不死鳥の恋よ、安らかに眠れ
出発
「本当に、二人だけで大丈夫か?」
アンドレが、心配そうな声で言った。
「すまない、ほんとはオレ一人でもいいんだけど……」
ルッカは、アンドレとミゲルに頭を下げる。
グレンはまだ起き上がれなかった。
しかし、意識は戻り、徐々に回復に向かっている。
「わたしも、一緒に行く……」
涙目で、エイミーがそう訴えてきたが、ルッカは首を振った。
「だめだよ……危険すぎる。エイミーは、ここにいてくれ」
「でも……」
「大丈夫、アナは、オレが必ず助けてみせるさ。いざというときは、またこれを使う」
ルッカは、分けてもらった獣化の薬をエイミーに見せた。
しかし、錠数はわずかだ。
そう何度も、獣化するわけにはいかない。
「舟の準備が出来たよ」
ユウが、ルッカを促した。
表向きは、商業用の船だった。
貨物を積み、くつろげるスペースもせまい。
ユウと二人で、紅獅子城を目指すことになった。
最初はルッカ一人で行くつもりだったが、歩いて行くには、あまりに道のりは長い。
そこで、ユウが舟を出すことを提案したのだ。
王都へ向かう商船を装えば、スムーズに城まで辿り着けるだろう、とのことだった。
ユウの操船技術なら、いざというとき、危機を回避することも可能だという。
「ユウ……ルッカを、ルッカとアナをお願いします」
頭を下げるエイミーに対して、ユウの顔は曇った。
「こっちも助けてもらったから、何とかしたいのはやまやまだけど……紅獅子城が近づけば近づくほど危険も大きくなる。また六鬼の一人にでも襲われたら、ただの女の子であるわたしは、何の役にも立たないよ。城の近くでルッカを降したら、急いで帰るつもりだよ」
ユウは、目を逸らしながらそう言った。
もっともだった。
本当は、紅獅子城に乗り込むことだって、狂気の沙汰なのだ。
ただ、ユウはルッカが舟を降りたあとの計画も、綿密に立ててくれていた。
クローチェから、アナの捕らえられている場所と、城の兵の配置を聞き出したのだ。
ミゲルは、今のうちにクローチェを殺そうと提案したが、ユウが首を縦に振らなかった。
生かす代わりに、紅獅子城の情報をもらった。
不思議とクローチェは、素直に城の状況を話してくれた。
「べつに、内部状況がわかったところで、お前たちの計画が成功するわけではない」
クローチェは言い切った。
「むしろ、どこまでやれるか見てみたいものだな。オレを驚かせてみろ。そのために、協力しよう」
クローチェは、不敵な笑みを浮かべたが、強がりにも見えた。
彼とて、ここで死にたいわけでもないだろう。
「エイミー、行ってくる」
ルッカは、エイミーを抱き寄せた。
強く、抱きしめる。
エイミーは、顔を真っ赤にして、ミゲルとユウも、ルッカの大胆な行動にあっけにとられていた。
アンドレだけは、ひやかすようにニヤケながら口笛を吹く。
このとき、すでに魔のルッカは、蒼の月のルッカと同化していた。
二人は、一人になっていた。
アンドレが、心配そうな声で言った。
「すまない、ほんとはオレ一人でもいいんだけど……」
ルッカは、アンドレとミゲルに頭を下げる。
グレンはまだ起き上がれなかった。
しかし、意識は戻り、徐々に回復に向かっている。
「わたしも、一緒に行く……」
涙目で、エイミーがそう訴えてきたが、ルッカは首を振った。
「だめだよ……危険すぎる。エイミーは、ここにいてくれ」
「でも……」
「大丈夫、アナは、オレが必ず助けてみせるさ。いざというときは、またこれを使う」
ルッカは、分けてもらった獣化の薬をエイミーに見せた。
しかし、錠数はわずかだ。
そう何度も、獣化するわけにはいかない。
「舟の準備が出来たよ」
ユウが、ルッカを促した。
表向きは、商業用の船だった。
貨物を積み、くつろげるスペースもせまい。
ユウと二人で、紅獅子城を目指すことになった。
最初はルッカ一人で行くつもりだったが、歩いて行くには、あまりに道のりは長い。
そこで、ユウが舟を出すことを提案したのだ。
王都へ向かう商船を装えば、スムーズに城まで辿り着けるだろう、とのことだった。
ユウの操船技術なら、いざというとき、危機を回避することも可能だという。
「ユウ……ルッカを、ルッカとアナをお願いします」
頭を下げるエイミーに対して、ユウの顔は曇った。
「こっちも助けてもらったから、何とかしたいのはやまやまだけど……紅獅子城が近づけば近づくほど危険も大きくなる。また六鬼の一人にでも襲われたら、ただの女の子であるわたしは、何の役にも立たないよ。城の近くでルッカを降したら、急いで帰るつもりだよ」
ユウは、目を逸らしながらそう言った。
もっともだった。
本当は、紅獅子城に乗り込むことだって、狂気の沙汰なのだ。
ただ、ユウはルッカが舟を降りたあとの計画も、綿密に立ててくれていた。
クローチェから、アナの捕らえられている場所と、城の兵の配置を聞き出したのだ。
ミゲルは、今のうちにクローチェを殺そうと提案したが、ユウが首を縦に振らなかった。
生かす代わりに、紅獅子城の情報をもらった。
不思議とクローチェは、素直に城の状況を話してくれた。
「べつに、内部状況がわかったところで、お前たちの計画が成功するわけではない」
クローチェは言い切った。
「むしろ、どこまでやれるか見てみたいものだな。オレを驚かせてみろ。そのために、協力しよう」
クローチェは、不敵な笑みを浮かべたが、強がりにも見えた。
彼とて、ここで死にたいわけでもないだろう。
「エイミー、行ってくる」
ルッカは、エイミーを抱き寄せた。
強く、抱きしめる。
エイミーは、顔を真っ赤にして、ミゲルとユウも、ルッカの大胆な行動にあっけにとられていた。
アンドレだけは、ひやかすようにニヤケながら口笛を吹く。
このとき、すでに魔のルッカは、蒼の月のルッカと同化していた。
二人は、一人になっていた。
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