不死鳥の恋よ、安らかに眠れ
大聖堂の見取り図
「ミゲル、例えばだが」
ルッカは、ミゲルを自分の家に呼んだ。
「なんだ折り入って」
ルッカの表情は、やけに真剣だった。
二階の、ルッカの部屋だった。
叔父のカイゼルは、出かけて留守だった。
「これを見てほしい」
ルッカは机の上に、大きめの紙を広げる。
「これは……」
ミゲルは、しばらく眺めて、それが何か理解した。
「大聖堂の見取り図だな。カイゼルさんは大工もするから、大聖堂の補修の手伝いをしたこともあるだろう。それで、こんなものを持っているのか」
「そうだ。おじさんは、大聖堂の見取り図の写しを持ってた。こっそり借りた」
「それで?」
「まず、聞きたいのは、蒼の神玉は、大聖堂のどこにあると思う?」
ミゲルは、すぐに答えずにルッカの顔を見た。
「そうだな。おそらくこの辺りだろうな」
しばらく考えてから、五階の一室を指差す。
「普段は、人目に触れる必要はないから、厳重に保管できる場所だ。しかし祝事のときは、もっと都合が良い場所に移動されるかもな」
「もうすぐ、満月の祝祭がある」
「それなら、今はこの辺りかな」
ミゲルは、今度は三階の一室を指差した。
「警備のし易さ、祝祭のときの移動を考えたらな」
「そうか」
ルッカは、三階のその部屋の位置を凝視した。
「怖い目をしているぞ」
ミゲルは、ルッカの異様な真剣さに、眉をしかめた。
ルッカは、かまわずに続けた。
「これは、あくまで、例えばの話なんだが……」
ルッカの視線は、見取り図に落とされたままで、ミゲルを見ようとしなかった。
「ミゲルなら、大聖堂からどうやって蒼の神玉を盗む?」
質問しながらも、ルッカは、自分でもそのことをじっと考え込んでいた。
ミゲルは、そんなルッカをマジマジと見た。
「本気か」
「例えばなら話だよ。遊びだと思って考えてくれないか」
ルッカは笑っていたが、瞳の奥から、ただならぬ緊張感が伝わってくる。
「本気なら、真剣に考えてくる。持ち帰らせてくれないか」
ミゲルはそう言った。
ルッカが何か問題を抱えているのは確かだ。
おそらくあの娘、アナと関係があるのだろう。
問い詰めても、きっと答えまい。
ここで結論を出すわけにはいかなかった。
「どのくらいかかる?」
「そうだな。満月の祝祭の前の日には、間に合うだろうさ」
「わかった。おじさんに見つかるとやばい。できれば、それより早く頼む」
「努力するよ」
ミゲルは、見取り図を持ち帰った。
ルッカは、ミゲルを自分の家に呼んだ。
「なんだ折り入って」
ルッカの表情は、やけに真剣だった。
二階の、ルッカの部屋だった。
叔父のカイゼルは、出かけて留守だった。
「これを見てほしい」
ルッカは机の上に、大きめの紙を広げる。
「これは……」
ミゲルは、しばらく眺めて、それが何か理解した。
「大聖堂の見取り図だな。カイゼルさんは大工もするから、大聖堂の補修の手伝いをしたこともあるだろう。それで、こんなものを持っているのか」
「そうだ。おじさんは、大聖堂の見取り図の写しを持ってた。こっそり借りた」
「それで?」
「まず、聞きたいのは、蒼の神玉は、大聖堂のどこにあると思う?」
ミゲルは、すぐに答えずにルッカの顔を見た。
「そうだな。おそらくこの辺りだろうな」
しばらく考えてから、五階の一室を指差す。
「普段は、人目に触れる必要はないから、厳重に保管できる場所だ。しかし祝事のときは、もっと都合が良い場所に移動されるかもな」
「もうすぐ、満月の祝祭がある」
「それなら、今はこの辺りかな」
ミゲルは、今度は三階の一室を指差した。
「警備のし易さ、祝祭のときの移動を考えたらな」
「そうか」
ルッカは、三階のその部屋の位置を凝視した。
「怖い目をしているぞ」
ミゲルは、ルッカの異様な真剣さに、眉をしかめた。
ルッカは、かまわずに続けた。
「これは、あくまで、例えばの話なんだが……」
ルッカの視線は、見取り図に落とされたままで、ミゲルを見ようとしなかった。
「ミゲルなら、大聖堂からどうやって蒼の神玉を盗む?」
質問しながらも、ルッカは、自分でもそのことをじっと考え込んでいた。
ミゲルは、そんなルッカをマジマジと見た。
「本気か」
「例えばなら話だよ。遊びだと思って考えてくれないか」
ルッカは笑っていたが、瞳の奥から、ただならぬ緊張感が伝わってくる。
「本気なら、真剣に考えてくる。持ち帰らせてくれないか」
ミゲルはそう言った。
ルッカが何か問題を抱えているのは確かだ。
おそらくあの娘、アナと関係があるのだろう。
問い詰めても、きっと答えまい。
ここで結論を出すわけにはいかなかった。
「どのくらいかかる?」
「そうだな。満月の祝祭の前の日には、間に合うだろうさ」
「わかった。おじさんに見つかるとやばい。できれば、それより早く頼む」
「努力するよ」
ミゲルは、見取り図を持ち帰った。
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