不死鳥の恋よ、安らかに眠れ
魔のルッカの告白
「今夜は満月だから、外に出てはダメよ」
そうアナに忠告された。
蒼の月の世界でも、もうすぐ満月の祝祭が行われようとしていた。
「この国では、満月になると、男たちは凶暴になるの。紅の月が彼らを狂わす。女たちは、逃げるか、戦うか、諦めるしかない」
屋敷の扉は厳重に閉められた。
明るいうちに、窓にも板戸が取り付けられる。
アナとエイミーは、虎に守られて、眠る。
その日の夜になった。
魔のルッカは、自分のいた世界について、ルッカに語った。
白銀の月の世界。
自然が豊かで、人工物のない世界だという。
人間の肉体すらない世界。
「肉体がない?」
「人間は、君らの世界で言うところの、魂みたいな存在だった」
そして、風のように、世界を漂っていた。
「目には見えないのか」
「体がないから、目もないけど、お互いの存在はわかるし、心を通わすこともできるよ」
ルッカには想像できなかった。
人間の姿のない、自然だけの世界。
風が吹き、魂たちが語り合っている。
木々や湖や草花の間で。
夜になれば、白銀の月に照らされて。
「ぼくは、エイミーと恋をした」
「彼女にも体はないんだよな?」
「もちろん。ぼくらは心で、通じ合っていた。二人で寄り添って、毎日世界を浮遊していた。でもあるとき、他のものたちによって、エイミーは連れ去られてしまった」
「他のものたち……」
「白銀の月の世界には、空を突き刺すような大樹がそびえていて、みなから宮殿と呼ばれていた。宮殿の枝の上で、眠るものが多かった。アナもそのうちの一人だよ。彼女は歌姫だった」
ルッカはアナのことをもっと聞きたかったが、話に水差しそうだったので、あえて何も言わなかった。
「宮殿の上方に、リーグシャーの使いと呼ばれるものたちがいたんだ。エイミーは、彼らに連れ去られた」
エイミーを取り返しに行く途中で、呪雨に降られたという。
魔のルッカは、蒼の月の世界に転移していた。
しばらく世界を風のように浮遊していたが、あるとき、魔封の術を使うものに出会った。
彼によって、水晶の中に捕らえられ、封印の部屋に閉じ込められた。
「魔封……イシドラ?」
「いや、別のものだよ。戦士ではなくて、黒いフードに身を包んだ小柄な人物だった。もしかたら女性かもしれない……」
そして、蒼の月の世界のルッカに出会い、二人は一人になった。
「なあ」
「ん?」
「これから、どうする?」
紅の月の世界のアナに出会うことができた。
魔のルッカも、偶然だが、エイミーと出会うことができた。
当面の目的は達成したともいえる。
しかし、所詮、ルッカたちは別世界の人間だった。
このまま、この世界のアナたちと過ごすべきなのか、それともそれぞれの世界に帰るべきなのか。
二人とも、すぐにその答えを出すことはできなかった。
そうアナに忠告された。
蒼の月の世界でも、もうすぐ満月の祝祭が行われようとしていた。
「この国では、満月になると、男たちは凶暴になるの。紅の月が彼らを狂わす。女たちは、逃げるか、戦うか、諦めるしかない」
屋敷の扉は厳重に閉められた。
明るいうちに、窓にも板戸が取り付けられる。
アナとエイミーは、虎に守られて、眠る。
その日の夜になった。
魔のルッカは、自分のいた世界について、ルッカに語った。
白銀の月の世界。
自然が豊かで、人工物のない世界だという。
人間の肉体すらない世界。
「肉体がない?」
「人間は、君らの世界で言うところの、魂みたいな存在だった」
そして、風のように、世界を漂っていた。
「目には見えないのか」
「体がないから、目もないけど、お互いの存在はわかるし、心を通わすこともできるよ」
ルッカには想像できなかった。
人間の姿のない、自然だけの世界。
風が吹き、魂たちが語り合っている。
木々や湖や草花の間で。
夜になれば、白銀の月に照らされて。
「ぼくは、エイミーと恋をした」
「彼女にも体はないんだよな?」
「もちろん。ぼくらは心で、通じ合っていた。二人で寄り添って、毎日世界を浮遊していた。でもあるとき、他のものたちによって、エイミーは連れ去られてしまった」
「他のものたち……」
「白銀の月の世界には、空を突き刺すような大樹がそびえていて、みなから宮殿と呼ばれていた。宮殿の枝の上で、眠るものが多かった。アナもそのうちの一人だよ。彼女は歌姫だった」
ルッカはアナのことをもっと聞きたかったが、話に水差しそうだったので、あえて何も言わなかった。
「宮殿の上方に、リーグシャーの使いと呼ばれるものたちがいたんだ。エイミーは、彼らに連れ去られた」
エイミーを取り返しに行く途中で、呪雨に降られたという。
魔のルッカは、蒼の月の世界に転移していた。
しばらく世界を風のように浮遊していたが、あるとき、魔封の術を使うものに出会った。
彼によって、水晶の中に捕らえられ、封印の部屋に閉じ込められた。
「魔封……イシドラ?」
「いや、別のものだよ。戦士ではなくて、黒いフードに身を包んだ小柄な人物だった。もしかたら女性かもしれない……」
そして、蒼の月の世界のルッカに出会い、二人は一人になった。
「なあ」
「ん?」
「これから、どうする?」
紅の月の世界のアナに出会うことができた。
魔のルッカも、偶然だが、エイミーと出会うことができた。
当面の目的は達成したともいえる。
しかし、所詮、ルッカたちは別世界の人間だった。
このまま、この世界のアナたちと過ごすべきなのか、それともそれぞれの世界に帰るべきなのか。
二人とも、すぐにその答えを出すことはできなかった。
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