Regain
2
いつものように彗夏に叩き起こされた俺が時計を見ると、始業式開始の20分前だった。
(やばいな……これも四葉が意味分からん連絡してきたせいだ)
5分で身支度を済ませ、10分で彩春が用意してくれたご飯を食べる。遅刻ギリギリを過ごしていると、こういう事だけが早くなる。
ちなみに家から俺の通う南瑚高校までは普通に歩いて3分しかかからない。つまりすぐそこだ。
道中誰とも話すことなく無事門を通過し、靴を履き替える。
教室のドアに手をかけたその時、背後から信じられない言葉が聞こえた。
「ねえ聞いた?あの話……」
「うん……木洩日さん行方不明なんでしょ?大丈夫なのかな……」
行方不明?
気づけば俺はその話をしていた女子達の方を向いていた。
ぎょっとしたような顔をする女子達に、俺は構わず近づき聞く。
「今の話、本当かよ」
「え……いや、あくまで噂で、本当って決まったわけじゃないけど……」
「そうか、急に割り込んで悪い」
それだけ言うとさっさとその場から立ち去る。
『木洩日さん行方不明なんでしょ?』 
ついさっき聞いた言葉がまるで呪いのようにリピートされる。背中に冷や汗が流れていくのが分かった。
教室のドアを開ける。いつもなら、俺の隣の席にはカバンが置いてあるはずだ。なぜなら、俺の隣は四葉だから。そしてもう1つ、あいつも俺と同じ寝坊常習犯で遅くに登校するので俺が来る時はまだ片付けの最中だから。
しかし、今日はそこだけ別世界に隔離されているかのように空虚だった。カバンもないし、当然四葉はいない。
しかしそこで俺はある事に気づく。
俺は、なんでこんなに焦っているんだ?
今まで散々迷惑だと思っていたはずだった。先月も、この間も、昨日だって ── 。
『もう俺に関わるなよ』
「馬鹿だ……俺…………」
どこからか「ざまぁみろ」と声が聞こえた気がした。
その日1日何をして過ごしたのかはよく覚えていない。
ただ、朝礼で担任がいかにも義務的といったように『木洩日さんが行方不明になってしまったようです。原因は不明で、今も警察などが捜索中ですが、皆さんも無事を祈りましょう』と伝えたことは覚えている。
いつの間にか夜の10時を過ぎていた。この時間はいつもならあいつから連絡が来る頃だ。こんな事普段なら考えもしなかったのに。
でも、もう全てが何もかも今更すぎた。
今から「昨日はごめん」と送ったって、返事は来ない。探しに行ったって、警察が見つけられないのに見つけられるはずが無い。
(だけど…………っ)
階段を駆け下り、靴を履いて夜道へ出た。
何でもいい、今自分に出来る限りの事をやる。それが俺の出来る、あいつに対する唯一の謝罪だから。
どこにもいない。
そんな都合よく見つかるとは最初から思ってなかったが、意外なところで収穫があった。
家からかなり離れた高台の公園、シロツメクサの花畑の中に、ひっそりとそれは落ちていた。
「四葉のクローバーの……キーホルダー……?」
これは、四葉の1年前の誕生日に無理矢理呼び出され、買い物に付き合わされた俺が仕方なく買った誕生日プレゼントだ。大層気に入っていたようで、お守り代わりとしてもずっと持ってると以前言っていた。
(これは……、かなり大きな手がかりかもしれない……!)
そう思って四葉のクローバーのキーホルダーに触れた瞬間、俺の意識はぷつんと途切れた。
(やばいな……これも四葉が意味分からん連絡してきたせいだ)
5分で身支度を済ませ、10分で彩春が用意してくれたご飯を食べる。遅刻ギリギリを過ごしていると、こういう事だけが早くなる。
ちなみに家から俺の通う南瑚高校までは普通に歩いて3分しかかからない。つまりすぐそこだ。
道中誰とも話すことなく無事門を通過し、靴を履き替える。
教室のドアに手をかけたその時、背後から信じられない言葉が聞こえた。
「ねえ聞いた?あの話……」
「うん……木洩日さん行方不明なんでしょ?大丈夫なのかな……」
行方不明?
気づけば俺はその話をしていた女子達の方を向いていた。
ぎょっとしたような顔をする女子達に、俺は構わず近づき聞く。
「今の話、本当かよ」
「え……いや、あくまで噂で、本当って決まったわけじゃないけど……」
「そうか、急に割り込んで悪い」
それだけ言うとさっさとその場から立ち去る。
『木洩日さん行方不明なんでしょ?』 
ついさっき聞いた言葉がまるで呪いのようにリピートされる。背中に冷や汗が流れていくのが分かった。
教室のドアを開ける。いつもなら、俺の隣の席にはカバンが置いてあるはずだ。なぜなら、俺の隣は四葉だから。そしてもう1つ、あいつも俺と同じ寝坊常習犯で遅くに登校するので俺が来る時はまだ片付けの最中だから。
しかし、今日はそこだけ別世界に隔離されているかのように空虚だった。カバンもないし、当然四葉はいない。
しかしそこで俺はある事に気づく。
俺は、なんでこんなに焦っているんだ?
今まで散々迷惑だと思っていたはずだった。先月も、この間も、昨日だって ── 。
『もう俺に関わるなよ』
「馬鹿だ……俺…………」
どこからか「ざまぁみろ」と声が聞こえた気がした。
その日1日何をして過ごしたのかはよく覚えていない。
ただ、朝礼で担任がいかにも義務的といったように『木洩日さんが行方不明になってしまったようです。原因は不明で、今も警察などが捜索中ですが、皆さんも無事を祈りましょう』と伝えたことは覚えている。
いつの間にか夜の10時を過ぎていた。この時間はいつもならあいつから連絡が来る頃だ。こんな事普段なら考えもしなかったのに。
でも、もう全てが何もかも今更すぎた。
今から「昨日はごめん」と送ったって、返事は来ない。探しに行ったって、警察が見つけられないのに見つけられるはずが無い。
(だけど…………っ)
階段を駆け下り、靴を履いて夜道へ出た。
何でもいい、今自分に出来る限りの事をやる。それが俺の出来る、あいつに対する唯一の謝罪だから。
どこにもいない。
そんな都合よく見つかるとは最初から思ってなかったが、意外なところで収穫があった。
家からかなり離れた高台の公園、シロツメクサの花畑の中に、ひっそりとそれは落ちていた。
「四葉のクローバーの……キーホルダー……?」
これは、四葉の1年前の誕生日に無理矢理呼び出され、買い物に付き合わされた俺が仕方なく買った誕生日プレゼントだ。大層気に入っていたようで、お守り代わりとしてもずっと持ってると以前言っていた。
(これは……、かなり大きな手がかりかもしれない……!)
そう思って四葉のクローバーのキーホルダーに触れた瞬間、俺の意識はぷつんと途切れた。
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