不死鳥の恋よ、安らかに眠れ
三色月華③
「……この世界に、わしと同じ名のものはいるか?」
イシドラはすがるような目で、ルッカと、その後ろに立つユウに尋ねた。
「……いる。いや、いたよ」
ユウが答えた。
「わたしたちは、紅獅子王に抵抗する自由軍という組織を作っていた。そのリーダーが、イシドラという名前だったよ」
「……だった、ということは」
「つい数日前に、六鬼に殺されたばかりさ」
ユウは淡々と答えた。
イシドラは、ガックリと肩を落とした。
「これで、わしが三色月華の神となることはなくなってしまったようだ……」
「魔女もこの世界に来ているのか? その女教皇と一つになって?」
「……そうだ。だが、蒼の月の世界にいるときに、わしは気がつかなかった。もしかしたら、教皇の体内にはいるが、まだ一つになっていないのかもしれん」
ルッカは考え込んだ。
「だけど、彼女がこの世界のもう一人の分身と会って、一つになれば……」
「……世界の融合が始まる」
イシドラもルッカも表情が重苦しい。
「な、なにバカなこと言ってんのさ!」
ユウは、話についてこれてなかった。
「まったく大ボラもいいとこだよ! そんなのあるわけないじゃん! それに、世界の融合も消滅も、今のわたしじゃなくなるなら、同じようなものじゃないか!」
「新たな神には、きっと新たな創造が許される。人を滅ぼすも、どう変容させるかも、新たな神次第……」
「あんたが、もう次の神になれないなら、あとは魔女しか神になれないってこと?」
ルッカが聞いた。
「そういうわけではない。だれかが教皇より先に一つになれば、そいつが新たな神だ」
ユウは、絶句した。
「オレは……?」
ルッカはつぶやくように言った。
「は?」
ユウは、なかば混乱していた。
「オレも、白銀の世界の自分と一つになって、黒い雨を通ってきた。だから、オレにも神になる権利があるのか?」
イシドラはうなずいた。
「そうだ。お前が魔女より先にこの世界の自分と出会い、一つになれば、それは可能だ」
「なんで? あんたが神になるの? あーもー意味がわからない。どうかしてるよ」
ユウは頭を抱えた。
とはいえ、ユウはルッカの背中に生えた白銀の翼を見ていた。
蒼い狼と白銀の翼。
ライアロウとリーグシャーの融合だ。
イシドラはルッカにたずねた。
「お前は、白銀の月の世界のことを覚えているか?」
「ああ……なんとなくだけど」
「何も知らないお前は巻き添えになった」
イシドラは、ルッカに言った。
「白銀の月の世界のお前は、魔女の知り合いだった。それで、共に黒い雨に打たれた」
ルッカは、魔のルッカの記憶を辿った。
白銀の魔女によってエイミーがさらわれた。
彼はエイミーを取り返すために、白銀の魔女のいる巨大樹に向かった。
そこで、黒い雨に打たれた。
「そのときの黒い雨は、魔女が呼び込んだものだった。蒼の神玉のようなものが、白銀の世界にもあった。魔女はそれを利用したんだ」
ルッカは断言した。
その光景が、記憶の中にあった。
「エイミーは、魔女の娘だった……」
魔のルッカは、彼女を助けようとしたとき、それを知って動揺した。
「今思えば、魔女は自分の娘のエイミーを、三色月華世界の女神にするつもりだったんだ。だけど、エイミーはそれを嫌がった……」
魔のルッカの記憶が、自分のもののように脳裏によみがえる。
それを知った魔のルッカは、エイミーを逃した。
必死の行動だった。
その後、白銀の月の世界のエイミーがどうにったのか、わからない。
代わりに、自分が黒い雨に打たれたのだった。
イシドラはすがるような目で、ルッカと、その後ろに立つユウに尋ねた。
「……いる。いや、いたよ」
ユウが答えた。
「わたしたちは、紅獅子王に抵抗する自由軍という組織を作っていた。そのリーダーが、イシドラという名前だったよ」
「……だった、ということは」
「つい数日前に、六鬼に殺されたばかりさ」
ユウは淡々と答えた。
イシドラは、ガックリと肩を落とした。
「これで、わしが三色月華の神となることはなくなってしまったようだ……」
「魔女もこの世界に来ているのか? その女教皇と一つになって?」
「……そうだ。だが、蒼の月の世界にいるときに、わしは気がつかなかった。もしかしたら、教皇の体内にはいるが、まだ一つになっていないのかもしれん」
ルッカは考え込んだ。
「だけど、彼女がこの世界のもう一人の分身と会って、一つになれば……」
「……世界の融合が始まる」
イシドラもルッカも表情が重苦しい。
「な、なにバカなこと言ってんのさ!」
ユウは、話についてこれてなかった。
「まったく大ボラもいいとこだよ! そんなのあるわけないじゃん! それに、世界の融合も消滅も、今のわたしじゃなくなるなら、同じようなものじゃないか!」
「新たな神には、きっと新たな創造が許される。人を滅ぼすも、どう変容させるかも、新たな神次第……」
「あんたが、もう次の神になれないなら、あとは魔女しか神になれないってこと?」
ルッカが聞いた。
「そういうわけではない。だれかが教皇より先に一つになれば、そいつが新たな神だ」
ユウは、絶句した。
「オレは……?」
ルッカはつぶやくように言った。
「は?」
ユウは、なかば混乱していた。
「オレも、白銀の世界の自分と一つになって、黒い雨を通ってきた。だから、オレにも神になる権利があるのか?」
イシドラはうなずいた。
「そうだ。お前が魔女より先にこの世界の自分と出会い、一つになれば、それは可能だ」
「なんで? あんたが神になるの? あーもー意味がわからない。どうかしてるよ」
ユウは頭を抱えた。
とはいえ、ユウはルッカの背中に生えた白銀の翼を見ていた。
蒼い狼と白銀の翼。
ライアロウとリーグシャーの融合だ。
イシドラはルッカにたずねた。
「お前は、白銀の月の世界のことを覚えているか?」
「ああ……なんとなくだけど」
「何も知らないお前は巻き添えになった」
イシドラは、ルッカに言った。
「白銀の月の世界のお前は、魔女の知り合いだった。それで、共に黒い雨に打たれた」
ルッカは、魔のルッカの記憶を辿った。
白銀の魔女によってエイミーがさらわれた。
彼はエイミーを取り返すために、白銀の魔女のいる巨大樹に向かった。
そこで、黒い雨に打たれた。
「そのときの黒い雨は、魔女が呼び込んだものだった。蒼の神玉のようなものが、白銀の世界にもあった。魔女はそれを利用したんだ」
ルッカは断言した。
その光景が、記憶の中にあった。
「エイミーは、魔女の娘だった……」
魔のルッカは、彼女を助けようとしたとき、それを知って動揺した。
「今思えば、魔女は自分の娘のエイミーを、三色月華世界の女神にするつもりだったんだ。だけど、エイミーはそれを嫌がった……」
魔のルッカの記憶が、自分のもののように脳裏によみがえる。
それを知った魔のルッカは、エイミーを逃した。
必死の行動だった。
その後、白銀の月の世界のエイミーがどうにったのか、わからない。
代わりに、自分が黒い雨に打たれたのだった。
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