不死鳥の恋よ、安らかに眠れ

ノベルバユーザー304215

自由軍

「オレの名は……」

 ルッカは言いよどんだ。

 急いで、心のうちで白銀のルッカと相談した。

 名乗るべきか、そうしないべきか。

 同じことだ。

 この世界のルッカがいても、同じ名前なだけだ。

 それでごまかせばいい。

「オレの名前は、ルッカだ」

 正直に名乗った。

 しかし、特別な反応はなかった。

「ついてこい」

 ミゲルにうながされて、ルッカとエイミーは、湾岸の洞窟に案内された。

 歩きながら、ルッカはミゲルにたずねた。

「おまえたちの仲間に、オレと同じ、ルッカという名前のものはいるか?」

「さあ。少なくとも、オレの知り合いにはいないな」

 ミゲルは、冷たく答えた。

 湖に沿って、しばらく歩いた。
 
 エイミーは疲れていた。
 
 ふらふらになったところを、ユウが悪態をつきながら、支えてくれた。

「ありがとう、ユウ」

「なんであんた、あたし名前を知ってるのさ」

「え、さっき呼び合ってろ?」

「そうだったぁ?」

 まずい。

 自分は知っていても、相手は知らないんだから、慎重にね。

 白銀のルッカに、心の中で注意される。

 砂浜側からは、見えない位置に洞窟はあった。

 途中から小舟に乗って、一行は彼らの隠れ家に向かった。

「おお!」

 ルッカは感嘆の声を上げた。

 洞窟の入り江には、数台の大型の船があった。

「これは、戦艦だろ?」

「そうだ。このくらいは持っていないと、紅獅子王の軍と戦えないからな」

 グレンが答えた。

「戦う……?」

 エイミーは、自分を支えてくれているユウを見た。

「まあ、いわば反乱軍ね。王国側から見たら」

「リーダーは、自由軍と呼んでいる」

 アンドレが、補足した。

「べつに王制を倒したいわけじゃない。ただ、圧政をやめてくれれば、ぼくらも抵抗はしない。暴力と殺戮で、民は怯えて暮さねばならない。それをやめさせるために、戦っているんだ」

「そうなんだ……」

 自分のいた蒼の月の世界が、あまりにも平和に感じた。

 この世界の友人たちは、人々のために命をかけているのだ。

 なんだか自分が恥ずかしくなった。

 ルッカは、自分とアナのためだけに動いてた。
 
 ぼくも同じようなものだよ。自分とエイミーのことだけでせいいっぱいだった。

 白銀のルッカも、心のうちで驚いていた。

 では、この紅の月の世界にいるルッカは、どうなのだろう?

 そんな疑問もあるが、彼は、少なくともこの洞窟内には、いないようだった。

「リーダーの元へ案内しよう」

 ミゲルを先頭に、ルッカは四人に連れられて洞窟を奥まで進んだ。

 自然の穴ぐらを利用して、いくつかの住まいや倉庫ができていた。

 戦闘員風の男女や、非戦闘員と思われる老人や子供たちとすれ違った。

 彼らは、不安げな視線を、ルッカとエイミーに注いでいた。

 一番奥の部屋で、リーダーと呼ばれる男は、地図と書物を開いていた。

「リーダー」

 ミゲルが一礼すると、皆も習った。

 ルッカとエイミーも遅れて頭を下げた。

 ミゲルが、二人のことを説明した。

「なるほど」

 リーダーは、がっしりとした体格で、口髭を生やしていた。

 体つきは戦士そのものだが、学者めいた雰囲気もある。

 ルッカは、どこかで見たことがあると思った。

「それは、災難だったな。わたしはイシドラという。この自由軍では、リーダーなどと呼ばれているが、本来は研究者だ」

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