不死鳥の恋よ、安らかに眠れ

ノベルバユーザー304215

父への告白

「お父様」

 父、イーガン=クレイブソルトが寝室を訪れた。

 就寝前の祈りを、私と一緒に行うためだ。

 両親の、毎日の日課だった。

 必ずどちらかが、娘と共に感謝の祈りを神に捧げる。

 父は、城に使える事務官として、地位と富を得ていた。

 しかし、人柄は謙虚だった。

 幸運と自分の実力を勘違いして、怠慢になりたくない。

 さらに勤勉で、誠実。

 王からの信頼も厚いと、周りの大人たちからは聞かされている。

 そんな父を、私は誇りに思っている。

「お父様にお伝えしたいことがあります」

「どうしたんだい? そんなにかしこまって」

 私の様子に、ただ事では何かを感じ取ったようだ。

 イーガンの顔が真剣になった。

 私は、大聖堂での出来事を話した。

 太陽の貴公子ハーメルンにされた仕打ちを。

 話している途中で涙が溢れた。

 イーガンは、愕然とした表情で聞いていた。

 話し終わると、メイドと母が呼ばれた。

「これから出かけてくる。アナのことをよろしく頼む」

「どこへ?」

「大聖堂だ。奴に会って、ことの真偽を確かめてくる。いや、アナを疑っているわけではない。しかし、私も親として、一言言ってやらねば気がすまぬ」
 
 母は泣いてる私を抱きしめてくれたが、事情がわからず不安そうだった。

「アナ、父に任せておけ。必ず奴に報いを受けさせてやる。いくら聖戦士であろうと、法がお前を守ってくれる」

 父は、力強くうなずいた。

 珍しく起こっているのが、傍目にもわかった。

「お父様」

 私は涙が止まらなかった。

 父にあの出来事を語っただけで、こんなにも心が軽くなるとは。

 同時に、父に負担をかけてしまって、心苦しかった。

「心配するな。うちでも腕っぷしの強い従者を何人か連れて行く」

 しかし、それが父を見た最期となった。

 翌朝、父が連れて行った従者と共に、父はウル湖に死体として浮かんでいた。

 私は、それがハーメルンの仕業であることをすぐに了解したが、母にも誰にも伝えなかった。

 父の二の舞にらなるのは明らかだ。

 だから、私は心を閉ざした。

 大好きな歌も、心から楽しめることはなくなった。

 それでも、長い間聖歌隊を休むことは出来なかった。

 普段の生活に戻らねば、母も悲しむ。

 教会で練習していると先生から、呼ばれた。

 外へ出ると馬車に乗せられた。

 そこで待っていたのは、金髪の貴公子だ。

「久しぶりアナ」

 馬車が動き出した。

 私の体は、震えだした。

「聖歌の練習中です……戻らないと」

 声も震えていた。

 もはや、逃げられないのはわかっていた。

「大丈夫、オレから先生には言ってある」

 ハーメルンは、じっと私を見つめていた。

「少し付き合え。これから、オレの部屋に行こう。君は約束を破った。お仕置きをしないとなぁ」



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