Regain

sakura*

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何かが聞こえる。

その何かは、現在夢の世界の淵に立っている俺の耳にけたたましく鳴り響き、俺が再び夢を見ようとすることを良しとしない。

やがてその何かによって、俺の立っている淵が脆く、容易く崩れ去っていく。

俺は走る。立ち止まり、もう直終わってしまうこの世界を受け入れなければならないのだと分かっていても、それは簡単なことではないのだ。

俺はひたすらに走り続け、突如現れた虹の階段を藁をも縋る思いで無我夢中に上りだした。

ああ、ここを上りきればもう大丈夫だろう。もう一度夢を見 ── 。

「ひーにい!!いい加減に起きてよっっ!!目覚まし鳴ってるじゃん!!」

 ── という妹のさらにけたたましい声で、俺のいた虹の階段は呆気なく消滅。俺は暗闇に真っ逆さまに落ち、強制的に夢の世界から現実へと戻されてしまった。

「なんだよ彗夏すいか。朝から近所迷惑な大声出しやがって……」

俺 ── 天野あまの ひいらぎが未だ眠い目をごしごし擦りながら言うと、俺の妹もとい次女・彗夏は物凄い剣幕で「そんなんだから友達いないんだよ」とか、挙句の果てには「永年ぼっち」などと言い始めた。

こいつの話を聞いているときりが無いのは分かっているので、そそくさと部屋から退散する。

リビングに行くと、もう1人の妹 ──長女の春香はるかがキッチンでせっせと朝食を作っていた。春香は俺と目が合うなり、ニコッと微笑んで「お兄ちゃん、おはよっ」と言う。可愛い。

だがそこで俺はある事に気づく。

「……秋音あきね璃冬りふゆは?」

いつも必ずダイニングにいる三女と四女がいない事に俺は疑問を感じた。

すると春香がクスクス笑いながら、

「あの2人、今日まで春休みだから、せめて最後ぐらい思いっきり夜ふかししようってすごい遅くまで遊んでたみたい。だからまだ寝てるんだよ」

と言った。

なるほど、最後だしせっかくだから遅くまで遊ぶ……か。よく考えたら確かに昨日は横の部屋がえらくうるさかったな。

そんな感じで納得した俺は、この後に起きる事など、知るよしもなかったのだった。

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