話花遊び バレンタインデーと青い鳥

葵冬弥

話花遊び バレンタインデーと青い鳥

「ハッピーバレンタイン!」

「おう」

目の前に差し出された箱を受け取る。

「今回は自信作です!」

「そうか」

ドヤ顔してる顔をチラリと見てスマホの画面にまた目を落とす。

「ちょっと素っ気なくないですか?」

「そうか?」

「そのセリフを情緒込めなくて良いです」

授業中に溜まったついっとぅーを流し読みする。

「だから、自信作なんです!」

「で?」

「ほら、開けてみてください」

「後でな」

オチも分かり切ってるし。

「今!なう!すぐ!」

「はぁ……分かったよ」

仕方なく弱っているテープを剥がして包装紙を外す。

そして、蓋に手をかけて

『 ざんねん!美味しくできすぎてさっき食べちゃいました!てへぺろっ』

うむ、我ながら恐ろしいくらいに1字1句間違わなかったな。

「って、えー!?」

驚きの声が五月蝿くて耳を塞ぐ。

「エスパーですか!?サイコパスですか!?」

「こら、物騒な単語くっつけるな」

ったく、しょうがねぇな。

「その顔見ればだいたい分かる」

「か、顔?何かおかしいですか??」

ぺたぺたと自分の顔をアホみたいに触る。

「ん?ん?ん???」

混乱だけが深まったみたいだ。

「じっとしてろ」

「はいっ」

素直だな。

直立不動の姿勢を姿にそっと顔を寄せる。

「んっ」

「ふむぅぉ……!」

「変な声出すなよ」

「だだだだだだっっっってててててて……!」

口元を抑えて赤面してたじろいだ。

そんな目の前のことは気にせず、口の中の仄かな甘味を吟味する。

「うん、上手いんじゃないか」

「せ、先輩のばーかばーかばーーーーか」

「……小学生かよ」

慌てて誰もいない部室を出ていったその背中を見送り、ポツリと零した。

さてと……。

つぶやきボタンにタッチして指を滑らせる。

『 彼女からチョコ貰えた!めっちゃ美味かった(*^ω^*)
#バレンタインデー』

青い鳥につぶやきを載せた。

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