不死鳥の恋よ、安らかに眠れ

ノベルバユーザー304215

空き部屋の二人①

「空いてる部屋はないんだ。ここで寝泊まりしな」

 ユウは、小さな部屋に二人を案内した。

 物置のようだった。

 ガラクタを整理したら、なんとか二人で横たわるスペースくらいは、確保できそうだ。

 毛布を渡される。

「二人、いっしょにか?」

 ルッカは、戸惑いながら聞いた。

「お前が守ってやるって、言ってたじゃないか」

「そうだけど……」

「ここだって、男はいっぱいいるぞ。とくにアンドレあたりは、その娘を気にいってたみたいだからね。早速、夜這いにくるかもしれないよ。あいつは手が早いんだ」

 冗談か本気かよくわからなかった。

 ユウは、まじめな顔をしていた。

「あの、ユウさん……」

「ユウ、でいいよ。エイミー」

「ではユウ、ありがとうございます。作戦、考えてくださることになって……」

「本当にできるかは分からないけどね。あの薬をリーダーが使わせてくれれば、なんとかなるかもしれないんだけど……」

「あの薬?」

「六鬼が、満月でなくとも獣化できるのは、王国にマディンという魔女がいるからなのさ」

「マディン……」

 ルッカは、エイミーをみた。

 エイミーは首を横に振った。

 彼女も初耳のようだ。

「その女が、獣化の薬を調合している。うちのリーダーは、かつて彼女の弟子だった。それで、ここでも研究を続けていた。最近になって、近いものを調合できるようになったらしいんだ」

「それを使えれば、アナを救える……」

「かもしれない。しかし、王城の状況を調べなくてはなんともいえない。アナがどこに囚われているのか、警備はどの程度なのか」

「どうやって、調べるんだ?」

 ユウは、頭をかきむしった。

「それが、一番の問題なんだよ」

 ルッカとエイミーは、何も言えなかった。

 彼らにだって、どうしようもない。

 ユウに任せるしないのだ。

 ユウが去ると、二人はとりあえず部屋を整理した。

 充分といえるスペースは確保出来ず、肩がくっつく距離で横になった。

 ルッカは、なんだか落ち着かなかった。

 エイミーも、どこかそわそわしていた。

 君は先に寝ろ。

 白銀のルッカが、心の中で言った。

「じゃあ、先に寝る」

「う、うん……おやすみ」

「おやすみ」

 体を借りるよ。

 蒼のルッカの意識が沈んだあと、白銀のルッカが主導権をとった。

「ねえ、エイミー」

「え、寝たんじゃないの?」

「やっぱり、もう少し話をしないか?」

 白銀のルッカは、エイミーを見た。

 近い距離にお互いの顔があった。

 彼女も、ルッカを見つめていた。

「はい」

 エイミーは、嬉しそうに微笑んだ。

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