不死鳥の恋よ、安らかに眠れ

ノベルバユーザー304215

蒼の神玉

 ルッカは、封印の部屋の扉に耳をあてる。

 兵士は過ぎ去った様子だった。

 そっと、扉を開けて、前後を確認すると、すばやく蒼の神玉の部屋へと戻った。

 アンドレの握り飯を食った兵士が倒れたままだ。

 大きないびきをかいているから、死んでいるわけではないようだ。

 少しほっとして、ルッカは部屋の鍵を取り出した。

 アナから受け取った鍵は、鍵穴にぴったりと収まった。

 くるりと回すと、扉が開いた。

 ルッカは滑り込むように中に入る。

 大きな広間だった。

 祝祭で使われる祭具が並べられている。

 聖獣ライアロウの形をした神輿や、聖印の刺繍された幟旗、行進時にまとう特別な聖衣などがある。

 ルッカは、一番奥にある狼の形をした置物の前に向かった。

 狼はたてがみをなびかせ、吠えるように口を開いている。

 その牙の間に、蒼い水晶が収まっていた。

 内側には海の底のような深みがあり、ずっと見ていたい誘惑に駆られた。

 青黒い暗雲が、水晶の中で渦巻いているようにも見えた。

 ルッカは思わず身震いする。

 それほど敬虔な方ではなかったが、聖遺物がかもし出す、この世ならざる雰囲気に呑まれた。

 蒼の神玉。

 これに間違いない。

 アナとの約束だ。

 例え天罰がくだろうとも、必ず持って帰る。

 ルッカは、工具を取り出して、慎重に水晶を取り外した。

 そして、腰の巾着袋にしまう。

「よし」

 あとは、脱出するだけだった。

 兵士はまだルッカのことを追っているようだ。

 彼と遭遇しないように、帰りは別のルートを進んだ。

 ルッカは、大聖堂の見取り図を思い出す。

 ミゲルが、帰りのルートで、太陽の貴公子ハーメルンの部屋の前を通ることを気にしていた。

 おそらく自室で休んでいるだろうから、サッと通り過ぎるだけでいいはずだ。

 それに万一見つかっても、逃げればいいだけだ。

 警備兵同様、戦う必要はない。

 ルッカの足なら、例え聖戦士といえど追いつけまい。

 しかし、予定通りとはいかなかった。

 ハーメルンの部屋の前を通るとき、ルッカは聞き覚えのある女性の声を耳にした。

 なんで?と思った。

 それは、アナの声によく似ていた。

 ルッカは、一度通り過ぎたが、戻って、扉に耳を当てた。

 あなたには、天罰が下る……。

 そう聞こえた。

 間違いない。

 アナの声だ。

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