不死鳥の恋よ、安らかに眠れ
運命の女性
「昨日、聖歌隊の紹介をしたのは、薔薇の蕾のソプラノリーダーだよ」
アンドレはもったいぶって告げた。
「名前をアナ=クレイブソルト」
父親は、城に勤める事務官。
母親は、良家の出の専業主婦。
街の中心に部屋がいくつもある館を構え、両手で足りないほどのメイドを雇っているという。
「本物のお嬢様だな」
ミゲルは珍しく驚いた顔をした。
「いいとこのお嬢さんとは予想してたが、クレイブソルト家といえば、大物だよ」
「そうなのか」
ルッカは関係ないというふうに腕を組んでいる。
「残念だったな」
ユウはふざけるように、ルッカの背中を叩いた。
「何が残念だ?」
ルッカは、意味がわからないと首をひねり、ユウに振り向いた。
「お前とは不釣り合いだ。雲と泥の差だ。今度こそ、あきらめろ」
「誰かあきらめるか。やっと見つけたんだ」
ルッカの目は燃えていた。
「運命の女性に巡り会えたんだ。あきらめるわけない」
「運命の女性?」
全員が、あっけに取られた。
「そうだ。オレには何かが欠けているとずっと思っていた。それがなにか、彼女と出会ったことでわかったような気がする」
「バカだとは思っていたが、そこまでだとは……」
ユウは頭を抱えた。
「で、どうするんだ?」
グレンだけは、楽しそうだ。
「何度でも、力の限り、アタックするしかない」
そう、アドバイスをしたのは、ミゲルだった。
「良いところのお嬢さんは、真っ直ぐなひたむきさに弱い」
「そうなのか、ミゲル詳しいな」
ルッカの言葉に、ミゲルは顔を伏せる。
「かもしれない。本で読んだ。文学の世界では、だいたいそうだ」
「ふーん、で、結局どうするのさ?」
ユウのぶっきら棒な質問に、ルッカはうーんと考え込む。
「練習が終わるのを待つ」
「一人でか? 怪しいだけだぞ」
「彼女に会って、この想いを告げる」
「いきなりか」
「運命の女性だからな」
今度は、ルッカ以外の四人が考え込んだ。
「これほど真剣なルッカを見るのは初めてだ。オレは応援する」
グレンが口を開いた。
「まあ、そんなにまで言うなら、当たって砕けろだ」
アンドレも微笑んだ。
「砕けない」
ルッカの反論は無視されて、ミゲルが言葉を継いだ。
「面白そうだ。見物させてもらおう。どうせ、成就しない恋だ。なあユウ」
「ま、まあね」
ユウも、しぶしぶと言った様子でうなずいた。
こうして次の日から、ルッカの猛烈な恋のアタックが始まった。
アンドレはもったいぶって告げた。
「名前をアナ=クレイブソルト」
父親は、城に勤める事務官。
母親は、良家の出の専業主婦。
街の中心に部屋がいくつもある館を構え、両手で足りないほどのメイドを雇っているという。
「本物のお嬢様だな」
ミゲルは珍しく驚いた顔をした。
「いいとこのお嬢さんとは予想してたが、クレイブソルト家といえば、大物だよ」
「そうなのか」
ルッカは関係ないというふうに腕を組んでいる。
「残念だったな」
ユウはふざけるように、ルッカの背中を叩いた。
「何が残念だ?」
ルッカは、意味がわからないと首をひねり、ユウに振り向いた。
「お前とは不釣り合いだ。雲と泥の差だ。今度こそ、あきらめろ」
「誰かあきらめるか。やっと見つけたんだ」
ルッカの目は燃えていた。
「運命の女性に巡り会えたんだ。あきらめるわけない」
「運命の女性?」
全員が、あっけに取られた。
「そうだ。オレには何かが欠けているとずっと思っていた。それがなにか、彼女と出会ったことでわかったような気がする」
「バカだとは思っていたが、そこまでだとは……」
ユウは頭を抱えた。
「で、どうするんだ?」
グレンだけは、楽しそうだ。
「何度でも、力の限り、アタックするしかない」
そう、アドバイスをしたのは、ミゲルだった。
「良いところのお嬢さんは、真っ直ぐなひたむきさに弱い」
「そうなのか、ミゲル詳しいな」
ルッカの言葉に、ミゲルは顔を伏せる。
「かもしれない。本で読んだ。文学の世界では、だいたいそうだ」
「ふーん、で、結局どうするのさ?」
ユウのぶっきら棒な質問に、ルッカはうーんと考え込む。
「練習が終わるのを待つ」
「一人でか? 怪しいだけだぞ」
「彼女に会って、この想いを告げる」
「いきなりか」
「運命の女性だからな」
今度は、ルッカ以外の四人が考え込んだ。
「これほど真剣なルッカを見るのは初めてだ。オレは応援する」
グレンが口を開いた。
「まあ、そんなにまで言うなら、当たって砕けろだ」
アンドレも微笑んだ。
「砕けない」
ルッカの反論は無視されて、ミゲルが言葉を継いだ。
「面白そうだ。見物させてもらおう。どうせ、成就しない恋だ。なあユウ」
「ま、まあね」
ユウも、しぶしぶと言った様子でうなずいた。
こうして次の日から、ルッカの猛烈な恋のアタックが始まった。
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