行列!異世界の動物園~魔王が園長です。

ノベルバユーザー303849

第五十七話 戦争終結



「園長! バーナードさんに誇れる自分になると一度は誓ったんでしょ?」


「だがそれも所詮は夢物語だったんだ。ここまでされて今更引き下がれん!」


「園長が仲良くなった魔獣も魔族も人間も、皆が戦争を止めようとしてるのに肝心のあなたがそれでどうするんですか、マリアンローゼ·シュナイダー!!」


「……」


 更に説得の言葉を紡ごうとしたら皇帝からもらった魔導フォンが鳴る。


 電話に出るとエスナが慌てた様子で「卵は無事奪還成功したんですけど、竜王が人間達を襲い始めちゃって大変なんです~!助けに来てください~!」と喋っている。ゆ


「わかりました、すぐに行きます」


 魔導フォンを切り、マリアンローゼを見つめる。


「さっきの電話聴こえたでしょ? どうしますか?」


 しばらく思案していたが、冬太を見つめ、「人間達を救えば私はシュナイダーを名乗ってもいいと思うか?」と問う。


 冬太は優しく微笑みながら、「とっくに名乗っていいと僕は思ってますよ」と言い返す。


 冬太の言葉で答えが決まったのか、魔法で声を拡大し、魔王軍に戦いを止めるように伝える。


「初代魔王殿、ベヒ子、レッドビークイーンベアに冬太、力を貸してくれるか?」


 そして冬太達に頭を下げる。


「当たり前でしょ」と冬太は右手の親指をグッと上に向ける。


「……ありがとう。……では、アスファルト帝国に転移するからベヒ子は小さくなってくれ! この戦場の処理はリリスお前に任せる。では転移!!」


 このボロボロの戦場の戦後処理を任されたリリスはため息をつきながら、「いってらっしゃいませ、我らが魔王様」と呟く。






            ◆◆◆


 竜王バハムトが咆哮をあげると、今までシリウスの分裂体や勇者と鵺のコンビや反乱軍を襲っていた竜達が、帝国軍を攻撃し始めた。


「よくも我ら誇り高き竜達をいいように使ってくれたな皇太子。その罪は万死に値する」


 バハムトが人間の姿から竜の姿に変わっていく。
 城の壁や柱が崩れる。
 皇太子は剣を構え抵抗しようとするが、バハムトの尻尾の一撃で吹っ飛ばされて身動きがとれなくなる。
 更なる一撃が皇太子を狙うが、それをシリウスの分裂体とランガとエスナが盾となり、皇太子を守る。


「なぜそやつを守る? お前らにとっても敵だったはず」


「もう卵は戻ったし、帝国側には戦う気力さえなくなっている。僕らは皇太子を確保できればそれでいいんだ。これ以上殺しをするつもりなら僕らが相手をするよ」


「このバハムトも竜達もバカにされたものだ。この少人数で何が出来る?」


 その時床に魔方陣が現れる。


「僕たちもいます!」


 転移魔法で冬太、ベヒーモス、マリアンローゼ、デッカ、みゆきが召喚されてきた。


「みゆきとベヒ子は外の竜達を、園長とデッカさん、シリウスは竜王バハムトを止めてください!」


「「「了解」」」 「ベヒ~!!」 「ぐがぁぁぁぁっ!」


 冬太の指示で皆各々の戦場に向かう。


外の闘いは先程まで竜が優勢だったが、みゆきが配下を召喚し、ベヒ子が全力を出した事により竜達は一気にに劣勢になる。


 バハムトの闘いでは、分裂体を呼び戻した百パーセントのシリウスとデッカ、マリアンローゼの三魔王に圧倒されていた。


 冬太は竜王の卵が壊されないように大事に抱えながら、皇太子のもとに行く。


「どうですか、スルト皇太子。あなたが起こした戦争の結末は」


 皇太子はバハムトからの痛烈な一撃で動く事もまともに出来ず、目でバハムトと魔王達の闘いを見ている。


「何故、魔族が我々を助ける?それに君も何故助けるんだ?」


「皆別にあなた達を助けてる訳じゃない。ただもう血生臭い戦いを終わらせたいだけなんです」


「綺麗事だね。今回の僕が起こした戦争が収まったとしても、きっとまた別の誰かが起こすよ」


「綺麗事かもしれません。また戦争が起きるかもしれない。でも僕が生きている間だけは絶対に戦争を止めます。何度でも」


「ははっ、君は眩しいね。もっと早くに君に出会えていたら変われたかもしれない」


「今からでも遅くありません。変わりましょう」


「そっかぁ。変われたらいいなぁ」


 皇太子はそう言うと気を失い、それと同時に三人の魔王にボコボコにされ、ついに地に伏せるバハムト。
 人間体に戻り、「殺せ」と催促してくる。


「嫌です。今回の戦いで怪我人はいても死人はまだ出ていません。僕達の勝利は誰も殺さないが勝利なんです。だからあなたには、生きてもらいます。他の竜達にも戦いを止めてもらいたいですし」


「……少年、名前は?」




「柏木冬太、冬太と呼んでください」


「トウタか。お前の様な人間には初めてあった。殺さない事が勝利なら死ぬわけにはいかぬか。わかった我らの負けを認めよう」


 そう言うとバハムトは大きな咆哮をあげる。


 すると、外の竜達が攻撃を止め、地に伏せる。


「園長やりましたよ、誰一人死者の報告はありません。僕達の勝利です」


「ああ、そうだな。これでやっとマリアンローゼ·シュナイダーを名乗れる」


 夕陽の中この世界最大の戦争はこうして閉幕した。





「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く