不死鳥の恋よ、安らかに眠れ
紅獅子城
紅獅子王の城は、背後を険しい千剣山に囲まれ、そこから流れるエレファント河の上流に建っていた。
高台にある巨大な建造物の最上階には、天守閣があり、展望台となっていた。
エレファント河は、その名の通り象の鼻のように太い大河で、支流は無数に分かれている。
支流の要所には水門があり、国中へ運ばれる水が調節されていた。
紅の月の世界に四季はなく、ほとんどが夏で、雨季は短かい。
エレファント河は貴重な水脈で、王がそれを牛耳っているといってよかった。
唯一、ウル湖に面した集落のみが、そこから独立していた。
しかし、六鬼の襲撃によって、そのウル湖沿岸部も、いまや壊滅的な状態だという。
「壊滅的?」
報告を受けて、紅獅子王は、首を傾げた。
王の広間は、千人の兵士が参列できるほど大きく、天井も高かった。
玉座に座る王は、身の丈三メートルは優に超える巨漢で、血のような真紅の鎧に身を包んでいる。
獅子を模して作られた兜によって、顔は隠されていた。
気の弱いものなら、それだけで気を失ってしまうような鋭い眼光が、広間にそろった幹部たちに注がれている。
報告をした六鬼の一人、ガーランドは、身を縮めた。
「自由軍とやらが、神出鬼没に現れ、制覇の邪魔をしていると聞くが?」
王の疑念を、将軍が引き継いだ。
紅獅子王の側には、二人の人物がいた。
右側に、青い鎧の壮年の男。
体躯は普通だが、いかつい顔をしている。
将軍のカイゼルだ。
左側には、黒いローブの女。
見た目は若いが、表情は超然としていて、その場の誰よりも年長に感じられた。
宮廷魔道士マディン。
「神出鬼没ゆえ、手を焼いておりましたが、ついにアジトを見つけました。いま、我ら六鬼のピグーとクローチェが向かっています」
ガーランドは、力強く言った。
青い鎧の将軍が前に出た。
「なるほど、では、ハーメルンを殺したのは、何者だ?」
六鬼のうち三人が、王の前に並んでいる。
ガーランド、ユーダロス、アイデン。
ピグーとクローチェは、自由軍討伐に出陣している。
王国最高の戦士を集めた六鬼の一人、ハーメルンが欠けていた。
アナをさらいに行ったときに、何者かに殺されたのだ。
「わかりません……」
ガーランドの表情は曇った。
「そいつの抹殺も、六鬼の仕事ではないのか?」
将軍は、言った。
「その通りです。しかし、正体も足取りも、全くつかめておりません……」
ガーランドは、天井を見上げた。
大きな鳥かごのようにものが、天井からぶら下がっている。
中には、紅い髪の女がいた。
アナ=オレオソルトだ。
将軍も上を向いた。
声を張り上げて、アナに向かって、たずねた。
「その異国の男は、何者なのだ?」
「さあ、わたしは知らない」
アナは、まさに籠の中の鳥のような状態だった。
籠には、小部屋のようになっていて、ベッドや家具が置かれている。
高価な服を与えられ、まるで貴族の娘のような出で立ちだった。
「でも、彼は……」
アナは、その続き口には出さなかった。
ルッカは、必ずわたしを救いにここに、現れる。
なぜかそんな予感がしていた。
高台にある巨大な建造物の最上階には、天守閣があり、展望台となっていた。
エレファント河は、その名の通り象の鼻のように太い大河で、支流は無数に分かれている。
支流の要所には水門があり、国中へ運ばれる水が調節されていた。
紅の月の世界に四季はなく、ほとんどが夏で、雨季は短かい。
エレファント河は貴重な水脈で、王がそれを牛耳っているといってよかった。
唯一、ウル湖に面した集落のみが、そこから独立していた。
しかし、六鬼の襲撃によって、そのウル湖沿岸部も、いまや壊滅的な状態だという。
「壊滅的?」
報告を受けて、紅獅子王は、首を傾げた。
王の広間は、千人の兵士が参列できるほど大きく、天井も高かった。
玉座に座る王は、身の丈三メートルは優に超える巨漢で、血のような真紅の鎧に身を包んでいる。
獅子を模して作られた兜によって、顔は隠されていた。
気の弱いものなら、それだけで気を失ってしまうような鋭い眼光が、広間にそろった幹部たちに注がれている。
報告をした六鬼の一人、ガーランドは、身を縮めた。
「自由軍とやらが、神出鬼没に現れ、制覇の邪魔をしていると聞くが?」
王の疑念を、将軍が引き継いだ。
紅獅子王の側には、二人の人物がいた。
右側に、青い鎧の壮年の男。
体躯は普通だが、いかつい顔をしている。
将軍のカイゼルだ。
左側には、黒いローブの女。
見た目は若いが、表情は超然としていて、その場の誰よりも年長に感じられた。
宮廷魔道士マディン。
「神出鬼没ゆえ、手を焼いておりましたが、ついにアジトを見つけました。いま、我ら六鬼のピグーとクローチェが向かっています」
ガーランドは、力強く言った。
青い鎧の将軍が前に出た。
「なるほど、では、ハーメルンを殺したのは、何者だ?」
六鬼のうち三人が、王の前に並んでいる。
ガーランド、ユーダロス、アイデン。
ピグーとクローチェは、自由軍討伐に出陣している。
王国最高の戦士を集めた六鬼の一人、ハーメルンが欠けていた。
アナをさらいに行ったときに、何者かに殺されたのだ。
「わかりません……」
ガーランドの表情は曇った。
「そいつの抹殺も、六鬼の仕事ではないのか?」
将軍は、言った。
「その通りです。しかし、正体も足取りも、全くつかめておりません……」
ガーランドは、天井を見上げた。
大きな鳥かごのようにものが、天井からぶら下がっている。
中には、紅い髪の女がいた。
アナ=オレオソルトだ。
将軍も上を向いた。
声を張り上げて、アナに向かって、たずねた。
「その異国の男は、何者なのだ?」
「さあ、わたしは知らない」
アナは、まさに籠の中の鳥のような状態だった。
籠には、小部屋のようになっていて、ベッドや家具が置かれている。
高価な服を与えられ、まるで貴族の娘のような出で立ちだった。
「でも、彼は……」
アナは、その続き口には出さなかった。
ルッカは、必ずわたしを救いにここに、現れる。
なぜかそんな予感がしていた。
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