不死鳥の恋よ、安らかに眠れ

ノベルバユーザー304215

疑心暗鬼

「ハーメルン様」

 私は、ハーメルンの部屋に来ていた。

 部屋の主は、リラックスした状態で、ベッドの上に横たわっている。

「ハーメルン様……」

 私は、ハーメルンの腹部に後ろ向きにまたがり、顔を埋めていた。

 舌で、ハーメルンの内腿を濡らしていく。

「今日はやけに積極的だな」

「はあ、はあ……ハーメルン様の教育のおかげでございます……ああん!」

 ハーメルンは、気の向くままに、目の前に開かれた私の秘部を弄んだ。

 愛液が絡み付いた中指を舐めて、さらに強く押し込む。

「あ!……ああ……あ、あああっ!」

「止めるな」

「は、はい……ああっ」

 私は、いつもより大きな声で喘いだ。

 今夜は、自らハーメルンの元を訪れた。

 ルッカが、蒼の神玉を盗みに入る夜だ。

 ハーメルンに、ルッカの邪魔をさせたくなかった。

「ハーメルンのこれが欲しいです…」

 うっとりを瞳を潤ませて、振り返る。

 太陽の貴公子の視線は冷たい。

「そうか。では、勃たせてみろ。最高の刺激でな」

「はい……」

 先ほどから、懸命に刺激を与えていたが、ハーメルンの肉体は鈍かった。

 それでも、なんとかしようと、私は色々なことを試してみる。

 舌を使い、指を絡め、胸を擦り付けた。

 しかし、うまくいかない。

「なぜ、勃たぬかわかるか?」

「私が、未熟だから、でしょうか……?」

「それだけではない」

 ハーメルンは、唐突に私の体を持ち上げた。

 そしてそのまま、床に放り投げた。

「きゃあああ!」

 激しく、肩から落ちる。

 ハーメルンは、ベッドから立ち上がった。

「一つは、お前がさほど美しくないことに気がついた。まるで、まがい物の宝石だ」

 私は、肩を押さえながら顔を上げた。

 なぜか、憎んでいるはずのハーメルンにそんなことを言われて、心が傷ついた。

「もう一つは」

 ハーメルンは、剣を取る。

「蒼の部屋の、鍵のスペアが足りない」

 ぎくりとした。

「心当たりはないか?」

 ハーメルンの視線が、針のように鋭くなる。

「な、なんのことでしょうか?」

 私は、肩が痛いそぶりをして、動揺を隠した。

「この部屋に入れたのは、お前一人だけだ。だったら、答えは一つしかないだろう」

「何を言っているか、わかりません」

 私は、後ろに下がった。

「アナ=クレイブソルトよ」

 ハーメルンが、一歩前に出た。

「今なら、正直に話せば、一息に殺してやろう。しかし、もしもいつまでもシラを切るつもりなら」

 ハーメルンの唇が吊り上がる。

「腕を斬り、足を斬り、舌を抜き、それでも死ぬことは許さない。生き地獄を味わってもらう。人としてではなく、家畜として、発情期ばかりのそろった犬小屋で暮らしてもらう」

 アナは絶句した。

 ハーメルンの股間は、自分の言葉に興奮して、今頃そそり立っていた。

 彼は、本気でそうするつもりだ。

 想像して、歯が震えた。

 しかし、すぐに白状してしまえば、その分、ルッカの身も危なくなる。

「わ、私ではありません。ハーメルン様……」

「そうか、その方がオレも楽しめるというものだ」

「やめて下さい、お願いします、何でもします」

「もういい。別に鍵など付け替えれば済むことだ」

 ハーメルンは、また一歩前に出た。

「あなたは」

 急速に、私の中に、怒りが芽生えた。

「あなたは私を汚し、父を殺した」

 ハーメルンが立ち止まる。

 どうなるか考えても仕方がなかった。

 喋れなくなるのなら、今のうちに言わなくてはと思った。

「その報いは、必ず受けてもらうわ」

「魔にでもなって、オレの悪行を言いふらすか?」

「あなたには、天罰が下る」

「よくわかった。最初は、その舌を抜くこととしよう」

 ハーメルンは、今度は二歩近づいた。

 退いたが、私の背後は壁だった。

「アナ=クレイブソルト。これからは違う遊びで楽しませてもらう」

 ルッカ。

 私は、目を閉じて、彼の幸運を念じた。


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