不死鳥の恋よ、安らかに眠れ

ノベルバユーザー304215

幼馴染みたち


 アンドレに相談するために、ミゲルは直接自分の家に帰らず、菜の花茶店に寄った。

 ミゲルの話を聞いたアンドレは、グレンとユウも呼ぼうと、二人を集めた。

 ルッカも含めて五人は幼馴染みだ。

 お互いの家は歩いていける距離にある。

「それは、本気なの」

 ユウは、信じられないと言った表情だ。

「もし本気なら、どうする?」

 ミゲルは三人の顔を見る。

「もちろん、やめさせようよ!」

 ユウが立ち上がって、同意を求める。

 しかし、ミゲルたち三人は黙ったままだった。

「あいつが、言うことを聞くとはとても思えん」

 ミゲルは、頭を抱えた。

 アンドレは、額に指先を押し当てて、説得の風景を想像しているようだったが、うまくいかなかったのか、首を横に振る。 

 沈んだ空気の中、グレンが口を開いた。

「オレは、むしろ手伝ってもいい」

 そうは言ったが、グレンにいつもの快活さはなかった。

 捕まればどうなるか、みんな理解していた。

 牢獄から一生出られないか、最悪、処刑もありうる。

 それでも、グレンは続ける。

「ルッカが真剣なのなら、手助けしたい」

「グレン……」

 ユウは、言葉を失った。

「実はオレも」

 代わりにアンドレが喋った。

「青春時代の最後に、何かド派手なことをやりたかった」

 ユウが、顔を引きつらせた。

「それには、もってこいのイベントだな」

 ミゲルが、アンドレの顔を見る。

 冗談か本気か確かめているのだ。

 二人は視線をぶつかり合わせた後、同じタイミングで笑みを浮かべた。

「よし、計画を練ろう」

「あんたら、バカか! 引き止めるのが、友だちってもんだろう!」

 ユウは、声を爆発させる。

 菜の花茶店に来ていた他の客も、これにはさすがに驚いたようで、一瞬、店内は静まり返る。

「落ち着け」

 アンドレは、周りに頭を下げていた。

 ミゲルは、ユウの隣に移り、小声で説明する。

「あくまで、遊びだよ。計画を練るまで、だ。実行しても、何の得にもならないのは全員わかっているさ。ただ、あいつを納得させてやらないと」

 ユウは、ミゲルの顔をじっと見ていた。

 信じている表情ではない。

「私は……」

「お前は、何もしなくてもいい」

 グレンも、ユウの近くに移動していた。

「ただ、普通にしておけ。ルッカとも普段通りに」

「いや、一つだけ、頼みたい」

 アンドレが付け加えた。

「このことは絶対に誰にも話さないでくれ。たとえ何があっても」

 ユウの顔は青ざめいた。

 三人は、ルッカとともに、大聖堂から蒼の神玉を盗むつもりだ。

 その決意を悟った。

 ユウは、テーブルに顔を突っ伏して、ギュッと両拳を握りしめる。

「ルッカがバカなのは知っていたけど、あんたたちもこんな愚か者だったとは。あー、私は一人、仲間はずれにされた気分だよ」

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