不死鳥の恋よ、安らかに眠れ

ノベルバユーザー304215

展望台

 女の白衣を捲り上げて、男が背後から突いていた。

 バンバンバンと、肉が叩き合う音が、紅獅子城の天守閣に響く。

 女は細身だが、尻と桃はふくよかで、男を満足させていた。

 妙齢だが、肌の色は白く、鼻筋も通っており、美人といってよい。

 男は壮年に差し掛かる年齢だったが、まだまだ精力衰えぬようだった。

 終わらぬ腰の反復運動に、女は悲鳴のような声で喘ぎ続けた。

 傍らには、青い鎧が置いてある。

 男は、将軍カイゼルだ。

 女は我を忘れ、よだれを垂らし、さらに乱れた。

 彼女は、宮廷魔道士マディンだった。

 王の側近である二人は、天守閣で情事にいそしんでいた。

 人払いはしてあった。

 天守閣には展望台があり、巨大な望遠鏡が太陽に向けられている。

 カイゼルは、なかなか絶頂に達しないようだった。

 マディンは、彼のつらそうな表情に気がついた。

「……ムリ?」

「いや……」

 カイゼルは、否定したが、一度腰を引いて、マディンの中から引き抜いた。

 二人を繋ぐ液体の一部が、床に染みを作った。

「……やはり王に、報告せねば」

「何を? あれを?」

 マディンは、皮肉な笑いを浮かべて、望遠鏡と空に顎を向けた。

「そうだ」

「あなたの甥っ子がいかに強くても、あれには、どうしようもないわ」

「たしかにそうだが……」

「どうせ、わたしたちはあと一刻もすれば死ぬの。ならば、最後くらい、楽しみましょう。ときどきぶつかりもしたけど、あなたのことは、それほど嫌いじゃないわ」

 マディンは、懐から一粒の錠剤を取り出した。

 唇で甘噛みをして、その粒を加えると、口移しでカイゼルに与えた。

「……とっておきの媚薬よ。獣化の薬を改良したの。これでもう、余計な雑念はなくなるわ。ただ、快楽を求めればいい。わたしを、何度も気持ちよくして」

 ぶつり、とカイゼルの目から理性が消えた。

 息が荒くなり、筋肉に欠陥が浮き出た。

 陰茎が屹立し、蒸気を発する。

 マディンは白衣をふたたびまくり、丸いお尻を突き出した。

「さあ、ここに」

 白い臀部の真ん中の、果実のような色の割れ目に、カイゼルを誘う。

 我を失ったカイゼルは、そこに自分のものを入れて、突きまくった。

「あぁぁぁぁ! いいわぁ! あぁぁぁ! もっとぉぉぉ!」

 マディンは、魔道士の顔を脱ぎ捨て、一人の女、いや、もはや一匹の雌と化していた。

 彼女も媚薬を口にしたのか、その目から理性は消えていた。

 二人は、つい先程、望遠鏡で見てしまった。

 天空に、炎の包まれた集団が出現した。

 太陽の方向からやってくる、アグンの兵。

 不死鳥。

 この国最強の人間である紅獅子王カールが、全身火傷を負って、ようやく捕らえた。

 国一番の魔道士マディンが、その魔力のすべてを使って、氷の牢に閉じ込めている不死鳥。

 殺すことも、飼い慣らすこともできない。

 危険極まりない生物。

 それが、数千、いや、数万の大群となって、空から現れたのだ。

 まるで、紅い雨のように。

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