不死鳥の恋よ、安らかに眠れ
聖戦士対自由軍の少年たち②
イフテリオスとクエイルは、前に動いた。
グレンとミゲルがその前に立ちふさがる。
「どくんだ!」
イフテリオスが怒鳴った。
「どくもんかよ!」
ミゲルが言い返した。
彼は、その場にいた男たちの中で一番背が低かったが、血気盛んだった。
イフテリオスは、ミゲルの腹に拳の一撃を加えた。
「うげっ……」
ミゲルは見事に沈没した。
口から血の混じった泡を吐く。
クエイルは横殴りに、グレンに右肘を見舞わせた。
グレンは左手でそれを受け止めた。
お返しとばかりに、クエイルの顔面に頭突きを喰らわした。
「うぐっ……!」
反撃に動揺こそしたが、クエイルには余裕があった。
「少しはやるようだな」
クエイルは、そういうとニヤリと笑った。
同じように、グレンの顔に頭突きを返した。
グレンは、のけぞった。
「腹に力が入っていないんだよ!」
追撃で腹に蹴りを入れられた。
ピグーとの戦いで傷を負った場所だった。
グレンは、膝から崩れ落ちた。
激痛に顔を歪めていた。
「逃げろ!」
アンドレがエイミーに指示した。
エイミーは、後ろに広がる中指の穴に逃げ出した。
「待て!」
走り出すイフテリオスの足を、ミゲルが捕まえた。
クエイルの前には、アンドレが立ちふさがる。
とはいえ、彼らがエイミーに与えた時間はほんのわずかだ。
ミゲルは、苛立たしげなイフテリオスに強烈に顔面を蹴られて、今度こそ失神した。
アンドレは、あっけなくクエイルに馬乗りになられて、無防備な状態でボコボコにされた。
彼の端正な顔立ちは、腫れ上がり、見るも無残な状態となった。
イフテリオスとクエイルは、エイミーを追って、中指の穴に入った。
グレンに、彼らを追うほどの力が残っていなかった。
悔しそうに、拳を震わせる。
「白銀の魔女よ」
ゼウシスは一人つぶやいた。
(なんだ……)
「どうやって、一つになる?」
我に、まかせろ。
委ねるのだ。
すべて、我に……。
「主導権は、わたしだ」
ゼウシスは言った。
「わたしが神になるのだ。魔女よ、お前ではない」
もちろん……その通りだ。
わたしは、お前を神にするために、黒い雨を通ってきたのだから……。
しばらく、ゼウシスの中で対話があった。
「……そのあと、あの娘と一つになるには、どうすればいいのだ?」
それは……。
ドスンッ!
不意に、中指の穴から、何か大きなものがとんできた。
ゼノーの目の前に、ボロ雑巾のようになった肉体が落ちた。
彼は、慄いて腰を抜かした。
「こ、これは……クエイル!?」
先ほど中指に入っていったクエイルだった。
腕と脚が、あらぬ方向に曲がっていた。
「し、死んでおります!」
ゼノーは、声を裏返して教皇に報告した。
「なに?」
ゼウシスもさすがに驚いていた。
中指から、人影が出てきた。
可憐な少女。
怯えた目をしている。
エイミーだった。
「……お、お前、クエイルに何をした?」
ゼノーが問い詰めた。
「わ、わたしは……何も……」
「彼女は、オレを解き放っただけさ」
中指の穴から、もう一人、男の影が姿を現した。
男、というにはもはや、彼の姿は人間離れし過ぎていた。
腕の代わりに、無数の長い触手が生えていた。
ぬらぬらした海藻のような長い髪。
触手の先には、イフテリオスが首から吊し上げられていた。
聖戦士は、白眼で、舌を出したまま、ぴくりとも動かない。
触手の化け物は、イフテリオスの体もゼノーの前に投げつけた。
ゼノーは彼を知っていた。
「お前は、六鬼……」
「いかにも、オレは六鬼のクローチェだ。先程、この娘より獣化の薬を飲まされた。御礼がてらに、彼女を襲うこの二人を殺したというわけだ」
クローチェの体は、さらに膨張していた。
彼は、巨大なタコの化け物に変身していく過程にあった。
「あいつは、何者だ?」
「六鬼は、紅獅子王直属の戦闘集団です。あのクローチェは、中でも最強と謳われる戦士です!」
ゼウシスの質問に、ゼノーが答えた。
「どうすればいい?」
「ど、どうすればと言われましても……」
ゼノーは戸惑っていた。
しかしそれは、彼への質問ではなかった。
(どうすれば……か。先程から言っている。我に身を委ねよ。あの程度の化け物なら、我が魔道の力でなんとでもなる)
「わかった……」
ゼウシスは、瞳を閉じた。
心を無に近づけて、白銀の魔女の侵入を許した。
それほど時間はかからずに、白銀の魔女と、教皇ゼウシスの心は溶け合った。
二つの世界の魂は、一つに融合した。
グレンとミゲルがその前に立ちふさがる。
「どくんだ!」
イフテリオスが怒鳴った。
「どくもんかよ!」
ミゲルが言い返した。
彼は、その場にいた男たちの中で一番背が低かったが、血気盛んだった。
イフテリオスは、ミゲルの腹に拳の一撃を加えた。
「うげっ……」
ミゲルは見事に沈没した。
口から血の混じった泡を吐く。
クエイルは横殴りに、グレンに右肘を見舞わせた。
グレンは左手でそれを受け止めた。
お返しとばかりに、クエイルの顔面に頭突きを喰らわした。
「うぐっ……!」
反撃に動揺こそしたが、クエイルには余裕があった。
「少しはやるようだな」
クエイルは、そういうとニヤリと笑った。
同じように、グレンの顔に頭突きを返した。
グレンは、のけぞった。
「腹に力が入っていないんだよ!」
追撃で腹に蹴りを入れられた。
ピグーとの戦いで傷を負った場所だった。
グレンは、膝から崩れ落ちた。
激痛に顔を歪めていた。
「逃げろ!」
アンドレがエイミーに指示した。
エイミーは、後ろに広がる中指の穴に逃げ出した。
「待て!」
走り出すイフテリオスの足を、ミゲルが捕まえた。
クエイルの前には、アンドレが立ちふさがる。
とはいえ、彼らがエイミーに与えた時間はほんのわずかだ。
ミゲルは、苛立たしげなイフテリオスに強烈に顔面を蹴られて、今度こそ失神した。
アンドレは、あっけなくクエイルに馬乗りになられて、無防備な状態でボコボコにされた。
彼の端正な顔立ちは、腫れ上がり、見るも無残な状態となった。
イフテリオスとクエイルは、エイミーを追って、中指の穴に入った。
グレンに、彼らを追うほどの力が残っていなかった。
悔しそうに、拳を震わせる。
「白銀の魔女よ」
ゼウシスは一人つぶやいた。
(なんだ……)
「どうやって、一つになる?」
我に、まかせろ。
委ねるのだ。
すべて、我に……。
「主導権は、わたしだ」
ゼウシスは言った。
「わたしが神になるのだ。魔女よ、お前ではない」
もちろん……その通りだ。
わたしは、お前を神にするために、黒い雨を通ってきたのだから……。
しばらく、ゼウシスの中で対話があった。
「……そのあと、あの娘と一つになるには、どうすればいいのだ?」
それは……。
ドスンッ!
不意に、中指の穴から、何か大きなものがとんできた。
ゼノーの目の前に、ボロ雑巾のようになった肉体が落ちた。
彼は、慄いて腰を抜かした。
「こ、これは……クエイル!?」
先ほど中指に入っていったクエイルだった。
腕と脚が、あらぬ方向に曲がっていた。
「し、死んでおります!」
ゼノーは、声を裏返して教皇に報告した。
「なに?」
ゼウシスもさすがに驚いていた。
中指から、人影が出てきた。
可憐な少女。
怯えた目をしている。
エイミーだった。
「……お、お前、クエイルに何をした?」
ゼノーが問い詰めた。
「わ、わたしは……何も……」
「彼女は、オレを解き放っただけさ」
中指の穴から、もう一人、男の影が姿を現した。
男、というにはもはや、彼の姿は人間離れし過ぎていた。
腕の代わりに、無数の長い触手が生えていた。
ぬらぬらした海藻のような長い髪。
触手の先には、イフテリオスが首から吊し上げられていた。
聖戦士は、白眼で、舌を出したまま、ぴくりとも動かない。
触手の化け物は、イフテリオスの体もゼノーの前に投げつけた。
ゼノーは彼を知っていた。
「お前は、六鬼……」
「いかにも、オレは六鬼のクローチェだ。先程、この娘より獣化の薬を飲まされた。御礼がてらに、彼女を襲うこの二人を殺したというわけだ」
クローチェの体は、さらに膨張していた。
彼は、巨大なタコの化け物に変身していく過程にあった。
「あいつは、何者だ?」
「六鬼は、紅獅子王直属の戦闘集団です。あのクローチェは、中でも最強と謳われる戦士です!」
ゼウシスの質問に、ゼノーが答えた。
「どうすればいい?」
「ど、どうすればと言われましても……」
ゼノーは戸惑っていた。
しかしそれは、彼への質問ではなかった。
(どうすれば……か。先程から言っている。我に身を委ねよ。あの程度の化け物なら、我が魔道の力でなんとでもなる)
「わかった……」
ゼウシスは、瞳を閉じた。
心を無に近づけて、白銀の魔女の侵入を許した。
それほど時間はかからずに、白銀の魔女と、教皇ゼウシスの心は溶け合った。
二つの世界の魂は、一つに融合した。
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