不死鳥の恋よ、安らかに眠れ
幼馴染みたち
アンドレに相談するために、ミゲルは直接自分の家に帰らず、菜の花茶店に寄った。
ミゲルの話を聞いたアンドレは、グレンとユウも呼ぼうと、二人を集めた。
ルッカも含めて五人は幼馴染みだ。
お互いの家は歩いていける距離にある。
「それは、本気なの」
ユウは、信じられないと言った表情だ。
「もし本気なら、どうする?」
ミゲルは三人の顔を見る。
「もちろん、やめさせようよ!」
ユウが立ち上がって、同意を求める。
しかし、ミゲルたち三人は黙ったままだった。
「あいつが、言うことを聞くとはとても思えん」
ミゲルは、頭を抱えた。
アンドレは、額に指先を押し当てて、説得の風景を想像しているようだったが、うまくいかなかったのか、首を横に振る。 
沈んだ空気の中、グレンが口を開いた。
「オレは、むしろ手伝ってもいい」
そうは言ったが、グレンにいつもの快活さはなかった。
捕まればどうなるか、みんな理解していた。
牢獄から一生出られないか、最悪、処刑もありうる。
それでも、グレンは続ける。
「ルッカが真剣なのなら、手助けしたい」
「グレン……」
ユウは、言葉を失った。
「実はオレも」
代わりにアンドレが喋った。
「青春時代の最後に、何かド派手なことをやりたかった」
ユウが、顔を引きつらせた。
「それには、もってこいのイベントだな」
ミゲルが、アンドレの顔を見る。
冗談か本気か確かめているのだ。
二人は視線をぶつかり合わせた後、同じタイミングで笑みを浮かべた。
「よし、計画を練ろう」
「あんたら、バカか! 引き止めるのが、友だちってもんだろう!」
ユウは、声を爆発させる。
菜の花茶店に来ていた他の客も、これにはさすがに驚いたようで、一瞬、店内は静まり返る。
「落ち着け」
アンドレは、周りに頭を下げていた。
ミゲルは、ユウの隣に移り、小声で説明する。
「あくまで、遊びだよ。計画を練るまで、だ。実行しても、何の得にもならないのは全員わかっているさ。ただ、あいつを納得させてやらないと」
ユウは、ミゲルの顔をじっと見ていた。
信じている表情ではない。
「私は……」
「お前は、何もしなくてもいい」
グレンも、ユウの近くに移動していた。
「ただ、普通にしておけ。ルッカとも普段通りに」
「いや、一つだけ、頼みたい」
アンドレが付け加えた。
「このことは絶対に誰にも話さないでくれ。たとえ何があっても」
ユウの顔は青ざめいた。
三人は、ルッカとともに、大聖堂から蒼の神玉を盗むつもりだ。
その決意を悟った。
ユウは、テーブルに顔を突っ伏して、ギュッと両拳を握りしめる。
「ルッカがバカなのは知っていたけど、あんたたちもこんな愚か者だったとは。あー、私は一人、仲間はずれにされた気分だよ」
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