不死鳥の恋よ、安らかに眠れ
出口
封印の部屋に入ると、扉に耳を当てて、外の様子を伺う。
まだこちらの通路には来ていないようだ。
「なんだお前ら」
すると、部屋の中から人の声がした。
二人は驚いて振り向いた。
ルッカは、アナを自分の後ろへ隠す。
背は低いが、筋肉質な男がいた。
垂れ目で髭面で、どこか朝頼りなさげな面立ちだが、聖印の入った甲冑をまとっていた。
ただの兵士ではなさそうだ。
「魔封のイシドラ様……」
アナが、小声でつぶやいた。
「聖戦士の一人よ。魔について詳しいお方」
耳元で、アナが簡単に説明してくれた。
相手は、聖戦士の一人。
どうやって、この場を乗り切るべきか。
「許可なく入れる場所ではないぞ」
「あなたこそ、こ、ここは教皇しか入れない部屋のはず」
「なに、わしは勝手に、魔封の品を物色に来ただけさ。お前ら、どうせ誰も来ないから、ここでイチャつこうとしてただけだろ? 見逃してやるから、わしのことも黙ってろ」
「わ、わかったよ」
「わかったら、さっさと出て行け」
といっても、他に逃げ場はない。
今は、簡単に出ていけなかった。
話を引き延ばす必要がある。
「その前に教えてよ」
「なんだ?」
「魔ってホントにいるのかい? 魔封って、どうするんだ?」
敬語を忘れてしまっていたが、イシドラは気にしてなかった。
「魔はいる。そして、魔封もあるさ」
イシドラは、骨董品の中から、ガラス玉を一つとった。
「この中に封じ込める」
「封じ込める……」
「魔は、別世界の生き物だ。それを捕まえて研究することで、世界の謎も解ける」
「世界の謎?」
「そうだ。この世界は、何かが欠けている。それが何なのか、魔は知ってる。わしの家には、たくさんの魔が入った水晶があるぞ」
「魔が、口から入ったりするとどうなる?」
「なに?」
イシドラは、床の上に、粉々に割れたガラスの破片を見つけた。
先ほど、ルッカが割った水晶の破片だ。
「お前、食ったのか」
ルッカは答えなかったが、イシドラはその表情から理解した。
「なにもないこともあれば、憑依されることもあるぞ」
「憑依? 頭の中で声が聞こえたり?」
「そうだ。しかし案ずるな。普通はすぐに出ていくはずだ」
ルッカに入ってきた魔は、出て行かなかった。
しばらく休むと言って、それきり黙り込んだ。
お、戻ってきたのか。
このおっさんの相手はするな。
急に、心の声がした。
「起きたのか?」
アナとイシドラは、不思議そうな顔をした。
奥に秘密の出口がある。
調べてみろ。
ルッカは声に従って、部屋の奥を調べた。
イシドラは、黙ってルッカの行動を見守っていた。
ブロックの一つを外すと、階段が下っていた。
「アナ! ここ!」
アナは呼ばれて、小走りで寄ってきた。
「これは……秘密の階段?」
「そうみたいだ。ここから、出てみよう」
「うん」
イシドラには、ルッカの行動はどのように見えただろう。
しかし、気にする時間はなかった。
「ぼくらはここから出て行くよ」
「そうか」
イシドラは、封印の部屋の品々を物色し始めた。
「くれぐれも、わしがここにいたことは内緒だぞ」
ルッカは笑顔で答えて、階段を降りていった。
まだこちらの通路には来ていないようだ。
「なんだお前ら」
すると、部屋の中から人の声がした。
二人は驚いて振り向いた。
ルッカは、アナを自分の後ろへ隠す。
背は低いが、筋肉質な男がいた。
垂れ目で髭面で、どこか朝頼りなさげな面立ちだが、聖印の入った甲冑をまとっていた。
ただの兵士ではなさそうだ。
「魔封のイシドラ様……」
アナが、小声でつぶやいた。
「聖戦士の一人よ。魔について詳しいお方」
耳元で、アナが簡単に説明してくれた。
相手は、聖戦士の一人。
どうやって、この場を乗り切るべきか。
「許可なく入れる場所ではないぞ」
「あなたこそ、こ、ここは教皇しか入れない部屋のはず」
「なに、わしは勝手に、魔封の品を物色に来ただけさ。お前ら、どうせ誰も来ないから、ここでイチャつこうとしてただけだろ? 見逃してやるから、わしのことも黙ってろ」
「わ、わかったよ」
「わかったら、さっさと出て行け」
といっても、他に逃げ場はない。
今は、簡単に出ていけなかった。
話を引き延ばす必要がある。
「その前に教えてよ」
「なんだ?」
「魔ってホントにいるのかい? 魔封って、どうするんだ?」
敬語を忘れてしまっていたが、イシドラは気にしてなかった。
「魔はいる。そして、魔封もあるさ」
イシドラは、骨董品の中から、ガラス玉を一つとった。
「この中に封じ込める」
「封じ込める……」
「魔は、別世界の生き物だ。それを捕まえて研究することで、世界の謎も解ける」
「世界の謎?」
「そうだ。この世界は、何かが欠けている。それが何なのか、魔は知ってる。わしの家には、たくさんの魔が入った水晶があるぞ」
「魔が、口から入ったりするとどうなる?」
「なに?」
イシドラは、床の上に、粉々に割れたガラスの破片を見つけた。
先ほど、ルッカが割った水晶の破片だ。
「お前、食ったのか」
ルッカは答えなかったが、イシドラはその表情から理解した。
「なにもないこともあれば、憑依されることもあるぞ」
「憑依? 頭の中で声が聞こえたり?」
「そうだ。しかし案ずるな。普通はすぐに出ていくはずだ」
ルッカに入ってきた魔は、出て行かなかった。
しばらく休むと言って、それきり黙り込んだ。
お、戻ってきたのか。
このおっさんの相手はするな。
急に、心の声がした。
「起きたのか?」
アナとイシドラは、不思議そうな顔をした。
奥に秘密の出口がある。
調べてみろ。
ルッカは声に従って、部屋の奥を調べた。
イシドラは、黙ってルッカの行動を見守っていた。
ブロックの一つを外すと、階段が下っていた。
「アナ! ここ!」
アナは呼ばれて、小走りで寄ってきた。
「これは……秘密の階段?」
「そうみたいだ。ここから、出てみよう」
「うん」
イシドラには、ルッカの行動はどのように見えただろう。
しかし、気にする時間はなかった。
「ぼくらはここから出て行くよ」
「そうか」
イシドラは、封印の部屋の品々を物色し始めた。
「くれぐれも、わしがここにいたことは内緒だぞ」
ルッカは笑顔で答えて、階段を降りていった。
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