不死鳥の恋よ、安らかに眠れ

ノベルバユーザー304215

蜜月

 ゼウシスは、自室に戻ると、狼の冠を外して、大きく息を吐いた。

「あー、堅苦しいったら、ありゃしない」

 大きな金と宝石で彩れた、椅子に座る。

「ハーメルン、こっちへ来て」

 そのあと、豪奢なドレスも部屋着のように脱ぎ捨てていた。

 着ているのは、下着だけだ。

 ハーメルンは、目を伏せる。

「お互い新人同士、仲良くしましょう」

 ゼウシスは微笑んだ。

 こうしていると、普通の少女だった。

 いや、普通よりはかなり秀でた美貌をしている。

 白い肌に蒼い目。

 聖歌隊の少女と似ているな、とハーメルンは思った。

 いや、聖歌隊の少女が教皇に似ていたから、オレは獲物に選んだのか。

「何を考えているの?」

 ゼウシスは、手招いた。

「こちらへ来なさいよ」

「しかし……」

「教皇の言うことに逆らうの?」

「わかりました」

 ゼウシスは、目の前にひざまずくハーメルンのアゴに手を当てて、くいと持ち上げる。

「本当に、きれいな顔をしている」

 本心から、そう言っているようだ。

「一体、これまで何人の女性をたぶらかしてきたの?」

 ゼウシスは、顔を突き出してハーメルンを見た。

 ハーメルンは、真意を探るように見つめ返す。

 あえて、何も返事をしなかった。

「まあ、いいわ」

 ゼウシスは、ハーメルンの頬を撫でた。

「最近、ストレスが溜まって仕方ないの。貴方、なんとかしてくれない?」

「なんとか、とは?」

「何人も抱いてきたんでしょ?  女の悦ばせ方は、熟知しているんじゃないの?」

 これは、とハーメルンは思った。

 この少女は前教皇の隠し子と噂を聞いたが、もしや愛人であったもしれない。

 自分と同じ人種だ。

「私ごとき、滅相もございません」

「ふーん、逆らうんだ」

「い、いえ……」

 困ったふりをしてみた。

 大した玉だが、所詮はたかが一六の小娘だ。

 扱うのはそう難しくない。

 ゼウシスの瞳は潤んでいた。

 すでに、彼女は欲している。

 ならば、ギリギリまでじらしてから、与えてやればよい。

 予想を上回る快楽に、この女はオレから離れられなくなるだろう。

 しかし、ハーメルン自身も我慢が出来なくなっていた。

 ゼウシスは、下着の中に手を入れ、自分で遊び始めている。

「ああ、あ……んっ!」

 ハーメルンの顔を見ながら、吐息をついた。

 頬は赤みがかり、舌をチロチロと出し入れしている。

 そして、誘うように、ハーメルンの身体に触れてきた。

 ハーメルンは観念した。

 しかし、まさに、自分の野生を解放しようしたそのときだった。

「教皇様」

 ドアがノックされた。

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