不死鳥の恋よ、安らかに眠れ

ノベルバユーザー304215

月が昇る夜にだけ

「で、想いを伝えたんだ」

 アンドレが確認した。

「まあ、な」

 ルッカの表情は、冴えなかった。

 菜の花茶店に仲間たちが集まり、街での成果を聞いていた。

「彼女は、なんて答えたの?」

 ユウは、落ち着かない様子だ。

 結果が早く知りたいようだ。

「彼女は……」

 ルッカは、ため息を吐いた。

 今日、何度目のため息だろう?

 そのたびにルッカは想いに耽り、報告を中断した。

「もう、イライラさせるわね!」

 ユウは我慢できずに、その場を離れた。

「なにあいつ怒ってんだ?」

 ルッカは、ぽかんとして店を出て行く後ろ姿を見送った。

「ユウなりに複雑なんだろう」

 ミゲルが、やれやれというに肩をすくめる。

「?」

 ルッカは、首を捻った。

「それで?」

  アンドレが、ルッカのグラスにレモン水を注ぐ。

「彼女はなんと?」

「彼女は」

 ルッカは、レモン水を口につける

「ありがとう、とそう言ってくれた」

「おお!」

 三人は声を揃えた。

「それは、脈ありということか」

 グレンは我が事のように嬉しそうだ。

「オレの作戦通りだ」

 ミゲルが自慢げに腕を組む。

「それが、その、よくわかんないんだ」

 ルッカは続けた。

「とても嬉しいけど、あなたの気持ちには答えられない。私は、あなたと会うつもりはない……そう言われた」

「え?」

 三人は、また声を揃える。

「それは、振られた、ということか?」

 アンドレは、あまり減っていないグラスにレモン水を追加する。

 ミゲルは顔を覆った。

「仕方ない。所詮、身分の違う恋なのだ。身分が違えば、たとえお互いに愛し合っていたとしても、破局してしまうものなんだ。本によると、だいたいそんな結末だ」

「もう、会えないということか」

 グレンが心配そうに、ルッカに尋ねる。

「それが、そうでもないんだ」

 ルッカの表情は複雑だった。

 ルッカは、あきらめずに、自分の想いをアナに伝え続けたそうだ。

「まさに、猛烈なアタックあるのみだったんだ」

 自分の伝えた作戦だったが、バカのひとつ覚えでそれを実行したルッカに、ミゲルは感心していた。

「そうしたら、彼女はこう言ってくれた」

 太陽の下で、あなたに会うつもりはありません。

 しかし、今夜のようにきれいな月が出ている夜ならば、こうして会いに来て下さい。

 その夜だけ、私はあなたに心を許しましょう。

 一同は沈黙した。

「どういうことだろう?」

 誰も答えられなかった。

 すると、店を出たはずのユウが現れた。

「それは、きっとあれね」

「ユウ、どこにいたんだよ? 聞いてたのかよ」

 ミゲルが呆れている。

「どういう意味が込められているのか、わかるのか?」

 そう聞いたアンドレに、ユウは自信たっぷりにうなずいた。

「アナには、他に好きな人がいるわね。しかも、相手はアナのことをなんとも思っていない。アナは、叶わぬ恋をしているのよ!」






 

コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品