行列!異世界の動物園~魔王が園長です。

ノベルバユーザー303849

第五十二話 大いなる山



 現在、シリウス·ブラッドリリーのお願いの為、魔界北西にある大いなる山の意味を魔界語で持つデッカパイ山を登っていた。
 その名を聴いて人間であるバルドラ皇帝、ケルム宰相はゲラゲラ笑ったが、次の瞬間シリウスからボディブローをくらって気絶した為、山を登っているのは、冬太とエスナとシリウスの三人。
 影丸はジパンに戻るらしく、皇后は気絶した二人の介抱でエルドラドにお留守番。


「ぜぇぜぇ、あ、あのこんな山の上に何があるの?」


 息切れ状態の冬太の質問にニヤリと笑って「行けばわかるさ」と答えるシリウス。


 しばらく登ると頂上が見えてきた。
 頂上に着いたら、雪が降るなか、あたり一面が紅の花で彩られていた。
 「綺麗です~」
 白と紅のコントラストに思わず見惚れるエスナ。


「すごく綺麗な場所なのはわかるんだけど、なぜここに連れてきたの?」


「ここは私が敬愛している方が気に入っていたブラッドリリーの花畑でね」


「そっか、その人とシリウスにとっては凄く大事な場所なんだね。だから千五百年経っても咲いているか確認したかったんだね」


「それもあるが冷静になるとあの方が死んでいるとは考えにくくてな。手がかりでもあればと思っていたが、どうやら無駄足にならずに済んだようだ。そこの茂みに隠れている者出てこい!」


 すると二十歳ぐらいの女性が茂みから出てくる。


「あ、あなた達は何者ですか?この山には何もありませんよ!」


 足を震えさせながらも気丈に振る舞う彼女の言葉が、この山には何かあると言っている様な者だ。


「驚かせたようですまない。僕達はただこの山と同じ名前を持つ偉大なあの方の情報が欲しかっただけなんだ」


 そう言った瞬間さっきまで敵対心を持っていた女性の顔色が変わる。


「大変失礼しました! あの方の知り合いの方でしたか」


 その女性はエスナを見て、「それにあなたならあの方の封印も解ける筈。着いてきてください。あの方が眠っている場所へご案内します」


 女性の後をついていってたら岩壁が前をふさぐ。
 しかし、女性はそのまま岩壁に向かって歩いて行く。
 冬太は危ないと叫ぼうとしたが、女性はそのまま岩壁の中に消えていく。


「幻影魔法か」


 そう言うとシリウスも岩壁に入っていったので、冬太とエスナも後に続き、岩壁の中へ。
すると目の前には小さな村があった。


「ミクよ、なぜ外の人間を連れてきた!?」


 村の人々が集まり、一番前の村長らしき人が僕達を連れてきた女性――ミクを問い詰める。


「この方達はあの方の知り合いです。しかも彼女は真なる者の可能性があったので連れてきました」


 村長や村の人々はエスナを熱い視線で見る。


「ああ、彼女ならあの方は目覚めてくれるに違いない彼女を大広間の魔方陣へ」


「ふぇぇ?何ですか~、何ですか~?」


 エスナは訳がわからないまま村の中心の魔方陣の中心に立たされた。
 すると魔方陣が輝きゴゴゴと山がざわめく。
 そして魔方陣の中心から筋肉モリモリの二メートル程の金髪の男性が現れた。
 その瞬間、村中の人々の歓声が起きた。
「大いなる山が復活したぞー!」「我らの恩人が目を覚ました」
「今夜は宴じゃあ!!」


 そんな中シリウスは白いコウモリの姿に戻り、金髪の男性の肩に止まる。


「おお、シリウス君ではないか。久しぶりだな。この村も無事なようで何よりだ。して我を目覚めさせた真なる大いなる山はお主か、名をなんと言う?」


「ひゃい? わ、私はエスナです~」


「うむ、エスナとやら実に見事な山だ!」


 そう言いながらエスナの胸を掴む金髪の男性。


「きゃぁぁぁあっ!? 何するんですか~!?」


「おお、すまん。実に見事な山だったからな、つい揉んでしまった」


「なんなんですか~この人!?」


「この人とは無礼な。この方は我々人間や魔人の共存を願っている村の為に千五百年以上もこの村の結界として人柱になってくれた初代魔王様なのじゃぞ!」


「それがなんでエスナさんが関係してくるんですか?」


「それはな、我が名前、デッカ·パイが原因だ。魔界語では大いなる山という素敵な名前でも人間の言葉では巨乳という意味ではないか。傷ついた我は名前を隠し、生きてきた。人間は愚かだ。だが良い人間がいるのも事実。我は悩みながらも人間と戦い、その中で共存を望んでいる者達を見つけた。その共存を望んでいる人間の中にお主と同じくらい素晴らしい巨乳をした女性に出会った。その女性は我の名前を聞いても笑わなかった。戦いの中でこの素晴らしい巨乳の女性を守りたいと思った我は、自分を人柱にする事によってこの村に幻覚の結界を張ったのだ。次に私が目覚めるのは真の大いなるきょにゅうが魔方陣の中心に立った時だと言い残して」


「なるほどそれでエスナさんが真の大いなる山だったから封印が解けたということですか?」


「うむ、その通りだ。それで今は魔界暦何年なのだ?」


 初代魔王デッカ·パイに冬太が異世界から来てからの事をシリウスに話した時と同じ様に伝えた。


「なるほどなぁ。一つ聞きたいんだがシリウス君って喋れるのか? それとオスだと思っていたのにまさかメスだったとは!」


「ごめんなさいデッカ様。喋れるのがばれたらデッカ様に嫌われて使い魔になれなくなるかなと思って」


「そんな事で我らの友情が壊れるものか。それよりも女の子だったのに気付かずシリウス君と呼び続けた我こそ謝らなければいかん。すまなかった」


「デッカ様は謝る必要ありません。僕はデッカ様にシリウス君と呼ばれるのが好きなんです」


「……シリウス君。こんな我を許してくれるのか?」


「許すも何も僕は何があってもデッカ様の使い魔ですよ!」 


「シリウス君、ありがとう!我らの友情は不滅だ!」


 筋肉モリモリのデッカとコウモリ姿のシリウスがお互いに抱き合っている。


「感動してる所悪いんですけど、デッカさんも戦争を止める為に力をかしてくれませんか?」


「トウタと言ったな、少年よ。我以外になつかなかったシリウス君がなついてる様だし、真の大いなる山のエスナ嬢が居る以上手を貸さないわけには行かないな。何よりトウタは我の名前を聞いても笑わなかった」


「デッカ·パイ――大いなる山という名にふさわしい人を笑うわけないじゃないですか! よろしくお願いしますデッカさん」


「ああ、こちらこそ頼むぞトウタ」


 千五百年以上も村を守ってきたデッカと握手をする冬太。
 元魔王という戦力を二人手に入れた冬太。
 しかし、これだけでは止めるのはまだ難しい。
 一度エルドラドに戻って作戦会議をしないとと考える冬太。
 果たして冬太達は、戦争を止める事ができるのか?
 

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