連続怪奇殺人。人間業ではない方法で多数の人間が殺される事件を世間および警察ではそう呼ばれている。

(犯行時刻はバラバラ……)
「平沢」
(被害者の共通点は不明……)
「平沢! 」
「……谷口部長? 」
「パトロール」

 肩をゆすられた洋一がふりむけば、谷口守たにぐち まもる部長が時計に指をさしていた。部長の知らせに彼はくちが半開きにし、そそくさと職場を出て自転車で出発した。

「毎日か……」

 みまわり中、洋一は霊柩車がとまる寺を見かけ足を止めた。運ばれる棺桶。泣く喪服の女性。不可思議連続殺人が発生するようになってから葬儀は連日とりおこなわれていた。
 その景色に彼は目をふせて歯を噛みしめる。やるせない怒りを感じた彼はペダルを漕ぎだした。

「……昼飯、食べるか」
 
 洋一は12時を示す屋外時計を目にし、気分転換も兼ねてコンビニに入ろうとして気づく。
黒い木彫りの人形で自らを神となのる何か。ジャガンナータがコンビニ近くの人気の無い路地裏にいるのを。

「腹が減ったナ! 何か買ってくれネ」
「最初がそれか……分かった」
「流石オイラの見込んだ戦士だナ!」

 洋一はジャガンナータのところへ向かう。やってきた彼に人形は片手で自分の腹に触れながら食べ物を要求する。
 断れないと信じる人形に彼はため息をつき承諾した。バンザイをしながらその場で2、3回ほど人形は飛びはねてから、青緑の液体に溶けて消えた。
 人形と別れた彼はコンビニへ。

「買ってきた」
「何をだナ!」

 もどってきた洋一はジャガンナータがいなくなって濡れている地点に声をかけた。その瞬間、間欠泉のように湧いた液は人形のすがたを形成した。
 現れた人形に彼はレジ袋から取り出したカレーパンを渡す。

「家族4人は自動車ごと切られていた……か」
「何の、んぐ……話だナ?」
「事件があった。ナータが話していたアスラ神族が関係しているかもしれない」

 ジャガンナータが食事を始めれば洋一もアンパンを食べ始める。そして、彼は連続怪奇殺人のことをつぶやいた。反応する人形に彼は語る。
 アスラ神族。敵対している種族の名前を聞けば人形は気が抜けた顔から、引きしめた表情を。

「本当なら探したいがナ……」
「見つけられるのか!?」
「無理だナ。最低でも実体がないと感知できない二」
「そうか……」

 人形に詰め寄る洋一だがジャガンナータの返事に静かに引き下がることしかできなかった。先手を取るのは難しい話だった。
 アスラ神族は赤黒い液に変化ができる。その状態ではジャガンナータは探知ができず、離れすぎていても分からない。

「どうす――」
「洋一! いるぞナ!」
「どこだ!」

 手だてを洋一が模索しようとした時にジャガンナータが知らせた。

 *

 真っ二つになったベビーカー。覆いかぶさるように分かれた女性だったもの。近くに立つ腕が鎌の人型のカマキリのような存在。

「――」
「怒りに飲み込まれては駄目だナ。使う二」

 それが、現場に到着した洋一とジャガンナータがもくげきした光景だ。彼は全身をこきざみにふるえさせてアスラ神族を見据える。
 肩にいる人形は落ちつかせるために彼の耳に手を当てる。

「なら……早く使わせてくれ」

 ジャガンナータが洋一にしみこんでいく。
 彼と人形に気づいた怪人は車を思わせる速さで駆け寄り、くびを一文字に切り裂こうとした。しかし、鋭く尖った爪に獅子の毛が生えた腕が抑えた。
 それは変化した彼の一部だ。

「……」

 洋一は徐々に変わる。体には獅子を思わせる特徴が表れ、肌は黒く。そしてズボン、顔全体を覆う兜、小手、すね当て、鎧が纏われる。
 すべてが終わった。怪人と相対するのは洋一ではなく、神でも人でもない戦士。

「お前ぐゃ……」

 戦士の頭突きが怪人のことばを遮断する。ひるむ怪人。しかし、完全に動きは停止せず、捕まっていない方の鎌を振りかざすも、腕を離されヤクザキックで吹っ飛ばされる。

「……」

 一歩、一歩とコンクリートに足跡がつきかねないほどに戦士は踏みしめ接近する。怪人は獲物を構えてそなえた。
 互いのこうげきが届く範囲になり怪人は右の鎌で袈裟切りを仕掛ける。
 戦士はさらに間合いを攻め、刃になっていない手首をつかむ。そして、自身を90度回転させてから振り下ろさせて回避し、怪人の腕の真横に立つ。

「!」

 ॐのマークが戦士のあしもとに出現し吸収され、左手がわずかに輝きを帯びる。拘束から逃れようとする怪人。
 手刀が光の軌跡を描きながら怪人の握られてる腕を断ち切った。かなきり声をあげる怪人。
 戦士は鎌を保持したままもちかえて怪人のくびを一閃。ゆっくりとずれておちる。そして、赤黒い液体となり散らばるがまわりを汚すことはなかった。戦士に吸い込まれたからだ。

「……ナータ。カルキって何なんだ。アスラはそんなに欲しいのか」
「オイラ達デーヴァ神族の最終兵器二。いらないわけがない二」

 分裂して元に持った洋一はうつむきながら立ちつくし、ジャガンナータから聞いたアスラ神族の目的を口走るように確認した。
 カルキ。アスラ神族と敵対するデーヴァ神族が作り出したシロモノ。極秘に地球に送り込まれたため、ジャガンナータにも人間の中に隠された武器としか分からない。察知もできていない。

「そんな物のために……くそ……」

 カルキのために何十人もすでに死んでいる。その現実に洋一は悪態をつき、ジャガンナータは何もできなかった。

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