不死鳥の恋よ、安らかに眠れ
ルッカと紅獅子王①
ルッカは、紅獅子城の石壁の上で、しばらく呆然としていた。
いま甦った記憶が、現実であるのか妄想であるのか、判断がつかなかった。
「カール……?」
高貴な身なりの女は、最後にそう呼んだ。
ルッカは、小さな赤子だった。
その言葉が事実で、ルッカの本当の名前がカールだというのなら……。
紅獅子王カール。
彼が、この世界のルッカの分身だということになる。
ルッカは首を振った。
ここへは、アナを救いにきただけだ。
今は、余計なことは考えまい。
城の兵は手薄だった。
ユーダロスの部下たちは、河岸での敗戦のことを伝えなかったのだろうか?
ルッカは、クローチェの情報を元に、ユウが考案した経路を進んだ。
アナは、天井から鳥籠のような牢に閉じ込められているらしい。
柱を登って、天井を伝う。
くしくもそこは、数日前、魔封のイシドラも通った道だった。
やがて、なんの障害も受けることなく、ルッカは大広間の天井にたどり着く。
クローチェの情報通り、そこには大きな鳥籠の形をしたものがぶら下がっていた。
中には、ベッドやテーブルや椅子がある。
アナはここで、生活させられているのだ。
ルッカは、急いで鳥籠まで進んだ。
「アナ……!」
小声で呼びかける。
しかし、返事はない。
鳥籠の中には、だれもいなかった。
よく見ると、籠の扉は開いてた。
下方で、何かが動く音がする。
ルッカは、大広間に目を落とした。
巨大な広間。
一個兵団が立ち並べるほどの広さだ。
しかし、今そこにいるのは二人だけだった。
紅獅子王カール。
紅い鎧に、獅子の仮面。
筋骨隆々とした体は大きく、人間離れしていた。
彼は、王座から降りて、床で女を犯していた。
女の髪は紅い。
瞳も。
「アナ!」
裸にされ、王の体液と思われるもので汚されていた。
全身に、紅獅子王の股間から伸びる長いこん棒のようなものを擦り付けられていた。
腕でつかんで、足を絡めて、しごくように命じられているようだ。
虚な目で、緩慢な動きで、アナは王に奉仕していた。
ルッカの怒りに火がついた。
もしかしたら、紅獅子王が自分の分身かもしれないという疑念は、一気に消え去った。
「……殺す!」
ルッカは、最後の獣化の薬を飲み込んだ。
体が変化するよりも早く、鳥籠から飛び降りた。
「アナ!」
ルッカは、王の頭上に膝から落ちた。
膝蹴り与えたつもりだったが、衝撃を受けたのは、ルッカの方だった。
鉄の板のように、王の頭は固かった。
膝から嫌な音がした。
獣化の途中でなければ、骨が砕けていたかもしれない。
顔を歪めながら、なおもルッカは王の頭にしがみついた。
そして、後ろから獅子の仮面を引っぺがす。
ようやく、王は反応した。
腕を頭上に持ってくるが、捕まるより早く、ルッカはそこから離脱した。
王が立ち上がり、振り返る。
圧倒的な存在感。
仮面を外された場所には、焼けただれた醜い素顔があった。
皮の剥がれた獣の顔だった。
剥き出しになった眼球が、ルッカをとらえる。
ルッカも見返した。
その時にはルッカも、蒼い狼男の姿に変化していた。
二人の戦いが始まった。
いま甦った記憶が、現実であるのか妄想であるのか、判断がつかなかった。
「カール……?」
高貴な身なりの女は、最後にそう呼んだ。
ルッカは、小さな赤子だった。
その言葉が事実で、ルッカの本当の名前がカールだというのなら……。
紅獅子王カール。
彼が、この世界のルッカの分身だということになる。
ルッカは首を振った。
ここへは、アナを救いにきただけだ。
今は、余計なことは考えまい。
城の兵は手薄だった。
ユーダロスの部下たちは、河岸での敗戦のことを伝えなかったのだろうか?
ルッカは、クローチェの情報を元に、ユウが考案した経路を進んだ。
アナは、天井から鳥籠のような牢に閉じ込められているらしい。
柱を登って、天井を伝う。
くしくもそこは、数日前、魔封のイシドラも通った道だった。
やがて、なんの障害も受けることなく、ルッカは大広間の天井にたどり着く。
クローチェの情報通り、そこには大きな鳥籠の形をしたものがぶら下がっていた。
中には、ベッドやテーブルや椅子がある。
アナはここで、生活させられているのだ。
ルッカは、急いで鳥籠まで進んだ。
「アナ……!」
小声で呼びかける。
しかし、返事はない。
鳥籠の中には、だれもいなかった。
よく見ると、籠の扉は開いてた。
下方で、何かが動く音がする。
ルッカは、大広間に目を落とした。
巨大な広間。
一個兵団が立ち並べるほどの広さだ。
しかし、今そこにいるのは二人だけだった。
紅獅子王カール。
紅い鎧に、獅子の仮面。
筋骨隆々とした体は大きく、人間離れしていた。
彼は、王座から降りて、床で女を犯していた。
女の髪は紅い。
瞳も。
「アナ!」
裸にされ、王の体液と思われるもので汚されていた。
全身に、紅獅子王の股間から伸びる長いこん棒のようなものを擦り付けられていた。
腕でつかんで、足を絡めて、しごくように命じられているようだ。
虚な目で、緩慢な動きで、アナは王に奉仕していた。
ルッカの怒りに火がついた。
もしかしたら、紅獅子王が自分の分身かもしれないという疑念は、一気に消え去った。
「……殺す!」
ルッカは、最後の獣化の薬を飲み込んだ。
体が変化するよりも早く、鳥籠から飛び降りた。
「アナ!」
ルッカは、王の頭上に膝から落ちた。
膝蹴り与えたつもりだったが、衝撃を受けたのは、ルッカの方だった。
鉄の板のように、王の頭は固かった。
膝から嫌な音がした。
獣化の途中でなければ、骨が砕けていたかもしれない。
顔を歪めながら、なおもルッカは王の頭にしがみついた。
そして、後ろから獅子の仮面を引っぺがす。
ようやく、王は反応した。
腕を頭上に持ってくるが、捕まるより早く、ルッカはそこから離脱した。
王が立ち上がり、振り返る。
圧倒的な存在感。
仮面を外された場所には、焼けただれた醜い素顔があった。
皮の剥がれた獣の顔だった。
剥き出しになった眼球が、ルッカをとらえる。
ルッカも見返した。
その時にはルッカも、蒼い狼男の姿に変化していた。
二人の戦いが始まった。
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