不死鳥の恋よ、安らかに眠れ
菜の花茶店②
「歌が上手いなら、聖歌隊に入っている可能性がある」
ルッカたち四人はテーブルを囲んでいたが、グレンは一人だけ、座らずに立っていた。
体格も大きく筋肉質だ。
常に傍らに木剣を持ち、自分の体の一部のように片時も離さない。
「オレは、最強の剣士になる」
それが、グレンの口癖だった。
実際、腕前も確かだし、街で行われた剣闘大会で、良いところまでいった。
しかし、所詮は自己流の剣術である。
道場で本格的に鍛錬を受けた者たちには、手も足も出なかった。
大会で戦った相手も悪かった。
太陽の貴公子ハーメルン。
最年少で、大聖堂の近衛である聖戦士に抜擢された、エリート中のエリートだ。
  しかし、それでもグレンはめげなかった。
あくまで彼が目指すものは、最強の戦士である。
そのことに変わりはなかった。
「聖歌隊か……」
 アンドレが顎に手をおいて考える。
「どうしたの、アンドレ」
ユウの質問に、アンドレはニヤリと笑った。
「聖歌隊のお嬢様たちなら、オレの修行してる料理店によく来るんだよ」
ルッカが期待を込めて、アンドレを見た。
「薔薇の蕾少女合唱隊だったかな。催し物のたびに大聖堂に呼ばれ、歌を演奏しているらしい」
「じゃあ、その中に彼女も?」
「いるかもしれない」
ルッカの期待に、グレンが力強く言った。
「いないかもしれない」
ユウが、間をおかずに言葉を重ねた。
「聖歌隊の中でも、薔薇の蕾は選ばれし精鋭だったはず」
ミゲルも慎重だった。
「あまり、期待しない方がいい」
お茶をすすりながら、そう言った。
「よし! 」
ルッカは勢いよく立ち上がった。
「アンドレ、オレもお前の店で働かせてくれ!」
「は?」
グレン以外の三人が目を丸くした。
「彼女が見つかるまででいい」
「無茶を言うな」
アンドレが困ったように頭をかく。
「さすがに非常識だ」
「やはりルッカは馬鹿だわ」
ミゲルとユウは、呆れていた。
「じゃあ、どうしろってんだ!」
「まずは聖歌隊の練習を見に行けばいい」
ミゲルは言った。
「たしか新規隊員に応募すれば、聖歌隊の練習を見学できるはずだ。申請すれば大丈夫じゃないか」
「なるほど、名案だ」
グレンが感心してうなずいた。
「しかし、聖歌隊に入隊できるのは女性だけだろ? 」
「募集した本人の他に、付き添いが一人入れる」
ミゲルはやけに詳しかった。
「いや、最近、妹が興味を持ったから、一度調べたんだ」
ミゲルは五人兄弟の長男で、うち、妹が二人いる。
「じゃ、ミゲルの妹に届けを出してもらおう」
ルッカは、身を乗り出してミゲルの手を握った。
「頼む!」
ミゲルは、それを嫌そうに振りほどく。
「残念ながら聖歌隊には年齢制限がある。うちの妹じゃ、まだ応募することができない」
「じゃあ!」
ルッカは、ミゲルの隣のユウに顔を向けた。
「なによ」
ユウは、心底嫌そうな表情をつくる。
「ユウ、聖歌隊に応募してくれ! この通りだ。親友じゃないか」
ルッカは、おさげ髪の少女に向かって、深々と頭を下げた。
アンドレとミゲル、それにグレンは、ユウの心情を知ってか知らずか、複雑な表情で二人の様子を見つめていた。
ルッカたち四人はテーブルを囲んでいたが、グレンは一人だけ、座らずに立っていた。
体格も大きく筋肉質だ。
常に傍らに木剣を持ち、自分の体の一部のように片時も離さない。
「オレは、最強の剣士になる」
それが、グレンの口癖だった。
実際、腕前も確かだし、街で行われた剣闘大会で、良いところまでいった。
しかし、所詮は自己流の剣術である。
道場で本格的に鍛錬を受けた者たちには、手も足も出なかった。
大会で戦った相手も悪かった。
太陽の貴公子ハーメルン。
最年少で、大聖堂の近衛である聖戦士に抜擢された、エリート中のエリートだ。
  しかし、それでもグレンはめげなかった。
あくまで彼が目指すものは、最強の戦士である。
そのことに変わりはなかった。
「聖歌隊か……」
 アンドレが顎に手をおいて考える。
「どうしたの、アンドレ」
ユウの質問に、アンドレはニヤリと笑った。
「聖歌隊のお嬢様たちなら、オレの修行してる料理店によく来るんだよ」
ルッカが期待を込めて、アンドレを見た。
「薔薇の蕾少女合唱隊だったかな。催し物のたびに大聖堂に呼ばれ、歌を演奏しているらしい」
「じゃあ、その中に彼女も?」
「いるかもしれない」
ルッカの期待に、グレンが力強く言った。
「いないかもしれない」
ユウが、間をおかずに言葉を重ねた。
「聖歌隊の中でも、薔薇の蕾は選ばれし精鋭だったはず」
ミゲルも慎重だった。
「あまり、期待しない方がいい」
お茶をすすりながら、そう言った。
「よし! 」
ルッカは勢いよく立ち上がった。
「アンドレ、オレもお前の店で働かせてくれ!」
「は?」
グレン以外の三人が目を丸くした。
「彼女が見つかるまででいい」
「無茶を言うな」
アンドレが困ったように頭をかく。
「さすがに非常識だ」
「やはりルッカは馬鹿だわ」
ミゲルとユウは、呆れていた。
「じゃあ、どうしろってんだ!」
「まずは聖歌隊の練習を見に行けばいい」
ミゲルは言った。
「たしか新規隊員に応募すれば、聖歌隊の練習を見学できるはずだ。申請すれば大丈夫じゃないか」
「なるほど、名案だ」
グレンが感心してうなずいた。
「しかし、聖歌隊に入隊できるのは女性だけだろ? 」
「募集した本人の他に、付き添いが一人入れる」
ミゲルはやけに詳しかった。
「いや、最近、妹が興味を持ったから、一度調べたんだ」
ミゲルは五人兄弟の長男で、うち、妹が二人いる。
「じゃ、ミゲルの妹に届けを出してもらおう」
ルッカは、身を乗り出してミゲルの手を握った。
「頼む!」
ミゲルは、それを嫌そうに振りほどく。
「残念ながら聖歌隊には年齢制限がある。うちの妹じゃ、まだ応募することができない」
「じゃあ!」
ルッカは、ミゲルの隣のユウに顔を向けた。
「なによ」
ユウは、心底嫌そうな表情をつくる。
「ユウ、聖歌隊に応募してくれ! この通りだ。親友じゃないか」
ルッカは、おさげ髪の少女に向かって、深々と頭を下げた。
アンドレとミゲル、それにグレンは、ユウの心情を知ってか知らずか、複雑な表情で二人の様子を見つめていた。
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