不死鳥の恋よ、安らかに眠れ
紅の月の世界のイシドラ
「この国は荒廃している」
イシドラは語った。
紅獅子王の国には、気性が荒い者が多く、集落ごとの争いが絶えなかった。
とくに満月の夜には、男たちが獣人化するため、やたらと略奪や強姦などの犯罪が多い。
王国の軍は、そういう輩を取り締まるどころか、実力があれば、兵として雇うのだった。
もともとイシドラの自由軍は、野党から集落を守る自衛団のようなものだった。
はじめは自分たちの住む集落だけだったが、その範囲は徐々に広がっていった。
イシドラは船を使い、遊撃的に活動した。
規模もしだいに大きくなり、ときには紅獅子王の軍や、六鬼とぶつかるようになったのだという。
「私は、もともと医者だった。治療もだが、新しい薬の開発に取り組んでいたんだ。戦うよりも、病気やケガの治療に、この組織を使いたかった……しかし、いまや国に抵抗する唯一の勢力になってしまった……。若いものたちは、自ら反乱軍とまで言うものもいる」
イシドラは、嘆いた。
ルッカは、大聖堂の封印の部屋であった聖戦士を思い出した。
魔封のイシドラ、とアナが教えてくれた。
敵だが、気さくなおじさんという雰囲気だった。
同じ名前の自由軍リーダーは、真面目な性格のようだ。
いっぽうエイミーは、昨晩助けてくれた戦士を思い出していた。
彼のことは、まだルッカに話していない。
話したら、ルッカはどのような反応を示すだろう?
たしか、二人は知り合いと言っていた。
「どうしたんだ?」
二人の反応に、自由軍のイシドラは戸惑いを浮かべた。
「あの……」
エイミーが口を開いた。
「あつかましいのは、わかっていますが、わたしたちは、アナを助けたいんです……」
「そうだろうな。気持ちはわかるよ、エイミーさん」
イシドラは、腕を組んでうなずいた。
「しかし、アナが捕らえられたのは、王の居城。軍の拠点だ。いくら我らとて、正面から行ってどうなるものでもない。王が望んで奪ったのなら、交渉もむずかしいだろう。残念だが、あきらめるしかない」
「知恵だけ、貸してくれないかな?」
ルッカは言った。
「助けるのは、オレが一人でなんとかする。ただ、オレはそんなに頭がよくないし、この国のこともわからない。良い計画が立てられないんだ。だから、イシドラさん、そこのミゲルに、作戦を考えてほしい」
「なに?」
イシドラは、ルッカを見た。 
「あいつなら、きっといい作戦を考えてくれるはずだ」
ルッカは、うしろに立っていたミゲルを指差した。
イシドラと彼の部下たちは、驚いていた。
「本当にこいつでいいのか?」
ユウは、半眼でミゲルを指差した。
指名されたミゲルは、心底、嫌そうな顔をしていた。
イシドラは語った。
紅獅子王の国には、気性が荒い者が多く、集落ごとの争いが絶えなかった。
とくに満月の夜には、男たちが獣人化するため、やたらと略奪や強姦などの犯罪が多い。
王国の軍は、そういう輩を取り締まるどころか、実力があれば、兵として雇うのだった。
もともとイシドラの自由軍は、野党から集落を守る自衛団のようなものだった。
はじめは自分たちの住む集落だけだったが、その範囲は徐々に広がっていった。
イシドラは船を使い、遊撃的に活動した。
規模もしだいに大きくなり、ときには紅獅子王の軍や、六鬼とぶつかるようになったのだという。
「私は、もともと医者だった。治療もだが、新しい薬の開発に取り組んでいたんだ。戦うよりも、病気やケガの治療に、この組織を使いたかった……しかし、いまや国に抵抗する唯一の勢力になってしまった……。若いものたちは、自ら反乱軍とまで言うものもいる」
イシドラは、嘆いた。
ルッカは、大聖堂の封印の部屋であった聖戦士を思い出した。
魔封のイシドラ、とアナが教えてくれた。
敵だが、気さくなおじさんという雰囲気だった。
同じ名前の自由軍リーダーは、真面目な性格のようだ。
いっぽうエイミーは、昨晩助けてくれた戦士を思い出していた。
彼のことは、まだルッカに話していない。
話したら、ルッカはどのような反応を示すだろう?
たしか、二人は知り合いと言っていた。
「どうしたんだ?」
二人の反応に、自由軍のイシドラは戸惑いを浮かべた。
「あの……」
エイミーが口を開いた。
「あつかましいのは、わかっていますが、わたしたちは、アナを助けたいんです……」
「そうだろうな。気持ちはわかるよ、エイミーさん」
イシドラは、腕を組んでうなずいた。
「しかし、アナが捕らえられたのは、王の居城。軍の拠点だ。いくら我らとて、正面から行ってどうなるものでもない。王が望んで奪ったのなら、交渉もむずかしいだろう。残念だが、あきらめるしかない」
「知恵だけ、貸してくれないかな?」
ルッカは言った。
「助けるのは、オレが一人でなんとかする。ただ、オレはそんなに頭がよくないし、この国のこともわからない。良い計画が立てられないんだ。だから、イシドラさん、そこのミゲルに、作戦を考えてほしい」
「なに?」
イシドラは、ルッカを見た。 
「あいつなら、きっといい作戦を考えてくれるはずだ」
ルッカは、うしろに立っていたミゲルを指差した。
イシドラと彼の部下たちは、驚いていた。
「本当にこいつでいいのか?」
ユウは、半眼でミゲルを指差した。
指名されたミゲルは、心底、嫌そうな顔をしていた。
「ファンタジー」の人気作品
書籍化作品
-
-
141
-
-
159
-
-
337
-
-
267
-
-
49989
-
-
310
-
-
22803
-
-
70810
-
-
2
コメント