不死鳥の恋よ、安らかに眠れ

ノベルバユーザー304215

教皇と聖戦士

「無様なものだな」

 馬上から、ゼウシスは言った。

 蒼い視線は、いつも以上に冷淡な色をして、ハーメルンに向けられた。

 ハーメルンは、無言でグレンにとどめを刺した剣を抜いた。

「賊の仲間の一人を討ち取りました。次は、蒼の神玉を取り返して見せます」

 ハーメルンは訴えた。

 周りには、騎乗した聖戦士たちが集まってきた。

「そうか。しかしそれは、聖戦士アイデンのおかげであると思うがな」

 ゼウシスを背中から抱えるように、長身の男が同じ馬に乗っていた。

 背には弓と矢を抱えている。

 赤い羽根のついた矢た。

 グレンの肩を貫いた最初の一撃を放ったのはこの男だろう。

 短めの茶髪で、爽やかさのある美青年だった。

 タイプは違うが、ハーメルンに負けぬほどの端正な顔立ちだ。

 ゼウシスは、聖戦士アイデンに身を寄せていた。

「賊は、今夜のうちに、聖戦士全員で捕らえる。一緒に来るがいい」

 ゼウシスは、間をおかずに続けた。

「が、ハーメルンよ、お主には今回の失態の責任を取ってもらわねばならぬ。明日にでも、聖戦士を辞してもらおう」

 蒼い視線は、まるで石ころでも見るようだった。

 ハーメルンは、何も言い返せなかった。

「聖戦士諸君、行くぞ」

「教皇!」

 ハーメルンは、呼び止めた。

 しかし、ゼウシスに視線を向けられてうつむく。

「なんだ?」

「あの、私にも馬を……」

 ゼウシスは、聖戦士イフテリオスに目を向けた。

 イフテリオスが、ハーメルンに手を差し伸べる。

「乗れ」

 ハーメルンは、イフテリオスの後ろに乗った。

 十二人になった聖戦士と教皇は、夜の森へ向かう。

 その最後尾にいた魔封のイシドラは、グレンの死体の前で、一度立ち止まった。

 生きていないのは、明らかだった。

 わざわざ馬を降りて確認するまでもなかった。

「まだ若いというのに、馬鹿なことをしたな。一人であのハーメルンを追い込んだのだ。将来は有望な剣士になったであろうに」

 イシドラは、そう独り言を呟くと、教皇らのあとを追った。

 




 

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