不死鳥の恋よ、安らかに眠れ
ルッカ二人
「何で、月が赤いんだ……」
「あれが、この世界の月だ」
「みんなは無事なのか?」
「君の世界、つまり蒼い月の世界のみんなのことだろうけど、さっき言ったように、呪雨に打たれたものは、魔を取り込んでいたものを除いて消滅した。不完全なままで、終わってしまった」
「お前のいうことは、難しいよ。オレのくせに」
紅の月明かりに照らされて、一つの体で、二人のルッカが会話をしていた。
「たしかに難しかったね……まあ、いいさ。いずれ、君にも理解できるだろう」
ルッカは周りを見回した。
見慣れた丘のようで、ところどころ違っていた。
草や木々の生え方、石や土の質。
蒼の世界より、草木は茂り方が雑多で、石ころのも大きく、ゴツゴツしている。
何より、紅い月に照らされて、全体が赤みがかっていた。
「お前は、この世界を知っているのか?」
ルッカは、魔のルッカに尋ねた。
「いいや。ぼくもこの世界に来るのは初めてだ。君と一緒で何も知らない。ただ、月の色が違う世界があることは、知っていた」
「それなら、オレも……」
ルッカは、神話を思い出そうとした。
しかし、ユウと違って、教会でちゃんと話しを聞いていなかった。
だから、うろ覚えだ。
たしか、神話では、女神ノーラは三匹の聖獣に分かれた。
そして、そのあと、世界も三つに分かれた。
ここは、そのうちの一つということか。
紅の月は、紅の獅子バルティアンの世界だという。
ルッカは、頭の中で考えていただけだったが、魔のルッカには伝わっていた。
「ぼくの世界にも、同じ神話が伝わっているよ。ぼくは、蒼の世界に来てから、しばらくは魔となって放浪していた。それで、君の世界のことも少しは知っているんだ」
「お前は、どこから来たんだ?」
「ぼくの世界の月は、白銀だった」
「白銀の鷹、リーグシャーの世界……」
それも、三つに分かれた世界の一つ。
「そうだよ。ぼくの世界でも呪雨が降った。それに打たれたぼくは、蒼の月の世界に転移した」
魔のルッカの声はうなだれていた。
ぼくは、元の世界に戻りたかった。
言葉には出していなかったが、魔の気持ちも、ルッカには理解できた。
「ぼくの世界にも、アナはいたよ。君たちほど親しくはなかったけど。宮殿の歌姫として有名だった。だから、この世界にもいるはずだよ」
「アナがいる……」
そう思うと、不思議と力が湧いてきた。
ふたたびアナと出会えるなら、それで充分な気がしてきた。
「ただし、この世界のアナは、君の知ってる彼女ではない。そのことは覚悟しておいた方がいい」
やがて紅の月が湖に沈み、陽が昇った。
どうやら、太陽の姿形は同じようだ。
空も青く、雲も白かった。
しかし、空気の匂いや温度は、ルッカの住んでいた世界と違っていた。
どこがどうかとは、うまくは説明できない。
しかし、あきらかにここは別世界だ。
自分が育ったカイゼルの家が近くにあるはずだった。
菜の花茶店や、ユウやグレンの家もここからだと近い。
のぞいてみたい気もしたが、ルッカは、アナに会うことを優先した。
朝日を浴びて、丘を駆け下りた。
「あれが、この世界の月だ」
「みんなは無事なのか?」
「君の世界、つまり蒼い月の世界のみんなのことだろうけど、さっき言ったように、呪雨に打たれたものは、魔を取り込んでいたものを除いて消滅した。不完全なままで、終わってしまった」
「お前のいうことは、難しいよ。オレのくせに」
紅の月明かりに照らされて、一つの体で、二人のルッカが会話をしていた。
「たしかに難しかったね……まあ、いいさ。いずれ、君にも理解できるだろう」
ルッカは周りを見回した。
見慣れた丘のようで、ところどころ違っていた。
草や木々の生え方、石や土の質。
蒼の世界より、草木は茂り方が雑多で、石ころのも大きく、ゴツゴツしている。
何より、紅い月に照らされて、全体が赤みがかっていた。
「お前は、この世界を知っているのか?」
ルッカは、魔のルッカに尋ねた。
「いいや。ぼくもこの世界に来るのは初めてだ。君と一緒で何も知らない。ただ、月の色が違う世界があることは、知っていた」
「それなら、オレも……」
ルッカは、神話を思い出そうとした。
しかし、ユウと違って、教会でちゃんと話しを聞いていなかった。
だから、うろ覚えだ。
たしか、神話では、女神ノーラは三匹の聖獣に分かれた。
そして、そのあと、世界も三つに分かれた。
ここは、そのうちの一つということか。
紅の月は、紅の獅子バルティアンの世界だという。
ルッカは、頭の中で考えていただけだったが、魔のルッカには伝わっていた。
「ぼくの世界にも、同じ神話が伝わっているよ。ぼくは、蒼の世界に来てから、しばらくは魔となって放浪していた。それで、君の世界のことも少しは知っているんだ」
「お前は、どこから来たんだ?」
「ぼくの世界の月は、白銀だった」
「白銀の鷹、リーグシャーの世界……」
それも、三つに分かれた世界の一つ。
「そうだよ。ぼくの世界でも呪雨が降った。それに打たれたぼくは、蒼の月の世界に転移した」
魔のルッカの声はうなだれていた。
ぼくは、元の世界に戻りたかった。
言葉には出していなかったが、魔の気持ちも、ルッカには理解できた。
「ぼくの世界にも、アナはいたよ。君たちほど親しくはなかったけど。宮殿の歌姫として有名だった。だから、この世界にもいるはずだよ」
「アナがいる……」
そう思うと、不思議と力が湧いてきた。
ふたたびアナと出会えるなら、それで充分な気がしてきた。
「ただし、この世界のアナは、君の知ってる彼女ではない。そのことは覚悟しておいた方がいい」
やがて紅の月が湖に沈み、陽が昇った。
どうやら、太陽の姿形は同じようだ。
空も青く、雲も白かった。
しかし、空気の匂いや温度は、ルッカの住んでいた世界と違っていた。
どこがどうかとは、うまくは説明できない。
しかし、あきらかにここは別世界だ。
自分が育ったカイゼルの家が近くにあるはずだった。
菜の花茶店や、ユウやグレンの家もここからだと近い。
のぞいてみたい気もしたが、ルッカは、アナに会うことを優先した。
朝日を浴びて、丘を駆け下りた。
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