行列!異世界の動物園~魔王が園長です。
第二十一話 皇帝動く!
「なぁ宰相」
「何でしょうか?」
「何で勇者動物園で働いているんだ? 儂はベヒーモスと魔獣達出来るなら魔王も殺せと言ったよな? 褒美も破格にして!」
「はい、その通りです。ですが魔界の動物園を気に入ったらしく、帝国にはもう戻ってこないとの知らせが」
宰相は胃をキリキリと痛めながら、勇者から届いた手紙を皇帝に渡す。
皇帝は手紙を読み終わると、手紙をビリビリと破く。
「ふざけるなっ!! 魔王や魔獣を倒すのが使命の筈の勇者が動物園の飼育員になるだと!?」
「まあ、最近の勇者に向けられる目は冷たかったですからな。我々も、戦争が終わると、ほったらかしにしてましたし」
一度あの動物園に行った宰相は、勇者の気持ちがわからないでもなかった。
「それは勇者を城から追い出した儂が悪いと申しているのか?」
「とんでもない、誤解です。 私は自分に責任があると言いたかっただけです」
「ほうならばお主、今回の不始末どう片付ける?」
「事の発端はカシワギトウタという少年が来てから変わりました」
「ほう、つまり暗殺者を送り、その少年を殺すのだな?」
「いいえ、それをすると魔王の怒りを買いかねません。ですのでその少年をこちら側に引き込むのです」
「なるほどな、それなら安全に事が進めるな」
「それではさっそく魔界の動物園に行って参ります!」
宰相は、実は一回動物園に行って以来もう一度行きたいと思っていたのだ。そしてもう一度プリンと新作メニューのハンバーガーとアイスクリームを食べるのだ。妻や娘と一緒に行くのも良いかもしれないと宰相ケルムが思っていると――
「いや、今回は私も行こうと思う」
「陛下自らなど危険です」
本音は皇帝が来ちゃうとゆっくり動物園を見て回れないからなケルム宰相。
「今まであの手この手を使っても潰せなかった動物園をこの目で見てみたい。件の少年にも会ってみたいしな」
皇帝は宰相や部下から魔界の動物園の話を聞くうちに自分自身が行きたい欲求に満たされていた。
「よし、今の仕事を処理次第すぐに出掛けるぞ!」
せっかくの久しぶりの家族旅行がとガッカリしている宰相をよそに行く気満々の皇帝バルドラ·アスファルトは大量の書類と格闘していた。
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